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時計じかけのスウィング



 スウィングシナケリャ意味ガナイ




CLOCKWORK SWING

Lament I, “Bird’s Lament” (1969) - Moondog
Get A Move On [Radio Edit] (1999) - Mr. Scruff
Idiot Breath (2002) - Awol One & Daddy Kev
Money Mae (2011) - Lauriana Mae
Playa No Mo’ (2001) - Lina
Jump ’n’ Jivin’ (2013) - Dessy Di Lauro
Nice And Lovely (1993) - Shaggy
Favourite Final Geisha Show (1998) - Chari Chari
Scratchoetry (2003) - Alien Army
Swing Thing (2013) - Boogie Belgique
I’ve Got That Tune (2004) - Chinese Man
Modern Times (2004) - Jfive feat. Charlie Chaplin
Back It Up (2009) - Caro Emerald
Memories (2007) - Waldeck
Swingpool (1994) - 9 Lazy 9
Clarinets (2000) - Chilly Gonzales
Nostalgia (2012) - L’Orange
Why Don’t U Do Right (2012) - Gavlyn
Call The Law (2006) - OutKast feat. Janelle Monáe
I’m In Hollywood... (2016) - Masego
Vinnie Tha’ Moocha (1990) - Tairrie B.
Hi De Ho (1993) - K7
Lucas With The Lid Off (1994) - Lucas
Ho-Down (1995) - Paula Adbul
愛の言霊 ~Spiritual Message~ (1996) - Southern All Stars
Bye Bye Baby (2001) - Lina
Doo Uap, Doo Uap, Doo Uap (2002) - Gabin
Bonus Tracks:
Puttin’ On The Ritz (1982) - Taco
Lady Madonna (1968) - The Beatles


 エレクトロ・スウィングという音楽ジャンルがある。’20〜’40年代のオールド・ジャズをエレクトロ、ハウス、EDMなどで仕立て直した享楽的なダンス・ミュージックで、’00年代後半~’10年代前半にかけて主にヨーロッパで流行った。代表的なアーティストにパロヴ・ステラー(オーストリア)キャラヴァン・パレス(フランス)テイプ・ファイヴ(ドイツ)スウィング・リパブリック(オランダ)アリス・フランシス(ルーマニア)などがいた。

 ドゥープ「Doop」(1993)、スキャットマン・ジョン「Scatman (Ski-Ba-Bop-Ba-Dop-Bop)」(1994)など、似たようなタイプの曲は’90年代からあったが、ジャンルとして確立されたのは’00年代末頃だろうか。この手のサウンドがヨーロッパで人気らしいということに私が気付いたのは’10年代初頭、takeSomeCrimeというカナダの青年がパロヴ・ステラー「Catgroove」(2009)に合わせて踊るYouTubeのバイラル動画を見たときだった(面白かったので、当時彼にメールでインタビューまでした)。その後、彼のスタイルをパクったJustSomeMotionというドイツ人ダンサーがYouTubeで人気者になったり、日本でも紹介記事が増えるなど、エレクトロ・スウィングは着実にファンを増やし、その人気は現在もしぶとく続いているようである。



 エレクトロ・スウィングはアメリカでは流行らなかった。バズ・ラーマン監督『華麗なるギャツビー』(2013)のサントラでウィル・アイ・アムが「Charleston」(1923)ネタの「Bang Bang」をやったとき、アメリカにも遂にエレクトロ・スウィングの波が来たか?と思ったが、結局、来なかった。アメリカ人──特にアフリカ系──にとって、エレクトロ・スウィングはあまりにもリアリティに欠ける音楽だからかもしれない。ビバップ以降のモダン・ジャズは繰り返し引用されても、アメリカの黒人音楽の世界でそれ以前のスウィング・ジャズはほとんどネタにされない。デューク・エリントン、カウント・ベイシー、フレッチャー・ヘンダーソンら黒人のバンドリーダーも勿論いたが、スウィング人気を牽引していたのは主にベニー・グッドマン、グレン・ミラー、アーティ・ショウ、トミー・ドーシーといった白人楽団で、基本的にスウィングは“白人の音楽”というイメージが強い(スウィング大流行の後にビバップやジャンプ・ブルースが来た’30〜’40年代の流れは、ディスコの後にヒップホップやニュー・ジャック・スウィングが来た’70〜’80年代の流れとよく似ている)。また、ヨーロッパでのエレクトロ・スウィング人気には、ジョセフィン・ベイカーのようなデフォルメされた黒人像を好んで受け入れる風土も関係しているように思う。要するに、絶えず人種問題の緊張に晒されているアメリカの人々にとって、エレクトロ・スウィングはあまりにも能天気で馬鹿馬鹿しいものに聞こえるのではないか。

 エレクトロ・スウィングは音楽的にもオモチャみたいな安っぽいものが多く、私自身あまり良いと思った試しがないが、その周辺にはいくつか面白いと思う曲もある。『Clockwork Swing』は、エレクトロ・スウィング的でありながらその枠からはちょっと外れる、主にR&B、ヒップホップ、ブレイクビーツを下地にした’90年代〜’10年代のスウィング・リバイバル曲を集めたプレイリストである。

Clockwork_Swing2.jpgClockwork_Swing3.jpg
ミスター・スクラフ『Keep It Unreal』(1999)、リナ『Stranger On Earth』(2001)

 特筆したいのは、チャーリー・パーカーに捧げられたムーンドッグの名曲「Bird’s Lament」(1969)のループにT・ボーン・ウォーカー「Hypin’ Woman Blues」(1947)の声ネタを乗せたミスター・スクラフの「Get A Move On」(1999)。この曲が出たときの衝撃は今でもよく覚えている。’90年代後半にはブレイクビーツを土台に新たなジャズの形を模索するアーティストが数多く登場したが、フューチャリスティックでスピリチュアルなムードが漂う当時のニュー・ジャズ/クラブ・ジャズ系作品の中でも、「Get A Move On」の軽快なスウィング~ビバップ感は異彩を放つものだった。楽器のソロ演奏をフィーチャーせず、徹底的にダンス・ミュージックであることを貫いた激キャッチーなレトロ・ジャズ・サウンドは、完全にエレクトロ・スウィングの青写真である。

 他にも、’01年にレトロ・ジャズ趣味を打ち出してデビューしたテキサス出身の異色R&B歌手、リナの「Playa No Mo’」「Bye Bye Baby(プレイリストには入れなかったが、MJ「Get On The Floor」を引用した「Watch Your Mouth (Baby Blue)」という佳曲もある)や、ヨーロッパでヒットしたJファイヴのチャップリン・ネタ曲「Modern Times」(2004)、’30年代を舞台にしたアウトキャスト主演映画『アイドルワイルド』サントラのジャネール・モネイ客演曲「Call The Law」(2006)、あるいは、’90年代のシャギー「Nice And Lovely」(1993)、ルーカス「Lucas With The Lid Off」(1994)、前回記事でも触れたサザンオールスターズ「愛の言霊」(1996)など、エレクトロ・スウィングの傍流、または源流とでも言うべき曲がいくつも入っている。

 レトロ・モダンなデビュー作『Deleted Scenes From The Cutting Room Floor』(2010)が国内で30週連続1位になり、MJ『Thriller』の記録まで塗り替えたオランダの歌姫、カロ・エメラルドは、エレクトロ・スウィングの流れから登場したアーティストには違いないが、彼女の幅広い音楽性はスウィングの枠に収まるものではないし、単なるダンス・ミュージックをやっているわけでもないので、個人的にはエレクトロ・スウィングというジャンルからはちょっと外れる人だと思っている(詳しくは’15年の来日公演記事を参照)。プレイリストには彼女の’09年のデビュー曲「Back It Up」を収録した。


エレクトロ・スウィングはどこから来たのか

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ドゥープ『Circus Doop』(1994)、スキャットマン・ジョン『Scatman’s World』(1995)

 エレクトロ・スウィングの直接的な源流は、’90年代半ばにアメリカで起きた“ネオスウィング”と呼ばれるリバイバル現象にあると思う。’30〜’40年代のスウィング~ジャンプ・ブルースがロックンロールやロカビリーのルーツとして注目され、白人ミュージシャンたちにパンク感覚で焼き直された。ロイヤル・クラウン・レヴュービッグ・バッド・ヴードゥー・ダディチェリー・ポッピン・ダディーズブライアン・セッツァー・オーケストラといったバンドがその代表格。中には、更に古い’20~’30年代のトラッド・ジャズを志向するスクウィーレル・ナット・ジッパーズなんてバンドもいた。ズートスーツ怪人が大暴れするジム・キャリー主演作『マスク』(1994)、『スウィンガーズ』(1996)といった関連映画のヒットや、ルイ・プリマ「Jump, Jive, An' Wail」(1956)とリンディホップをフィーチャーした’98年のGAPのテレビCFなどもこのブームを後押しした。先述したドゥープ「Doop」やスキャットマン・ジョン「Scatman」もこの流れから生まれたヒット曲。この2つのユーロディスコ曲は、サウンド的にもまさにエレクトロ・スウィングの雛形という感じだ。

 プレイリストの最後にボーナストラック扱いで収録したタコ「Puttin’ On The Ritz」(1982)とビートルズ「Lady Madonna」(1968)は、そこから更に時代を遡ったエレクトロ・スウィングの源流。フレッド・アステアの歌唱で有名な「Puttin’ On The Ritz」をエレポップで焼き直したタコは、ドゥープやカロ・エメラルドと同じオランダ出身のアーティスト。世界的ヒットとなった同曲の他にも、彼は様々なスタンダード曲をエレポップ調でやっている。“元祖エレクトロ・スウィング”とも言えるアーティストだ。

 ビートルズ「Lady Madonna」は、スウィング・ビートにハーフタイムのビートを重ねる(速さが倍違う2つのビートを同時に走らせる)ことで、古いジャズ・サウンドを現代的なグルーヴで蘇らせるエレクトロ・スウィングの常套を’68年の時点でやっている。サウンドこそエレクトロニックではないが、発想は一緒である。これがエレクトロ・スウィングの原点だと私は考える。というわけで、やっぱビートルズってスゴいね、というオチでした。


TO BE CONTINUED...



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