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80年代の必殺ベースライン ベスト50



 ベースなんて聴いてない、とは言わせない。




BEST BASS LINES OF THE 80s

 “史上最も素晴らしい◯◯◯ TOP 50”みたいなランキング企画はしょっちゅう海外の音楽メディアがやっていて、見るたびに“くだらねー”とか“納得いかねー”と思うのだが、暇なので私も真似してやってみることにした。テーマは’80年代の必殺ベースライン

 ’80年代に発表されたポップソングのベースラインの中から、曲そのものの一般的な知名度、ベースラインの識別性(それだけで何の曲か分かること)、独創性や芸術性の高さなどを総合的に評価して1〜50位を選出。上掲のプレイリストがその結果である。常に検討中であるため順位は今後も変わり得るが、上位10曲はほぼ確定しているので以下に列記する。

#1 Billie Jean (1982) - Michael Jackson
#2 Super Freak (1981) - Rick James
#3 Bad (1987) - Michael Jackson
#4 Give It To Me Baby (1981) - Rick James
#5 Thriller (1982) - Michael Jackson
#6 Under Pressure (1981) - Queen and David Bowie
#7 Smooth Criminal (1987) - Michael Jackson
#8 Owner Of A Lonely Heart (1983) - Yes
#9 Beat It (1982) - Michael Jackson
#10 Wanna Be Startin’ Somethin’ (1982) - Michael Jackson

 1~5位はマイケル・ジャクソンとリック・ジェイムズが独占。別に私の趣味が偏っているわけでも、黒人音楽ファンに忖度しているわけでもなく、普通に考えてトップはこの2者しかないと思う。とにかく、強すぎる。

 1位のマイケルは何と言っても’80年代で最も売れたアーティストだし、ムーンウォークのパフォーマンスも生まれた「Billie Jean」は誰もが知る彼の決定的な代表曲。歌メロはもちろん、ドラム、ギター、ストリングス等の全パートがフックと言っても過言ではないこの曲の中でも、イントロから登場するあの太っといウォーキング・ベースは特に強烈な印象を与える。’80年代ポップソングのベースラインでこれ以上に有名なものはないだろう。たとえクインシー爺がドナ・サマー「State Of Independence」のパクリだと主張しようと、楽曲そのものの圧倒的な完成度と知名度を考えれば「Billie Jean」の1位は当然である(「Billie Jean」が「State Of Independence」のパクリだと言うなら、イングラム&マクドナルド「Yah Mo B There」は「Billie Jean」のパクリじゃないのか? とQ爺に言いたい)

 リック・ジェイムズ「Super Freak」は、後のMCハマー「You Can’t Touch This」でのリバイバルも考慮に入れて2位。3位の「Bad」は’80年代MJ作品の中では比較的評価が落ちる曲かもしれないが、なんだかんだであのベースラインは“Who’s bad?”の決め台詞とあわせて死ぬほど有名である。「Give It To Me Baby」と「Thriller」は、一般的な知名度では画期的な長尺MVも作られた後者の圧勝だろうが、ベースラインはどう聴いても前者の影響下にあるため、独創性を考慮して前者を4位、後者を5位とした。

 クイーン&デヴィッド・ボウイ「Under Pressure」は、ヴァニラ・アイス「Ice Ice Baby」でのリバイバルや、昨今のクイーン人気も踏まえて6位。2CELLOSのクラシック解釈でも曲の個性が全く揺るがなかった「Smooth Criminal」は7位。アルバム『Thriller』やマイケルのコンサートのオープニング曲としてもお馴染みの「Wanna Be Startin’ Somethin’」は10位にランクイン。

 イエス「Owner Of A Lonely Heart」(8位)とマイケル「Beat It」(9位)はベースじゃなくてギターリフじゃないの?と思う人もいるかもしれないが、この2つはいずれも曲の土台となるリフをギターとベースがユニゾンで奏でていて、ベースラインとして捉えることもできるため選出した(ギターリフと言うより、むしろベースラインにギターで厚みをつけていると考えた方が理に適うと思う)。どちらも世界的ナンバー1ヒットで、知名度の点でも独創性の点でもほぼ互角なのだが(イントロや間奏のギターソロのインパクトも凄まじい)、「Owner Of A Lonely Heart」は曲の中盤と終盤に更にもうひとつ秀逸なベースラインが登場するため、芸術性で僅かに勝ると判断して「Beat It」より上位に置いた。

 かつてTBSに『関口宏の東京フレンドパーク』という長寿バラエティ番組があった。その中に、ベースラインだけ聴いて曲名を答えるというクイズコーナーがあったが、これらの曲はその問題には絶対に使えない。ベースラインこそが曲の最も重要なアイデンティティであり、それがそのままクイズの答えになってしまうからである。日本のポップソングで、ベースラインだけ聴いて曲名を即答できる作品はどれほどあるだろう。ベースラインが強烈=優れた曲、というわけではもちろんないが、ベースラインを軸に成り立っている曲が黒人音楽に圧倒的に多いことは確かである。

 11位〜50位は、私の個人的な趣味も反映しつつ適当に選んだ。マドンナ「Like A Virgin」のベースはフォー・トップス「I Can’t Help Myself」の焼き直しには違いないが、それでも圧倒的な有名曲なので11位。逆にクイーン「Another One Bites The Dust」は、前年のシック「Good Times」のパクリである点を重く見て順位をかなり低めにしてある。レイ・パーカーJr.「Ghostbusters」がヒューイ・ルイス&ザ・ニュース「I Want A New Drug」より下なのも、同じく独創性を重視してのランク付け。インディープ「Last Night A D.J. Saved My Life」をはじめとするR&B系ヒットは、個人的にどれほどカッコいいと思っても、曲自体の一般的な知名度を考えてあまり上位には持っていかなかった。このベスト50は、様々な点を考慮に入れた上での飽くまで総合的な評価である。

 そのように客観性を重視したランキングでありながら、MJ作品は10位内に6曲も入った。これは決して私がマイケルを贔屓しているわけではなく、様々な考量の結果、入れざるを得なかったということである。彼は一度聞いたら忘れられないような強烈なベースラインを持つ強烈な曲を作る天才だった。彼の曲は圧倒的に多くの人々に知られていて、ほとんどの人がベースラインを聴いただけで曲名を言うことができる。この点に関しては多くの人の理解と共感を得られるのではないだろうか。

Best_bass_lines_80s2.jpg
あれ、この人は?

 このベスト50を考えているとき、私はプリンスの曲が入っていないことにふと気付いた。俺としたことがプリンスを忘れるなんて、と頭を掻きながら、慌ててベースラインが印象的なプリンスの曲を思い出そうとしたのだが……全く思いつかない。そんなバカな、と焦った末、やっとのことで思い出したのが「Erotic City」。しかし、他に出てこない。ベースラインが印象的なプリンスの曲って、他に何かあったっけ?

 このランキング・プレイリストを作って私がはっきり気付いたのは、マイケルとプリンスは曲の作り方が全く違うということである。マイケルは明らかにベースラインを基に曲を作っているが、プリンスはそうではない。なにせ彼の最大のヒット曲「When Doves Cry」にはベースパートそのものがないし、「Kiss」にしてもベース音はバスドラを逆再生したような音律のないアタック音で代用されている。「U Got The Look」はロバート・パーマー「Addicted To Love(拙ベスト50にもランクイン)をプリンス流に換骨奪胎した曲だが、「Addicted To Love」のベースラインがリフとして成立しているのに対し、「U Got The Look」のベースはルート音でリズムのシンコペーションを強調するだけで、それ自体はほとんど聴き手の印象に残らない。唯一ラインクインした「Erotic City」のベースラインにしても、「Super Freak」の前半1小節をループさせただけのようなひどくいい加減なもので、創意というか、およそやる気というものが感じられない(これでいっか、みたいな超テキトーなベースライン)。プリンスは恐らくドラムビートを基に曲を作っていて、ベース音はもっぱらそれを強調する補助的なものとして使われている。彼にとってベースはメロディ楽器ではなく、ほぼ完全に打楽器なのである。

 だからプリンスの方がファンキーだとか、そういうつまらないことを言いたいわけではない。よく比較されるマイケル・ジャクソンとプリンスの2人でさえ、曲の構造はこんなにも違う。曲には色んな作り方があるし、色んなアーティストが色んなアプローチで優れた作品を生み出しているわけで、容易に優劣などつけられるものではない。だから、こういうランキング企画は本当にくだらないなと思うのである。



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