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マイケル・ジャクソンのゴースト



 お前は誰だ?


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 Roshan Lamichhaneなるアーティスト名義でマイケル・ジャクソンの未発表デモ音源らしきものが出回っている。4曲入りEP『NepaliBoy』(’20年1月28日発表)と11曲入りアルバム『Magic』(’20年2月28日発表)がそれだ。’20年5月1日現在、これら2つの音源集はSpotifyApple MusicAmazon Musicといった大手音楽配信サービスで普通に聴くことができる。本記事トップのシルエット画像は、Spotifyのアーティスト・ページに掲載されているRoshan Lamichhaneのアー写。

 実際に何曲か聴いてもらえれば分かるが、歌声や楽曲の雰囲気はもちろん、音質の悪さも含め、どれもいかにもマイケルの未発表デモ音源っぽく聞こえる。普通の人が聴いたら驚くだろう。何なの、これ?! という話だ。

 物真似芸人も含め、この世にはマイケルそっくりに歌える人間がたくさんいて、昔からそういう模倣者が作った擬似MJデモ音源がマイケル本人の流出デモ音源として巷に出回っている。元々は純粋にオマージュ作品として制作者自身の名で公開されても、それを誰かがパクって“マイケルの未発表曲”としてYouTubeなどに再投稿し、多くの人が真に受けてしまうようなことが多々あるのである。

 今回の音源集は飽くまでRoshan Lamichhaneというアーティスト名義で発表されたもので、どこにも“Michael Jackson”とは謳われていない。MJ模倣者による擬似MJデモ音源集なのだろうと思ったら……どうもその中にガチなMJデモ音源が紛れているようなのだ。

Standing In The Rain
What’s Ur Name?
Don’t Walk Away
The Tides Will Turn

Magic
U Are
Work That Body
How Would You Feel
From The Bottom Of My Heart
She Was My Baby
If You Don’t Love Me
People Of The World
Game
I Am A Loozer
Serious Effect

 いくつかソースを当たって検証した結果、上記『NepaliBoy』『Magic』の15曲中、本物のMJ音源と思われるのは以下の5つ。

Work That Body
1989, written by MJ & Bryan Loren; produced by Bryan Loren
If You Don’t Love Me
1990, written by MJ & Bill Bottrell, produced by MJ
Serious Effect
1991, written & produced by Bryan Loren & MJ, rap by LL Cool J
People Of The World
1998, written & produced by MJ
I Am A Loozer (I Am A Loser)
2003, written by MJ & Brad Buxer, produced by MJ

 録音年、作詞作曲、制作者に関する情報は、これら5曲を含むMJのレア音源をYouTubeに大量にアップしているSven Nelsonという人物の動画説明欄の記述に依る。この人物自体どこまで信用できるか分からないが、少なくともこれら5つはファンの間で本物のMJデモ音源として広く認知されているもので、実際に聴いてみても確かに本物のMJに聞こえる。

 「ABC」の懐かしい掛け声も入る「Work That Body」はプリンス「Feel U Up」に激似の軽快なファンク。「Serious Effect」はブライアン・ローレン共作(テディ・ライリー関与説もあり)、LLクールJ客演のヘヴィーなファンク。「People Of The World」はJ-Friendsというジャニーズのチャリティ・プロジェクト(TOKIO+V6+Kinki Kids)のためにマイケルが書き下ろした「Heal The World」風の曲(’99年1月発売)。日本語詞は秋元康で、このデモ音源にも日本人少年のナレーションが入っている。

 「Don’t Walk Away」「U Are」「What’s Ur Name?」はRod MichaelというMJ模倣者の曲で、彼のSoundCloudで’15年10月に公開されている。「The Tides Will Turn」はMarcus WilliamsというMJ模倣者の曲で、同じく本人によって’12年4月にYouTubeで公開されたもの。つまり、『Magic』『NepaliBoy』には、複数のMJ模倣者の音源と、本物の(と思われる)MJデモ音源が混在しているのである。

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RoshanのSoundCloud。『Magic』に続いて4月26日に『Life』という3曲入りEPを公開している

 Roshan Lamichhaneなる人物は、Roshan、またはReeknd Jacksonという名義で複数のSoundCloudアカウントを持っていて、そこでも『Magic』を公開している。彼自身もMJ模倣者なのか、そこには『Magic』『NepaliBoy』以外の擬似MJ音源も多数アップされている。但し、それらが本当にこの人物によって制作されたものであるかは定かでない。他のMJ模倣者の音源をパクって自分の音源のように公開しているだけかもしれないのだ。“NepaliBoy”というくらいだから、ネパール出身の熱狂的MJファンなのか、あるいはそれすらもフェイクなのか……(SoundCloudではアメリカ在住ということになっている)。ネットにはこういう変な輩がうじゃうじゃいる。人が頑張って作ったり書いたりしたものを丸ごとパクり、あたかも自分のもののように公開し、人から“いいね!”をもらって喜ぶ──そういう人間がいることは分かってはいるが、本当に気持ち悪い自分で作ったものを人が作ったもののように公開している私も偉そうなことは言えないが)

 MJ好きが高じてこうした擬似MJ曲を作ること自体に問題はない。しかし、『Magic』『NepaliBoy』には他のMJ模倣者の音源や、本物の流出MJデモらしき音源まで含まれている。それを大手サブスクで配信し、そこからこの人物はいくらかの利益を得ているわけである。これはどう考えても問題ではないだろうか。

 個人的にMJの未発表音源に関しては、公式に発表されれば聴くが、それほど熱烈なファンでもないので、巷で非公式に出回っているものまでは積極的にチェックしない。今回、私はテディ・ライリーとマイケルのコラボについて調べる過程で、たまたまこの音源集の存在に気づいた。結果的にRoshan Lamichhaneの宣伝になってしまうのが癪だが、誰も疑問視していない……というか、話題にもしていないようだったので、記事として取り上げることにした。権利関係が曖昧なライヴ音源(ラジオ放送音源など。いわゆるハーフ・オフィシャルもの)などは昔から正規ルートでも出回っているし、私自身、ブートレグは必要悪として肯定する派なのだが(こういうことを書くと、アーティストの権利が云々とすぐ真面目な顔で怒るファンがいるが、人気アーティストにとってブートレグは有名税のようなものだと私は思う)、こうしてマイケルの流出デモ音源までサブスクで普通に配信されてしまう無法地帯ぶりには、ファンの一人としてさすがに首を傾げてしまうのである。



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