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Madonna x Prince──ラヴソングに非ず



 私はあなたの女じゃなかった 友達でもなかった
 でもあなたは大事なことを教えてくれた
 自分自身を愛せ──そんなこと
 言ってくれる人はいない
 私たちには縁がなかった
 少なくとも現世では
 でもあなたは大事なことを教えてくれた
 今もあなたの声がする──自分を愛せ

 
 ──マドンナ「Something To Remember」(1990)




Madonna x Prince - This Is Not A Love Song

Like A Prayer (1989) - Madonna
Glam Slam (1988) - Prince
Justify My Love (1990) - Madonna
Gett Off (1991) - Prince & The New Power Generation
Erotica (1992) - Madonna
I Wanna Melt With U (1992) - Prince & The New Power Generation
Human Nature (1994) - Madonna
Pheremone (1994) - Prince
Rain (1992) - Madonna
The Greatest Romance Ever Sold (1999) - Prince
I’d Rather Be Your Lover (1994) - Madonna
If I Was Your Girlfriend (1987) - Prince
Something To Remember (1990) - Madonna
The Question Of U (1990) - Prince
Keep It Together (1989) - Madonna
Love Song (1989) - Madonna with Prince
Act Of Contrition (1989) - Madonna

 新作『Madame X』も絶好調なマドンナ。彼女とプリンスの架空コラボ・アルバム『This Is Not A Love Song』を作成してみた。マドンナの’89年作『Like A Prayer』で実現した両者の最初で最後のコラボ曲「Love Song」をハイライトに、主に’90年代前半のそれぞれの曲を交互に並べた『Double Fantasy』形式の共演(競演)プレイリスト。全17曲、収録時間はCD尺の79分。

 作詞作曲/プロデュース共にマドンナとプリンスがガッツリ交わった「Love Song」の他に、実際に両者が共演しているトラックは、同じく『Like A Prayer』収録の「Like A Prayer」「Keep It Together」「Act Of Contrition」。これら3曲にプリンスはギター演奏で参加している(「Like A Prayer」はイントロのディストーション・ギターがそれ)。レニー・クラヴィッツ制作「Justify My Love」は、映画『グラフィティ・ブリッジ』(1990)にヒロイン役で出演し、翌年にPaisley Parkからアルバムも出した女性アーティスト/詩人、イングリッド・シャヴェイズの共作曲で、間接的にプリンスと繋がりがある作品。

TINALS2.jpg
マドンナのMV「Justify My Love」(1990)

 マドンナとプリンスは、言うまでもなく、セックスにまつわる露骨で過激な表現をメインストリームで果敢に行い、世界規模で“性”を解放した’80年代の2大ポップ・スターである。特にマドンナはその表現活動を通して女性や性的マイノリティを積極的に支持し、性の解放者としてプリンス以上の奮迅を見せてきた。LGBTを巡る現在の世界的な社会状況も、マドンナがいなければもう少し窮屈なものになっていたかもしれない。

 架空コラボ・アルバム『This Is Not A Love Song』は、“マドンナとプリンスは一体どちらが性欲が強いか”をテーマに、得意のスキャンダラスな官能ソングで2人がエロ対決を繰り広げる内容になっている。核となる「Love Song」自体がマドンナ作品にプリンスが客演する形で発表されているため、基本的に主導権を握るのはマドンナ。例えば「Justify My Love」に対してプリンスが「Gett Off」、「Erotica」に対して「I Wanna Melt With U」、「Human Nature」に対して「Pheremone」……という具合に、先攻のマドンナに対してプリンスが似たタイプの曲で応戦するという構成にした。マドンナ主導の内容ゆえ、ジャケット画像も彼女のセンスに合わせて作ってある(イングマール・ベルイマン『ペルソナ』ネタ)

 冒頭曲「Like A Prayer」へのプリンスの対抗曲には「Thieves In The Temple」や「Thunder」も考えられるが、「Like A Prayer」のプラスチック・ゴスペルな曲想(デヴィッド・ボウイ「Underground」に酷似)を踏まえて、宗教的な祝祭感を持つ「Glam Slam」を選んでみた。以前にも紹介した話だが、実はその「Glam Slam」収録の『Lovesexy』(1988)から『Graffiti Bridge』(1990)へと至る’80年代末の一時期、コラボ曲「Love Song」以外にも、マドンナとプリンスの間にはある大きな共演計画があった。当時プリンスのお抱えダンサーだったキャットが、映画『グラフィティ・ブリッジ』について’13年のインタビューでこう話している。

「プリンスとマドンナと私が『グラフィティ・ブリッジ』の当初の出演者だった。あの映画はプリンスとマドンナと私のために書かれた。それ以上でも以下でもない。
 あの映画は、本当は〈Lovesexy〉ツアーに関するものだった。あの映画の出演者は全部入れ替わってる。プリンスが脚本を書き、その大部分は〈Lovesexy〉ツアーでの私たちの経験を描いたものだったのよ。マドンナが手を引き、私もプリンスのもとを去った。辞めたのよ。だから、プリンスは脚本を書き直さなきゃいけなくなった。
 そこでイングリッド・シャヴェイズや他の人たちが集められたわけ。でも、メイヴィス・ステイプルズは当初からの出演予定者だった。彼女の役はずっとあった。シーラ・Eも出るはずだった。みんな入れ替えられちゃったのよ。と言うと嫌味ったらしくなっちゃうけど、でも、私は元の脚本を知ってるから。
 マドンナとプリンスが脚本を練ってるとき、私は一緒にスタジオにいた。物語は全く違ってたわ。2人が脚本を巡って言い合ったり、互いに褒め合ったり、互いの靴について話すのを聞いて私は笑ってた。マドンナがプリンスに“キャットと私でダンス対決をやらなきゃ”と言うと、プリンスが“それはどうかな。そんなことやりたくないだろ。キャットにダンスで挑むなんて”。彼はそんな風に言ってた。よく覚えてるわ。2人のパワフルな人間が同じ場所にいて、そこに私もいた。私は2人を端から眺める見物人みたいな感じだったわ。でも、映画は全く別物になってしまった」(29 May 2013, Dyes Got the Answers 2 Ur ?s)

 映画『グラフィティ・ブリッジ』は最終的に『パープル・レイン』の続編になったが、元々はマドンナやキャットをメインキャストに据えた全く別内容の音楽劇だったようだ。もし映画の企画が当初のアイデア通りに進行していれば、「Love Song」もその中で使われていたかもしれない。

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’89年『Like A Prayer』発表時のマドンナ

 Are you wasting my time?
 Are you just being kind?
 Oh no baby, my love isn't blind
 Are you wasting my time?
 Are you just being kind?
 Don't give me one of your lines
 
 じらしてるの?
 気を遣ってるだけ?
 ベイビー この恋は盲目じゃない
 じらしてるの?
 気を遣ってるだけ?
 騙しっこはなしよ
 
 Say what you mean, mean what you say
 Don't go and throw our love away
 God strike me dead if I did you wrong
 This is not a love song
 
 本当に思ってることを言って
 私たちの恋を捨てないで
 絶対に悪いようにはしない
 これはラヴソングじゃない

 
 音楽的には極めてプリンス色が濃厚な「Love Song」だが、歌詞は何となくマドンナが中心に書いているような気がする。2人のロマンスを仄めかしながら、最終的に聴き手を煙に巻くような内容になっている。結びの“これはラヴソングじゃない”は、エンディングではマドンナによって“これは私の歌いたいラヴソングじゃない(This is not a love song that I want to sing)”とも歌われている。中盤に出てくる“Time goes by so slowly”の印象的なフレーズが、後にマドンナの特大ヒット「Hung Up」(2005)のフックに使われている点も面白い。

 実際のところ、2人の関係はどのようなものだったのだろうか。西寺郷太・著『ジャネット・ジャクソンと80’sディーバたち』(2016)には、ボビー・ブラウンの自伝『Every Little Step: My Story』(2016)で明かされたマドンナとボビーの驚くべき逸話が紹介されている。その部分を以下に引用する。

「自伝では、ボビー自身が10代から20代にかけての自分の異様なモテぶりを語っており、“据え膳食わぬは男の恥”とばかりに片っ端から言いよる女性をモノにしてきた事実をある種淡々と描いている。マドンナに関しては、1989年『ライク・ア・プレイヤー』をリリースした直後、ロサンゼルスにいたボビーはダンサーの女性繋がりでスタジオに呼び出されたという。この頃、マドンナは30歳。ボビーは20歳。自己紹介するやいなや、いきなりトイレでSEX!! それから何回か会って、肉体関係は続いたらしいが、ボビー曰く“マドンナは俺よりお盛んで引いた。あまりにもワイルド過ぎて楽しくなかった”」

 さすが女獣マドンナ。彼女にとってセックスは挨拶みたいなものなのかもしれない。

 人の何十倍も性欲が強いスーパー肉食系のマドンナとプリンス。この2人が顔を合わせたらどうなるのか。自己紹介する間もなく、目が合った瞬間に事に及ぶのか。あるいは、(磁石の同じ極同士が反発し合うように)逆に微妙な距離を置くのか。2人が肉体関係を持ったかどうかは私たちには知る由もない……と言うか、知ったこっちゃないことだが、この2大スターが互いをどのように思っていたのかはちょっと気になるところだ。
 
 マドンナにとってプリンスは一体どのような存在だったのか。架空コラボ・アルバム『This Is Not A Love Song』で、私は(飽くまで希望として)「Love Song」の翌年に発表された「Something To Remember」を通してマドンナにプリンスへの個人的な思いを語らせることにした。本記事の冒頭に引用したのがその歌詞である。マドンナにとってプリンスは、そのような特別な人物だったのではないだろうか。



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