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Blues Brothers’ Briefcase~ブルース兄弟の鞄【第1集】



 映画『ベイビー・ドライバー』に触発されたプレイリスト『Baby Driver 2』に続き、現代ミュージカル映画/音楽映画の不滅の金字塔『ブルース・ブラザース』(1980)をテーマにしたプレイリストをSpotifyで作成した。

 アメリカの深夜コメディ番組〈Saturday Night Live〉から誕生したジェイク(ジョン・ベルーシ)とエルウッド(ダン・エイクロイド)の白人義兄弟コンビ、ブルース・ブラザーズ。彼らは、オーティス・レディング、ウィルソン・ピケット、サム&デイヴらの録音でバックを務めていたスタックス・レコードの専属スタジオ・バンド、ザ・MGズや、〈SNL〉の専属バンドから腕利きミュージシャンを集めてバンドを結成し、ディスコ真っ盛りの時代に、魂のこもった本格的なリズム&ブルースを演奏して世界中の音楽ファンに感動を与えた黒人音楽の熱き伝道者だった。

 ブルース・ブラザーズには主に4つのアルバム──『Briefcase Full Of Blues』(1978)、『The Blues Brothers: Original Soundtrack Recording』(1980)、『Made In America』(1980)、『Blues Brothers 2000: Original Motion Picture Soundtrack』(1998)──がある(編集盤やThe Blues Brothers Band名義の諸作は除く)。彼らが演ったのはオリジナル曲ではなく、もっぱら古典曲のカヴァーだった。今回、私は『The Blues Brothers’ Briefcase』と題し、これらの4作でカヴァー、または映画内で実際に音源が使用されたリズム&ブルースの名曲群をすべてオリジナル版で集め、アルバムごとに丁寧に編纂した。ボーナス音源も加えて各アルバムを先人たちの録音ばかりで再現したVol. 1~Vol. 4に加え、人気の高い2ndの映画サントラに関しては、より一般ファン向けに音源を厳選した『The Blues Brothers: Songs Covered and Used in the Movie』というプレイリストも用意した。ビギナーからマニアまで楽しめるブルース・ブラザーズの究極の元ネタ音源集だ。

 10代の頃に『ブルース・ブラザース』のサントラ盤を買って以来、彼らが取り上げた古典曲のオリジナル版ばかりを集めた編集盤があればいいのにな、と私はずっと思っていた。それが今ではSpotifyでいとも簡単に、自分の思い通りに自作できてしまう。私はこれらのプレイリストを単なる音源の寄せ集めではなく、自分が繰り返し聴いて楽しめるよう完全に納得いくまで作り込んだ。これは私の長年の夢の実現でもある。さあ、君にも“”が見えるか?!




The Blues Brothers’ Briefcase Volume 1

I Can’t Turn You Loose (1965) - Otis Redding
Hey Bartender (1955) - Floyd Dixon
Messin’ With The Kid (1960) - Junior Wells
(I Got Everything I Need) Almost (1973) - Downchild Blues Band
Rubber Biscuit (1956) - The Chips
Shotgun Blues (1973) - Downchild Blues Band
Groove Me (1970) - King Floyd
I Don’t Know (1952) - Willie Mabon
Soul Man (1967) - Sam & Dave
“B” Movie Box Car Blues (1972) - Delbert & Glen
Flip Flop And Fly (1955) - Big Joe Turner
I Can’t Turn You Loose (1969) - The Upsetters feat. Jimmy Wess
Bonus tracks:
Bar Tender (1961) - Laurel Aitken
Messing With The Kid (1968) - Junior Wells
Messin’ With The Kid (1972) - Buddy Guy & Junior Wells
I Don’t Know (1972) - Buddy Guy & Junior Wells
I Don’t Know (1969) - Freddie King
I Don’t Know (1972) - Screamin’ Jay Hawkins
Groove Me (1976) - Etta James
Soul Man (1969) - Don Bryant
I’m A King Bee (1957) - Slim Harpo
Flip, Flop, And Fly (1973) - Downchild Blues Band
Groove Me (1979) - Fern Kinney

 ブルース・ブラザーズのデビュー作で、最大のヒットにもなったライヴ盤『Briefcase Full Of Blues』(1978)の収録曲をオリジナル版で聴く第1集。基本的に’50~’60年代のブルースやリズム&ブルース~ソウルの古典曲をレパートリーにしていたBBバンドだが、彼らは懐メロでご機嫌を取るバーやラウンジのコピー・バンドでも、通受けを狙ったマニアの道楽バンドでもなかった。ここでは「Soul Man」「I Can’t Turn You Loose」という2つの有名スタックス楽曲を軸に、「Flip Flop And Fly」(「Shake, Rattle And Roll」の姉妹曲)や「Hey Bartender」「I Don’t Know」といった白人層にも受けやすいロックンロール寄りのリズム&ブルース曲、エイクロイドのソロ曲としてノベルティ調のドゥワップ曲「Rubber Biscuit」を選ぶなど、しっかり自分たちの個性を生かし、渋いながらもきちんと大衆に訴えるバランスの取れた選曲が光っている。

 この1stアルバムで特に注目されるのは、ダウンチャイルド・ブルース・バンドの2曲(「(I Got Everything I Need) Almost」「Shotgun Blues」)。ダウンチャイルド・ブルース・バンドはブルース・ブラザーズにとって大きな手本となった’69年結成のカナダの白人ブルース・バンドで、これら2曲は2nd『Straight Up』(1973)に収録されている彼らのオリジナル楽曲を取り上げたもの。ビッグ・ジョー・ターナー「Flip Flop And Fly」も『Straight Up』からシングル・ヒットしたダウンチャイルド・ブルース・バンドの代表曲だし、実はジュニア・ウェルズのファンキー・ブルース「Messin’ With The Kid」も彼らの1st『Bootleg』(1971)でカヴァー済みの曲だったりする(BB版とそっくりなのでボーナス収録したかったが、残念ながらSpotifyになかった。YouTubeで聴ける)。グランド・ファンク、ツェッペリンなどのハード・ロックを愛聴していたベルーシに、黒人音楽マニアのエイクロイドが聴かせ、ベルーシがブルースに目覚めるきっかけになったのがダウンチャイルド・ブルース・バンドだったというのは有名な話だ(ブルース・ブラザーズ関連のインタビュー映像でバンド誕生の経緯を話すとき、エイクロイドは必ずダウンチャイルド・ブルース・バンドに言及するが、日本語字幕では字数を食うためいつも省略されている)。ベルーシの歌唱も含め、ブルース・ブラザーズのサウンドはダウンチャイルド・ブルース・バンドに本当にそっくりなので、BBファンは必聴である。

 ブルース・ブラザーズが古典だけでなく、同時代の白人ミュージシャンたちのブルース解釈を大いに参考にしていたことは「“B” Movie Box Car Blues」からも窺い知れる。「“B” Movie」は、米白人ブルース・ロック歌手、デルバート・マクリントンがグレン・クラークという相棒と組んで発表したアルバム『Delbert & Glen』(1972)の収録曲(現在、Spotifyでは再生不可。YouTubeで聴ける)。バディ・ガイ「A Man Of Many Words」やオーティス・レディング「Hard To Handle」を粘っこくしたような実にカッコいい曲だ。後にマクリントンのソロ作『Second Wind』(1978)で再録音され、そちらはホーンが加わってBB版にサウンドが近づいている。「“B” Movie」のオリジナル版とBB版を聴き比べると、BBバンドの編曲力の高さがよく分かる。マット・マーフィーのファンキーなリズム・ギター、彼とスティーヴ・クロッパーがギターで絡むスリリングなブレイクダウン、そこから全員一丸となってダブルタイムで一気に爆走する終盤の流れるような展開は、まさしく凄腕セッション・プレイヤー集団のなせる技だろう。

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Little Richard & The Upsetters(左)、Jimmy Wess & The Upsetters(右)

 ショウの始めと終わりの2度にわたって演奏されるバンドのテーマ曲「I Can’t Turn You Loose」は、同じオーティス・レディング版を2つ入れてもしようがないので、後者にはアップセッターズ版を使った(MGズ「Time Is Tight」は第2集に収録されているのでご安心を)。アップセッターズというのはリー・ペリーのバンドではなく、元々リトル・リチャードのバック・バンドで、ブレイク前のオーティス・レディングと巡業していたこともあったというアメリカのバンド。そのアップセッターズがオーティス他界後の’69年にジミー・ウェスという黒人歌手と組んで出した『We Remember Otis』という追悼アルバムがあり、その中に「I Can’t Turn You Loose」の激アツなカヴァーが入っているのだ。ただ、このアップセッターズ、上の写真を見れば一目瞭然な通り、リトル・リチャード時代とジミー・ウェス時代ではメンバーが一人として同じでなく、本当に生前のオーティスのバックを務めたことがあったかどうかは不明。胡散臭いことこの上ない謎の白人バンドなのだが……実は『We Remember Otis』の中にはBBファンがアッと驚くスゴい曲が入っていたりする(それは第2集で)

 一通りオリジナル版を聴いた後は、ボーナス・トラックでブルース・ブラザーズ以前の優れたカヴァー版を楽しもう。

 スカのゴッドファーザー、ローレル・エイトキンによる「Hey Bartender」のカヴァーは、オリジナルのフロイド・ディクソン版やそれに準じたBB版とは趣が異なるが、’60年代初頭らしいスウィングとスカが混じり合ったサウンドが実に粋だ。

 ジュニア・ウェルズ「Messin’ With The Kid」の2つのセルフ・カヴァーはいずれもノリノリで、テンポを上げた’68年版はBB版に近い印象。’72年版「Messin’ With The Kid」が入っている名盤『Buddy Guy & Junior Wells Play The Blues』にはウィリー・メイボン「I Don’t Know」のカヴァーも入っているので、’69年のフレディ・キング版とあわせて収録した。また、「I Don’t Know」はスクリーミン・ジェイ・ホーキンスもレパートリーにしていた曲で、『A Portrait Of A Man And His Woman』(1972)と『Stone Crazy』(1993)の2作で取り上げている。ここには前者の録音を収録。

 キング・フロイドの一世一代のヒット「Groove Me」は、レゲエの匂いもする粘っこいニューオーリンズ・ファンク曲。BB版ではレゲエ色が強調されたが、’76年のエタ・ジェイムズ版はグッとソウル~ファンク寄りの濃厚なカヴァー。お気に入り曲だったらしく、遺作となった『The Dreamer』(2011)で彼女は再びこの曲を取り上げている。元祖“ソウルの女王”であるエタがブルース・ブラザーズの映画に出演していたら、一体どんな役回りだっただろう(更生施設の女院長とか……)

 ドン・ブライアントによる「Soul Man」のひとり直球カヴァーは、オリジナルのダブル・ダイナマイトに数でこそ負けるが、熱さでは互角に張り合う。ディープ・ソウル・ファンにこよなく愛されている彼のアルバム『Precious Love』(1969)には、「Soul Man」を含め、ブルース・ブラザーズのレパートリーが計3曲も含まれている(残りの2曲は第3集で)

 「I’m A King Bee」は、’76年1月に〈SNL〉でベルーシ&エイクロイドが蜂の着ぐるみで演奏し、ブルース・ブラザーズ誕生のきっかけにもなった曲。スリム・ハーポのオリジナル版はベルーシのコミカルなパフォーマンスからは想像もつかないクールさだ(蜂がチクリと刺す様をギターで模すあたりなど、しびれるくらいカッコいい)

 第1集の実質的な最終曲はダウンチャイルド・ブルース・バンド版「Flip Flop And Fly」だが、その後に更におまけでファーン・キニーによる「Groove Me」のディスコ・カヴァーが入っている。アニタ・ワード(「Ring My Bell」)に似たキャンディ・ヴォイスがジョルジオ・モロダー風のエレクトロニック・サウンドに気持ち良く乗った大傑作カヴァー。原曲のムードを生かしたレゲエ風味のホーンも素晴らしい。ファーン・キニーは「Misty Blue」(1975)のカヴァー・ヒットで知られるドロシー・ムーアと共に’60年代にポッピーズという黒人ガール・グループに在籍していた人で、’79年に「Groove Me」をタイトルにしたディスコ路線のアルバムでソロ歌手として成功を掴んだ(キング・フロイドのオリジナル版にバック・ヴォーカルで参加していたという説もあるが、そもそもフロイド版にバック・ヴォーカルは入っていないし、アルバム『King Floyd』にも彼女の名はクレジットされていない)。ディスコ・カヴァーが入っていることに違和感を覚える向きもあるかもしれないが、最後に当時の音楽シーンを振り返ることで、逆にブルース・ブラザーズの特性が浮かび上がるのではないか。彼らが登場した’70年代末はこういう時代だった。

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〈Saturday Night Live〉でのブルース・ブラザーズのパフォーマンスは『The Best Of The Blues Brothers』(1994)でまとめて観られる(日本版DVDあり)


追記(2019.03.07)
スクリーミン・ジェイが「I Don’t Know」をやっていることをすっかり忘れていた。彼の’72年版をプレイリストに追加し、記事にも加筆を入れた。



Blues Brothers’ Briefcase~ブルース兄弟の鞄【第1集】(2019.02.09)
Blues Brothers’ Briefcase~ブルース兄弟の鞄【第2集】(2019.02.11)
Blues Brothers’ Briefcase~ブルース兄弟の鞄【第3集】(2019.02.13)
Blues Brothers’ Briefcase~ブルース兄弟の鞄【第4集】(2019.02.15)



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