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このグルーヴを邪魔せんどいて!



 Excuse me for the moment, I’m in another world...




DON’T DISTURB THIS GROOVE!
80s R&B Jams Cool Summer Mix

Nite And Day (1988) - Al B. Sure!
Don’t Disturb This Groove (1987) - The System
It Never Rains (In Southern California) (1990) - Tony! Toni! Toné!
Can You Stand The Rain (1988) - New Edition
Pillow (1987) - Herb Alpert
Human (1986) - Human League
Sensitivity (1990) - Ralph Tresvant
Someday Is Tonight (1989) - Janet Jackson
Spread My Wings (1989) - Troop
Ready Or Not (1989) - After 7
I Love You Babe (1986) - Babyface
Make It Last Forever (1987) - Keith Sweat with Jacci McGhee
I Like The Way (The Kissing Game) (1990) - Hi-Five
I Want To Be Your Man (1987) - Roger
No One’s Gonna Love You (1984) - S.O.S. Band
Hangin’ On A String (Contemplating) (1985) - Loose Ends
Happy (1986) - Surface
Love Is A House (1987) - Force M.D.’s
Never Knew Love Like This (1987) - Alexander O’Neal feat. Cherrelle
(Don’t U Know) I Love U (1989) - Chuckii Booker
Nasty [Cool Summer Mix Part 1] (1986) - Janet Jackson
Diamonds (1987) - Herb Alpert feat. Janet Jackson
Nasty [Cool Summer Mix Part 2] (1986) - Janet Jackson feat. Herb Alpert
Slow Down (1986) - Loose Ends
What’s Too Much (1987) - Smokey Robinson
Prime Time (1984) - Mtume
Turn My Back On You (1988) - Sade
Night Moves (1985) - Keni Stevens
Two Ships (In The Night) (1989) - Jermaine Jackson
A Last Request (I Want Your Sex Part III) (1987) - George Michael


 35度超えの猛暑から脱出するための納涼プレイリスト『Don’t Disturb This Groove!』。’80年代後半のR&Bヒットから特に夏聴きに相応しいミディアム~スロー曲を厳選し、丁寧に並べた。クーラーのきいた部屋でこれをかければ、あなたの部屋が快適で涼しい避暑地に早変わり!

 夏向けを謳ったプレイリストやコンピレーションは巷にたくさんあるが、これって結局ただのヒット曲集じゃね?と思うようなイージーな内容のものが多い。そこで私は’80年代後半のR&Bサウンドが持っていた清涼感・透明感に着目。シンセやドラムの音色、ヴォーカリストの声質、楽曲のコード感、テンポ、ミキシングなど、いくつかの点に留意しながら慎重に選曲を行い、聴くだけで体感温度が確実に2度は下がる究極のサマー・プレイリストの完成を目指した。

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アル・B・シュア!『In Effect Mode』(1988)、ザ・システム『Don’t Disturb This Groove』(1987)

 このプレイリストの絶対軸は、冒頭を飾るアル・B・シュア!「Nite And Day」とザ・システム「Don’t Disturb This Groove」の2曲である。アル・Bの神曲「Nite And Day」は、サウンド・プロダクション、ヴォーカル、楽曲、いずれも清涼感に溢れ、私が夏に聴きたいと思うポップ・ミュージックの条件を120%満たしている。踊ることを強いない──が、踊ろうと思えば踊れる──ミッドテンポのタイトなグルーヴが心地良いし、控えめにミックスされたエレキ・ギターの黄昏た響きもチルアウト感たっぷりだ。そして何と言っても、力の抜けまくったアル・Bの涼やかな歌声。マイケル・ジャクソンさえも凌ぐ驚異的な透明度を持つ彼のヴォーカルは、渾身の力で熱く歌い上げるゴスペル起源の従来の黒人音楽のそれとは大きく趣が異なる。私がこのプレイリストで求めたのはまさにアル・BのようなMJ系の歌声で、妹のジャネットはもちろん、MJが楽曲提供したこともあるラルフ・トレスヴァント(ニュー・エディション)や、J5のカヴァーヒットを持つトゥループなど、同系の澄んだ──同時にちょっと甘酸っぱい──歌声を持つ歌手やグループの曲を意識的に多く選んだ。男くさい伝統的なソウル系シンガー(テディ・ペンダーグラス、ルーサー・ヴァンドロス、フレディ・ジャクソンみたいな人)の熱唱を聴くことは、夏にカレーを食べるのに近く、無駄に汗をかいて体調を崩すことに繋がりかねない。私が食べたいのは飽くまで素麺や冷麺だということである(エル・デバージも入れたかったが、’80年代後半に適当な曲がないため残念ながら選外。アル・B、バリー・ホワイト、ジェイムズ・イングラムらと客演した’89年のクインシー・ジョーンズ「The Secret Garden」という選択肢もあるが、このプレイリストに入れるには濃すぎる。私が欲しいのは’94年の「Where You Are」のような曲)

 プレイリストのタイトルにもなっているザ・システム「Don’t Disturb This Groove」は、夏に聴かずに一体いつ聴くんだ?というくらい夏らしい爽快感に溢れた緩やかなデジタル・ファンク。メンバー2人がオープンカーで流しているアルバム・ジャケからしてそんな感じだ。この曲が持つちょっとしたリゾート感やエスケイピズム(逃避感覚、気晴らし感)こそ、35度超えのクソ暑い日常から抜け出すために必要なものである。ドアに“邪魔せんどいて(Don’t Disturb)”の札をかけ、夏の熱気を完全シャットアウトする。このプレイリストのコンセプトを明確に定めた重要曲である。その他の収録曲はこれら冒頭2曲を基準に選んでいった。「Nite And Day」「Don’t Disturb This Groove」の2曲が好きな人は、他の曲もすべてツボにハマるはずである。

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ジャム&ルイスのプロデュース作品いろいろ

 SOSバンド、チェンジ、シェレール、アレクサンダー・オニール、フォースMDズ、ジャネット・ジャクソン、ニュー・エディション、ヒューマン・リーグらのヒット作を手掛けて、当時、時代を牽引するプロデューサー・チームになっていたジミー・ジャム&テリー・ルイス。清涼感・透明感という点でも彼らの作品は突出したクオリティを持っていて、このプレイリストでは全30曲のうち実に1/3に当たる10曲を彼らの制作曲が占めている。序盤に連なるニュー・エディション「Can You Stand The Rain」~ジャネット「Someday Is Tonight」の5曲はいずれもジャム&ルイス作品だが、このパートは彼らの最大の成功作のひとつでもあるヒューマン・リーグ「Human」に通じるコード感やメロディを持つ曲を並べ、ひとつの組曲のように構成してみた(名付けて“The Human Suite”!)。これはこのプレイリスト前半の大きな聴きどころで、個人的にも非常に気に入っている。

 ジャム&ルイスの制作曲は後半でも大きな山場を作っている。ジャネット・ジャクソン「Nasty (Cool Summer Mix)」がそれだ。大ヒット「Nasty」をジャム&ルイスらしいジャジーでクールなファンクに仕立て直した傑作リミックス。その名の通り、涼やかな夏の空気が感じられる、まさにこのプレイリストに打ってつけのトラックだ。ジャネットのヴォーカルを前面に出した“Part 1”と、ハーブ・アルパートのトランペットをフィーチャーしてインスト色を強めた“Part 2”があるが、ここではジャネットが客演したハーブ・アルパートの同系曲「Diamonds(もちろんジャム&ルイス制作)を挟み、合わせて18分ある長尺の2ヴァージョンを両方収録した。私はこのリミックスがとにかく好きで、3時間くらい延々と聴きたいといつも思っていた。特に好きなのが、トム・ブラウン「Funkin’ For Jamaica」(1980)風のコード進行に乗って入るジャジーなピアノ・ソロ。同じようにトランペットをフィーチャーしたこのリミックスは、実際「Funkin’ For Jamaica」を意識して作られたような気がするのだが、いかがだろう。

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ケニ・スティーヴンス『Blue Moods』(1987)、ジャーメイン『Don’t Take It Personal』(1989)

 「Nasty (Cool Summer Mix)」以降の終盤は、仄かにジャズ色を帯びた曲が並び、夜のムードと共にどんどん涼しさが増してくる。シャーデーもここで登場。収録候補としては「Paradise」「Nothing Can Come Between Us」「Give It Up」「War Of The Hearts」「Never As Good As The First Time(アルバム版)」「Cherry Pie」などもあったが、最終的に「Turn My Back On You」を選択。このプレイリストでは生ドラム・サウンドを避け、基本的にドラムマシンの打ち込み──主にTR-808(私は特に808のカウベル音に涼を感じる)──で作られた曲を選んでいるため、この時代のシャーデー作品では「Turn My Back On You」がサウンド的にしっくりくる。本当は「Make Some Room」(インストのアシッド・ハウス曲。’88年のシングルB面収録)を入れたかったが、Spotifyにないため、それに曲想が近い「Turn My Back On You」を選んだ(プレイリストをシャーデーで締め括るなら迷わず「Siempre Hay Esperanza」だが、締めにはもっと相応しい曲がある)

 シャーデーの次に登場するケニ・スティーヴンスは、以前にもちょっと紹介したことがあるイギリスの男版シャーデー。彼のアルバムがSpotifyで聴けないのは痛すぎるが一応あるのだが、現時点では音源にアクセスできない)、1st『Blue Moods』(1987)にも別ヴァージョンで収録された’85年のデビュー曲「Night Moves」が辛うじて所属レーベルのコンピ内にあったので、それを収録した。風を切るようなクルーズ感が最高に気持ち良いスムーズジャズ調の名曲。マーヴィン・ゲイの影響をもろに受けている人なので、その次に同類のジャーメイン・ジャクソンが登場する。ジャーメインは同時期のシングル曲「Don’t Take It Personal」も捨て難いが、この位置に入れるならジャジーな「Two Ships」がしっくりくる。そして、クローザーはジョージ・マイケル。曲はもちろん『Faith』の最終曲「A Last Request」。夏の猛暑はこれで完封!

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ジミー・ジャム&テリー・ルイス

 全30曲、2時間37分。約1ヶ月の試行錯誤を経て、最終的にこの選曲と曲順に辿り着いた。この形になるまで多くの曲を足したり削ったりした。例えば、キャメオのヒット曲「Candy」(1986)。私はこの曲が好きで、最終段階までロジャー「I Want To Be Your Man」とSOSバンド「No One’s Gonna Love You」の間に入れていたのだが、通しで聴き返す度にそこで違和感を覚えた。涼やかな曲のようでいて、ラリー・ブラックモンの粘着質なファンク声とチャーリー・シングルトンのロッキッシュなギターがさりげなく確実に暑苦しいのである。結局、私はこの名曲を断腸の思いで削った。

 また、TR-808を使ったR&Bの先駆曲として、マーヴィン・ゲイ「Sexual Healing」(1982)やアイズレー・ブラザーズ「Between The Sheets」(1983)を入れる案もあった。しかし、最終的に選出した’84年~’90年の30曲と比べると、同じTR-808を使った曲でも、サウンド全体にどうしても若干のベタつきや古臭さを感じる。この違いは、この2曲を、同時期に発表されたジャム&ルイス制作のSOSバンド「Tell Me If You Still Care」(1983)──同じくTR-808を使用──と聴き比べるとよく分かる。





 メロディ、歌唱、編曲、総合的な音響面で「Tell Me If You Still Care」が’80年代後半の多くのR&B曲に通じる清涼感・透明感を持っているのに対して、「Sexual Healing」と「Between The Sheets」の場合、808を使ったドラム以外のパートが’70年代ソウルのスタイルをあまりにも強く引きずっている(ように感じられる。特にエレピの響きと歌唱スタイル)。感覚的にアナログから脱し切れていない、という言い方もできるかもしれない。もちろん、「Sexual Healing」や「Between The Sheets」を否定するつもりはない。この2曲は後のR&Bやポップ・ミュージックに莫大な影響を与えたあまりにも偉大な作品である。但し、’80年代後半から増えていった透明感溢れるデジタル時代のR&Bサウンドを考えるとき、その決定的な始点がジャム&ルイス作品にあるということは間違いなく言えると思う。今回、私がこだわった清涼感や透明感を持つR&B作品は、彼ら以前には存在しないからである。このプレイリストは要するに、“ジャム&ルイス以降の’80年代R&B名曲集”でもある(……ということに、私はプレイリストが完成して初めて気付いた)

 涼やかさとチルアウト感を徹底的に追求したので、このプレイリストは入眠効果も高い。私は毎晩これを就寝時のBGMとして愛聴している。猛暑で身も心も折れかかっている音楽ファンはお試しあれ。

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