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アリシア・キーズのタイムマシン



 Oh we can’t rewind
 Life ain’t no time machine
 But once you free your mind
 There’s beauty in everything
 
 巻き戻しはできない
 人生はタイムマシンじゃない
 でも心を解き放てば
 あらゆるものが美しい


 ──アリシア・キーズ「Time Machine」






Alicia Keys’ TIME MACHINE
Back 2 the Good Times 2 Free Your Mind

Time Machine (2019) - Alicia Keys
Good Times (1979) - Chic
Bounce, Rock, Skate, Roll [A Special Remixed Disco Version] (1979) - Vaughan Mason and Crew
The Guardian Angel Is Watching Over Us (1979) - Golden Flamingo Orchestra feat. Margo Williams
Gangster Rock (1979) - Little Starsky
Hollywood Swinging (1973) - Kool & The Gang
In The Good Times (1980) - Defunkt
Another One Bites The Dust (1980) - Queen
We Are People Too (1980) - Master Jay
The Breaks (1980) - Kurtis Blow
Wham Rap! (Enjoy What You Do) (1982) - Wham!
Wot Times (1983) - Model 11-29
Try It Out (1981) - Gino Soccio
Get Lucky (2013) - Daft Punk feat. Pharrell Williams, Nile Rodgers
Rapper’s Delight [Dub Version] (2007) - Taggy Matcher
Rapture [US Disco Version] (1980) - Blondie
Hot Hot Hot!!! [Remix] (1987) - The Cure
Need You Tonight (1987) - INXS
Mediate (1987) - INXS
Good Life (1997) - D’Influence
Rock With You (1998) - D’Influence
Go Deep (1998) - Janet Jackson
Love Like This (1998) - Faith Evans
Made It Back (1998) - Beverley Knight feat. Redman
Free Your Mind (1992) - En Vogue
Free Your Mind Radio Advert (1970) - Funkadelic


 アリシア・キーズの新曲「Time Machine(’19年11月20日公開)が最高すぎる! というわけで、この1曲をテーマに『Alicia Keys’ Time Machine』というプレイリストを作った。

 「Time Machine」でアリシアはタイムトラベルについて歌っているわけではないが、この曲で彼女は40年前のディスコ時代に私たちを誘う。“デン、デン、デン…”と4分音符を3回ヒットするそのベースラインは、明らかにシック「Good Times」(1979)。ご存じの通り、「Good Times」は発表当初から様々な形(換骨奪胎、パクリ、サンプリング)で再利用されてきた歴史的な名曲。『Alicia Keys’ Time Machine』は、’79年~’80年代初頭の作品を中心に、過去の様々な「Good Times」ネタ曲から優れものを集めたプレイリストである。これを聴けば「Good Times」の尋常でない影響力の大きさ、そして「Time Machine」の“デン、デン、デン…”の重みもお分かりいただけるのではないか。「Time Machine」が26倍くらい楽しく聴けるようになること請け合いのプレイリストである。

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「Good Times」収録のシック『Risqué』、ヴォーン・メイソン&クルー『Bounce, Rock, Skate, Roll』

 「Time Machine」のMVは’70年代末~’80年代初頭に大流行したローラーディスコ(ディスコとローラースケート場の合体施設)を舞台にしている。「Good Times」が出た’79年に速攻でそのベースラインをパクったヴォーン・メイソン&クルー「Bounce, Rock, Skate, Roll」は、まさにそのローラーディスコをモチーフにしている点で、「Time Machine」とあわせて真っ先に聴くべき「Good Times」ネタ曲と言える。

 ニューヨークのディスコ・レーベル、Golden Flamingo Recordsは、’79~’80年にかけて「Good Times」調のディスコ曲を連発した。治安が極悪だった’79年のニューヨークで誕生した防犯NPO、ガーディアン・エンジェルスのことを歌ったマーゴ・ウィリアムズ「The Guardian Angel Is Watching Over Us」は、「Good Times」似のベースラインながらもパクリ臭皆無の傑作。ディスコというより、もっと純粋に’70年代ソウル~インナーシティ・ファンク色の強い曲で、正確なリリース時期が気になるところ(’79年発表らしいが、「Good Times」より先でもおかしくない)。同じく’79年にブロンクスのMC、ラヴバグ・スタースキー Lovebug Starski がリトル・スタースキー名義で出した「Gangster Rock」は、「Good Times」というより、むしろその“デン、デン、デン…”の出処であるクール&ザ・ギャング「Hollywood Swinging」(1973)に似ている。’80年のマスター・ジェイ「We Are People Too」は、最も有名な「Good Times」パクリ曲のひとつであるクイーン「Another One Bites The Dust」のベースラインを丸ごとパクり、更にJB「Say It Loud」のコール&レスポンスを乗せた快作。

 「Good Times」を基にした初期ヒップホップ曲は、カーティス・ブロウ「The Breaks」(1980)でオケのオリジナリティが増し、グッと洗練される。そして、これに触発されて出来た(と思われる)のが、ワム!のデビュー曲「Wham Rap!」(1982)である。ベースはもはや“デン、デン、デン…”ではなくなっているが(但し、演奏自体はもろにバーナード・エドワーズ流儀)、このプレイリストの流れで聴くと「Wham Rap!」の源泉が「Good Times」であることがよく分かると思う。ワム!がコンサートで「Good Times」をカヴァーしていたのも頷けるだろう。

 ところで、このプレイリストには史上最も有名な「Good Times」ネタ曲であるシュガーヒル・ギャング「Rapper’s Delight」(1979)が入っていない。入れるなら「The Guardian Angel Is Watching Over Us」と「Gangster Rock」の間なのだが、あまりにも長すぎるため(14分半!)割愛した。このプレイリストは単なる音源アーカイヴではなく、最初から最後まで通しで鑑賞することを想定して作ったものである。なるべくサクサクと聴き進められるよう、10分を超える長尺曲は外すことにした。「Rapper’s Delight」はラップ楽曲として初めて全米トップ40入りを果たし(総合チャート36位/ブラック・チャート4位)、ヒップホップを世界中に知らしめた超重要作である。このプレイリストに入っているほぼ全ての「Good Times」ネタ曲にも影響を与えているわけだが……そんなのみんな知ってるよね?ということで、ここでは代わりにタギー・マッチャーというフランスのビートメイカーによる「Rapper’s Delight」のカヴァー版を収録。レゲエ・アレンジのオケにバスタ・ライムズ「Woo Hah!! Got You All In Check」(1996)のアカペラ音源をマッシュアップし、元々「Rappoors Delaaght」のタイトルで’07年に7インチ発売されたトラック。プレイリストに入っているのは『Disco Reggae』(2013)というコンピで聴けるそのインスト・ダブ版である(ラップが乗っていないと、もはや単なる「Good Times」だが……)

Time_Machine4.jpgTime_Machine5.jpg
ブロンディのシングル「Rapture」、インエクセスのシングル「Need You Tonight」

 ブロンディ「Rapture」(1980)は、「Good Times」の影響下にある(非ナイル・ロジャーズ制作の)白人ポップ~ロック系作品としては最も有名かつ独創性に富んだ1曲。“デン、デン、デン…”に歌詞をつけたキュアー「Hot Hot Hot!!!」(1987)もアイデア賞ものの佳作だが、ここで特筆したいのは、その4ヶ月後に発表されたインエクセス「Need You Tonight」(1987)。この曲が「Good Times」に似ていると思ったことはこれまで一度もなかったが、“チャッ、チャッ、チャッ…”というあの歯切れの良いカッティングのギターリフは、よく考えると「Good Times」の“デン、デン、デン…”と同じである。「Need You Tonight」からメドレーで繋がる「Mediate」のラップ調ヴォーカルに「Rapper’s Delight」の影を見出すこともできなくもない。デビー・ハリー(ブロンディ)と同じく、インエクセスも他の作品でナイル・ロジャーズと組んでいる。「Need You Tonight」に「Good Times」の遺伝子が含まれていてもちっとも不思議はないのだ。

 最後に’90年代のR&Bを少し聴こう。まずは、’90年代最強のシック・リバイバリストと言っても過言ではないD・インフルエンス。彼らの曲の多くには洗練されたシック・マナーが感じられるが、ここでは「Good Times」とジャクソンズ「Heartbreak Hotel」とギャップ・バンド「Outstanding」が混ざったような「Good Life」(1997)をチョイス。ついでに、翌年にシングル発売されたMJ「Rock With You」のエレガントな直球カヴァーも聴きたい。プレイリストのテーマからは逸れるが、「Rock With You」も「Good Times」と同じ’79年発表作で、よく似た上品さを持ったディスコ・クラシックである。フェイス・エヴァンス「Love Like This」(1998)は「Good Times」ではなく「Chic Cheer」ネタだが、同時期のシック・リサイクルとして見逃せない必殺曲なので収録。そして、「Good Times」を堂々とネタ使いしたビヴァリー・ナイト「Made It Back」(1998)。サウンドの流行というのは大体20年くらいの周期で繰り返す。当時のリスナーにとって、「Made It Back」のストレートな「Good Times」使いは一周回って新鮮だったのである(ジャネイのカヴァー版「Good Times」よりこちらの方が良い)。また、プレイリストには入れなかったが、’10年代に「Get Lucky」でシック・フィーバーを再燃させるダフト・パンクも、’97年に「Good Times」調の「Around The World」をしっかりヒットさせている(他にウィル・スミスパフ・ダディノトーリアス・B.I.G.などのヒップホップ曲もあるが、あまり入れると聴き疲れするので、ここはR&Bに絞った)

Time_Machine6.jpg
『Free Your Mind And Your Ass Will Follow』の見開きジャケット

 さて、「Time Machine」にはシック「Good Times」の他にもうひとつ、ファンカデリックという極めて大きな影響源がある。本記事冒頭に歌詞を引用したサビ部分のヘヴィーで泥臭いファンク・サウンドや、後半に登場する混沌としたエレキギター・ソロがそれだ。そこで歌われる“free your mind”というフレーズも、彼らの’70年の曲「Free Your Mind And Your Ass Will Follow」から来ている。なので、このプレイリストは上記の’90年代R&B曲群の後、ファンカデリックの同曲フレーズを引用したアン・ヴォーグの激烈ブラック・ロック「Free Your Mind」(1992)へなだれ込む。そして、最後の最後に「Free Your Mind And Your Ass Will Follow」……のつもりだったのだが、この曲は延々と10分も続くとんでもないサイケ・ロック曲で、実際に入れてみたらとても最後まで聴く気にならない(笑)。そこで考えを改め、同名アルバムの再発CDにボーナス収録されていた当時のアルバムのラジオCM音源(約1分)を入れることにした。これなら最後まで快適に聴ける。もしあなたが暇人なら、アルバム名をクリックし、実際に「Free Your Mind And Your Ass Will Follow」を聴いてみて欲しい(ちなみに、私は過去に1度しかこの曲を聴き通したことがない)

 アリシアはこれまで巷のディスコ・ファンク(ブギー)流行りとは距離を置いていたので、今回の新曲「Time Machine」は嬉しい驚きだった。「Good Times」を控えめに引用しながら、そこにファンカデリックを持ってくるプリンス的センスが彼女らしい。ナイル・ロジャーズを呼んで今さらフィーバーすることもなく、過去との距離をしっかり意識し、飽くまで’19年という現時点からディスコ時代に思いを馳せる夢幻的でクールなサウンドが素晴らしいと思う。アルバム&来日にも期待!






 おまけ。私は自分のお気に入り曲が1位だった週のビルボード誌チャート(主にブラック・チャート)を1位から順にプレイリスト化することにハマったことがあって、’70~’80年代を中心に色んな曲で作っている。その中にシック「Good Times」とMJ「Rock With You」が1位だったときのプレイリストもあるので紹介しておく。

 「Good Times」はブラック・チャート(当時のチャート名は“Hot Soul Singles”)で’79年7月28日~9月1日にかけて6週連続1位を獲ったうち、1週目の’79年7月28日の上位50曲をプレイリスト化。「Rock With You」も同じくブラック・チャートで’80年1月5日~2月9日にかけて6週連続1位を獲ったうち、1週目の’80年1月5日の上位50曲をプレイリスト化(2位は同じくクインシー制作のルーファス「Do You Love What You Feel」。「Rapper’s Delight」も7位にランク。名曲だらけ!)

 数週連続で1位になっている場合、基本的には最初の週をプレイリスト化するが、特に上位(1~10位くらい)のラインナップを見比べて、プレイリストとして曲の並び方が最も魅力的な週を選ぶというのが私のやり方である。なので、曲によっては1位になって2週目や3週目のチャートをプレイリスト化する場合もある。また、1位は基本的に12インチの全長版を使うが、2位以下の曲はなるべく7インチの短縮版を収録するようにしている。7~8分の長尺曲ばかり続くと途中で聴く気が失せるからである。この手のプレイリストは次々と色んな曲が飛び出してくる方が聴いていて楽しい。

 年間チャートは多くのユーザーがプレイリスト化しているが、特定の週のチャートでこれをやる人間はそう多くない。チャート内の50~100曲がすべて揃うことは滅多にないが、これもプレイリストのひとつの作り方である。ヒットチャート(別にビルボードでなくても良い)を基に自分のお気に入り曲で始まるヒット曲集を作るという作業は滅法楽しいので、暇な音楽ファンにはお勧めである。




 おまけ、その2。以前、当ブログで猛プッシュしたことがある“ノルウェーのジャネール・モネイ”=ミス・タティ Miss Tati の’16年のシングル曲「Again And Again」。シックの優れた現代解釈で、「Time Machine」とよく似た冷ややかなフィーバー感が気持ち良い(他にも「Here To Stay」というシック風の傑作曲あり)。ミス・タティの1stアルバム『Finally, Tati』(2017)は超絶ポップな大傑作なので、多くの人に聴いて欲しい。



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