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R.I.P. VANESSA BLEY



 スチュアート・マシューマンのサイド・プロジェクト、ツイン・デンジャーでヴォーカルを務めていたアメリカの女性ミュージシャンで、’16年1月に他界したジャズ・ピアニスト、ポール・ブレイの娘でもあるヴァネッサ・ブレイが交通事故で亡くなった。享年34歳。

 事故現場は、カリフォルニア州サンタバーバラの州道154号線。地元のニュース記事Santa Ynez Valley Starによると、10月25日(金)の午後4時45分頃、John Roderick Dunganという28歳の男性の運転する車が原因不明の理由でセンターラインを越え、対向車線を走っていたヴァネッサの車に正面衝突した。この事故により、運転者のヴァネッサと、同乗していた彼女の2人の幼い子供──2歳の長女と生後4ヶ月の長男──がその場で亡くなった。衝突した男性は重体で病院へ搬送された。また、ヴァネッサの後ろを走っていた車も事故に巻き込まれたが、そちらの搭乗者に怪我はなかったという。

 ヴァネッサは’13年にマックス・グリーソン Max Gleason という画家(ヴァネッサのソロ作でジャケットの肖像画も描いていた。画風はクリムトやシーレに近い)の男性と結婚。長らく住んだニューヨークを離れ、近年はサンタバーバラのソルバングで幸せに暮らしていたようだ。この事故で、車に乗っていなかった夫のマックスさんだけが残されてしまった。

 マシューマンが自身のインスタグラムに追悼文を投稿している。

「私たちは愛するヴァネッサと彼女の2人の天使を失いました。私たちのショックはとても言い表せません。彼女と出会えたすべての人たちにとって、この喪失感はいつまでも埋まることがないでしょう。夫のマックスと遺族を思いやってあげてください。彼らの悲しみは察するに余りあります(We have lost our darling Vanessa and her 2 cherubs . I can’t express how devastated we all are. She will leave an unfillable chasm in every one honored to have know her. Please send love to her husband Max and family I can’t fathom the grief they are feeling.)」(29 October 2019 @stuart_matthewman


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遺作となったヴァネッサ・ブレイのピアノ・ソロ作『Colors』(2017)

 何と言っていいか分からない。不条理以外の何ものでもないし、本当に、ただただ残念だ。

 ビルボードライブ東京でツイン・デンジャーの来日公演があったのが’13年4月。当時はバンドのレコード契約も決まっておらず、音源もほとんどリスナーに届いていない中、作ったばかりの自主制作CDを携えての来日敢行だった。

 ’15年にツイン・デンジャーのアルバムがメジャー・リリースされた後、ヴァネッサは’17年8月に『Life & Death』というサイケデリックでメランコリックなインディー・ロック作(父親の死に触発されたそう。サックスでスチュアート・マシューマン参加)、同年12月に『Colors』という即興のピアノ・ソロ作を発表している。後者は父ポール・ブレイを彷彿させる静謐で鋭い音の響きと、ロック少女らしい豪胆さが同居したスリリングで美しい作品。ツイン・デンジャーの来日公演でも多少ピアノを弾く場面があったが、彼女にこんなにもピアノの才があるとは知らなかった。

 今回、訃報に触れてネットで情報を検索したところ、この『Colors』の発表を記念し、’18年4月17日に渋谷のSARAVAH東京でヴァネッサがピアノ・ソロ公演を行っていたことが分かった。“ピアノな夜”と題された公演で、第1部でヴァネッサ、第2部で日本人ピアニストの山口コーイチがソロ演奏を披露し、最後に2人で連弾の共演も果たしたという。こんな公演が行われていたなんて私は全く知らなかった(その日、私は下北沢でアンジェロ・ムーアを観ていた…。ヴァネッサの来日公演について詳しくは本記事末のリンクからJazz Tokyoの記事をご覧ください)

 ツイン・デンジャー来日公演で聴かせてくれたチャーミングな歌声や、朗らかでちょっとお茶目なキャラが懐かしく思い出される。パーマネントなプロジェクトとしてツイン・デンジャーの活動は是非とも続けて欲しかったし、他にも色々な可能性があるミュージシャンだったと思う。’18年の来日時には(父親の死を経て)“これからはピアノに専念する”とも話していたようだ。本当に残念でならない。

 今はただ彼女が残してくれた音楽を大切に聴き続けたいと思う。素敵な音楽をどうもありがとう。心から冥福を祈る。






Vanessa Bley | Official Site
Vanessa Bley | Bandcamp
Vanessa Bley | Instagram

ヴァネッサ・ブレイ来日直前インタビュー(Jazz Tokyo/2018年4月1日)
『Colors』レビュー(Jazz Tokyo/2018年4月1日)
ヴァネッサ+山口コーイチ「ピアノな夜」公演レポ1(Jazz Tokyo/2018年5月5日)
ヴァネッサ+山口コーイチ「ピアノな夜」公演レポ2(Jazz Tokyo/2018年6月2日)


追記(’19年11月1日):
 音楽評論家の佐藤英輔氏がヴァネッサのソロ・ピアノ公演を観ていた(この人はツイン・デンジャーも観ている)。終演後にヴァネッサと軽く話したところ、決してピアノだけに専念するわけではなく、ツイン・デンジャーは続いている、と明言したそうだ。もしヴァネッサが存命であれば、次のシャーデーの活動が終わった後、’20年代半ば頃に2ndアルバムが作られたかもしれない。




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