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The Beatles──リンゴはスター



 ちょうど20年前の今日
 演奏を教えたのはペパー軍曹
 浮き沈みもありましたが
 皆様を笑顔にすること請け合い
 さあ ご紹介しましょう
 言わずと知れたこのバンド
 ペパー軍曹のロンリーハーツクラブバンド!

 我らペパー軍曹のロンリーハーツクラブバンド
 どうぞショウをお楽しみください
 ペパー軍曹のロンリーハーツクラブバンド
 くつろいで夜をお過ごしください
 ペパー軍曹の
 ペパー軍曹の
 ペパー軍曹のロンリーハーツクラブバンド

 出演できて光栄です
 とても興奮しております
 なんて素敵なお客様
 家へ連れていきたい 連れて帰りたいくらい

 ショウの途中でありますが
 ここでひとつお伝えしましょう
 これから歌手が歌います
 皆様もどうかご参加ください
 では ご紹介しましょう
 このお方 ビリー・シアーズ!
 そしてペパー軍曹のロンリーハーツクラブバンド!


 ──ビートルズ「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」(1967)




The Beatles - The Billy Shears Show
with Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band


Side A:
Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band (1967)
With A Little Help From My Friends (1967)
Act Naturally (1965)
What Goes On (1965)
Honey Don’t (1964)
If You’ve Got Trouble (1965/1996)
Matchbox (1964)
Side B:
Boys (1963)
I Wanna Be Your Man (1963)
12 Bar Original (1965/1996)
Octopus’s Garden (1969)
Yellow Submarine (1966)
Don’t Pass Me By [Take 3 & 5] (1968/1996)
Good Night (1968)

All songs sung by Billy Shears a.k.a. Ringo Starr,
except “Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band” and “12 Bar Original” (instrumental)



 先日、ジョージ・ハリスンの命日に因んで、ビートルズ時代の彼のソングライターとしての進化を辿る『Something: The Evolution of George Harrison』というプレイリストを紹介した(解説も書こうかと思ったが、面倒くさくなってトラックリストと録音日の掲載だけに留めた)。ジョージのプレイリストを作ったので、リンゴも作ってやらなきゃ可哀想だと思い、次にビートルズ時代の彼のリード・ヴォーカル曲ばかりを集めたプレイリストを作ることにした。

 リンゴ・スターは唯一無二のリズム・センスを持った天才的なドラマーだが、歌手/ソングライターとしての人気(または才能)は他のメンバー3人に比べると格段に落ちる。ジョージのビートルズ楽曲だけを集めたプレイリストはSpotifyにいくつもあるが(多くはレノン=マッカートニー楽曲やカヴァー曲も含み、録音順ではなく発表順に曲が並べられている)、リンゴ・スターでそれをやるユーザーはほとんどいない。リンゴの歌ばかり聴きたい!というファンが極めて少ないことは、この点からも窺い知れる。誰もあまり聴きたいとは思わないリンゴのビートルズ曲集を、いかに誰もが聴きたくなるような形にまとめるか。ここがプレイリスターとしての腕の振るいどころとなる。

 リンゴのビートルズ曲集はSpotifyにあるにはある(『Ringo Sings the Beatles』『Ringo Starr sings all his Beatles songs』『The Beatles: Ringo’s Best』)。基本的にそれらは「Boys」から「Octopus’s Garden」まで、リンゴがリード・ヴォーカルを務めたビートルズの(現役時代に発表された)全11曲を集め、単純に時系列で並べたものである。ジョージの成長過程を辿る『Something: The Evolution of George Harrison』の場合、時系列(録音順)で曲を並べることに大きな意味があったが、リンゴの場合、時系列で曲を並べてもあまり意味がない。彼はビートルズ最末期においても“タコさんのお庭で遊びたいなー”などとお気楽に歌っていた人である。ビートルズにおいてリンゴは最初から最後まで“愛すべき人気者”であり、時間の経過と共に特に変化したわけではないからである。ならば、彼のその不変にして最大の特長でもある人気者キャラ、エンターテイナー性こそを活かすべきではないか。

 リンゴのビートルズ曲集を作るにあたって私が最初に遭遇した壁は、「With A Little Help From My Friends」の収録方法だった。『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』の2曲目に収録されているリンゴのこの代表曲は、アルバム冒頭の表題曲とメドレー式に繋がっており、単体でプレイリストに入れるとイントロがブツ切れになってしまう。イントロをフェード処理などで加工した単体版はこれまで発表されていない(後期ビートルズのベスト盤『The Beatles 1967-1970』や、’78年のシングル盤においても、この曲は「Sgt. Pepper’s〜」とセットで収録されている)。本記事冒頭の歌詞拙訳からも分かると思うが、そもそも「Sgt. Pepper’s〜」と「With A Little Help〜」は音楽面でもコンセプト面でも密接に結びついていて、切り離すことが不可能である。「Sgt. Pepper’s~」はポールの曲だが、この2曲はセットでプレイリストに入れるしかない。そしてその場合、収録位置は冒頭しかないだろう。

 そう考えたところで、私はプレイリスト全体を“ビリー・シアーズのワンマンショウ”という設定にすることを自然と思いついた。ご存じの通り、『Sgt. Pepper’s〜』はビートルズが“ペパー軍曹のロンリーハーツクラブバンド”という架空バンドに扮したコンセプト・アルバム。“ビリー・シアーズ”はそこでリンゴが担ったキャラクターである。そのコンセプトをそのまま借りて、リンゴが歌うビートルズ曲群をコンサート風の流れで並べたのが、拙プレイリスト『The Billy Shears Show』である。

 「With A Little Help~」の後、映画スターになる野心を歌ったカントリー調の芸能界ソング「Act Naturally」(バック・オーウェンズのヒット曲のカヴァー)へ行き、徐々にロックンロール色を強めながら、初期の二大代表曲「Boys」「I Wanna Be Your Man」で大きな山場を迎える。インスト曲で一息入れた後、終盤は得意の海洋もの二連発(「タコさん」「潜水艦」)で盛り上げ、自作の「Don’t Pass Me By」で大団円。そして、幕引きはスタンダードの風格漂う名バラード「Good Night」。もしビートルズが’60年代末にリンゴを主役に特別公演を行うとしたら(どう考えてもあり得ないが)、大体こんな感じになるのではないか。これはめちゃめちゃ楽しいショウだ。

 ビートルズの現役時代に発表されたリンゴのヴォーカル曲は11曲だが、このプレイリストには更に、『Help!』でボツったリンゴの「If You’ve Got Trouble」(レノン=マッカートニー作。『Anthology 2』)、インストのブルース・ジャム「12 Bar Original」(『Anthology 2』)、そして「Sgt. Pepper’s~」の3曲が含まれている。『The Beatles』の「Don’t Pass Me By」は『Anthology 3』版を使用(あっさりフェイドアウトするのが残念だが、ドラム演奏が強調されたこちらを選択。リンゴ印のフィルインがたっぷり聴ける)。他に「The End」のテイク3(スーパーデラックス版『Abbey Road』)や、「Good Night」のテイク10(スーパーデラックス版『The Beatles』)を使うアイデアもあったが、それらは完成版の素晴らしさを知っていてこそ楽しめるもの。初心者から上級者まで楽しめるビートルズ時代のリンゴの決定的なベスト盤にするべく試行錯誤した結果、最終的にこの形になった。ビートルズのオリジナル・アルバムの様式を踏まえ、曲数/収録時間は14曲/36分となっている。

 『Sgt. Pepper’s〜』の延長で聴けるプレイリスト『The Billy Shears Show』。これでリンゴ・スターの魅力を再発見してみてはいかがでしょう。




 おまけ。リンゴ・スター(ドラム)&シーラ・E(パーカッション)の「The Glamorous Life」。ライヴ映像『Ringo Starr & His All Starr Band Live 2006』(2008)より。リンゴとシーラのツイン・ドラムで「A Love Bizarre」もやってます。




 プリンス「My Name Is Prince」へのアンサー……なわけはないが、あわせて聴きたいリンゴの新曲「What’s My Name」(’19年9月23日発売)。リンゴ〜!!!


TO BE CONTINUED...



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