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Cosmo Pyke @ Billboard Live TOKYO 2018



 コスモ・パイクのコンサートを観た。
 
 '17年2月に5曲入りデビューEP『Just Cosmo』を発表した英サウス・ロンドン出身の新人シンガー・ソングライター。アデル、フロエトリー、エイミー・ワインハウス、レオナ・ルイス、キング・クルールなどを輩出しているロンドンのパフォーミング・アート学校、ブリット・スクールの卒業生。ジャマイカ出身の父親とロンドン出身の母親を持つ20歳('98年生まれ)で、ミュージシャンの他にモデルやスケーターの顔も持つドレッド頭&長身のイケメン……という、全くもっておシャレな匂いしかしない男である。

 エレキ・ギターを弾きながら歌う人で、サウンドはジャジーでメロウでブルージー。スカやヒップホップの影響もあるが、パッと聴いた感じはインディー・ロック色が強い。私の知っている範囲でアーティスト名を挙げて言うと、リアン・ラ・ハヴァスキザイア・ジョーンズが混ざってダラッとした感じ(でも、ダラダラしているわけではない)……みたいな音を聴かせる。ルックスはちょっと往年のテレンス・トレント・ダービーを思わせるが、これまた随分と脱力感が漂う。

 コスモ・パイクは今年4月に表参道で初来日公演を行っていて、サマソニ出演も兼ねた今回のビルボードライブ東京公演で二度目の来日となる。私はビルボードライブのニュースレターを見るまで彼の存在を知らなかったが、YouTubeで公開されている3曲のMV(「Chronic Sunshine」「Social Sites」「Great Dane」)が良さげだったので、ダラッと観に行くことにした。


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開演前のビルボードライブ東京の場内

 '18年8月22日(水)の1晩、2公演行われたコスモ・パイクのビルボードライブ東京公演。私が行ったのは2ndショウ。入りは7割くらいで、若い人ばかりかと思いきや、観客の年齢層は意外と幅広かった。

 定刻を少し過ぎた21時36分、ヒョロッとした長身のコスモがまず一人で登場し、ストラトキャスターの弾き語りで飄々とした雰囲気の新曲「Low」を披露。その後、ドラマーとベーシストが迎えられ(いずれも白人の若者。ドラマーはコスモの従兄弟と紹介された)、デビューEPの冒頭曲「Wish You Were Gone(エンディングに「My Favorite Things」のメロディを挿入)を皮切りにトリオでの本格的な演奏が始まった。

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ビルボードライブ東京、1stショウの様子(2ndショウでは変なベストを着ていた)

 ライヴを観て初めて気付いたが、コスモはリアン・ラ・ハヴァスやキザイア・ジョーンズと同じように、エレキ・ギターをピックではなく指で弾く。メロウで清涼感のあるジャジーなコード使いは、リアンも強い影響を受けているジョニ・ミッチェルに通じるものがあるし、3曲目に披露されたハイエイタス・カイヨーテのカヴァー「Nakamarra」からは、一聴してロック色の強い彼の音楽が、ジャズに根ざしたエクスペリメンタルなネオ・ソウルとも通じていることが感じ取れた。

 また、「Social Sites」「Great Dane」といった代表曲や、中盤に披露された新曲「What Can I Do」に漂うレイドバックした気怠いブルース感覚には、キザイアのヒーローの一人でもあるジミ・ヘンドリックスの影が覗く。使用ギターがストラトキャスターで、しかもバンド編成がギター、ベース、ドラムの3ピースだったこともあり、私はコスモのサウンドにジミヘンっぽさを特に強く感じた。今にも「The Wind Cries Mary」や「Little Wing」を演りそうな雰囲気なのである。

 更には、ジャマイカ系らしく彼はスカ~レゲエからも大きな影響を受けていて、これは新曲「Gentrification」によく表れていた。マイナー調のパンキッシュなスカ・サウンドは完全に2トーンの世界。「Great Dane」とメドレーで演奏された「Love & Death」や、終盤に披露された新曲「Railroad Trax」も同様にパンキッシュな疾走感に溢れていたし、「What Can I Do」に続けて矢継ぎ早に始まった8曲目(曲名不明)に至ってはブランキー・ジェット・シティばりの激烈なロカビリー曲で驚かされた。

 歌とスポークン・ワードの中間を行くようなコスモのレイジーでパンキッシュなヴォーカルがこれらのサウンドにマッチして、実に鯔背な雰囲気を醸し出す。スポークン・ワード調の歌は時折ラップのように響き、ごく自然にヒップホップとも呼応する。こうした様々な音楽要素が無理なく当たり前のように同居しているところが今の若者らしくて面白いし、素晴らしいなと思う。私が彼くらいの年齢だった頃、こういう音楽は“ミクスチャー・ロック”と呼ばれたが、もはやミクスチャーでも何でもなくなっている。混ざっている感じが全くしないのが痛快だ。

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角度によってテレンス・トレント・ダービー似なコスモ・パイク

 海外公演の写真を見ると、コスモはストラトキャスターではなく、セミアコを弾いていることが多い。今年4月のシンガポール公演ではホワイト・ファルコンを使っていた。8曲目のロカビリー曲は是非ともホワイト・ファルコンで演って欲しかったところだが、今回のビルボードライブ公演に彼はストラト1本しか用意していなかった。そして、それが公演の後半で思わぬ事態を招くことになった。

 10曲目「Railroad Trax」の終わり頃、彼はギターの1弦を切ってしまった。普通はローディーがすぐに代わりのギターを持ってくるのだが、ストラト1本しかないのでどうしようもない。1弦がないままEP収録曲「After School Club」を演奏した後、PAスタッフが交換用の弦を渡しに来て、コスモがステージ上で弦を張り替えることになった。ストラトは使い慣れていないのか、“俺、このギターよく分かんねえんだよな”と言ってベーシストの助けを借りながら弦を張り替える姿がちょっと情けない。“技術上の問題で5分くらいかかりますので、この間に煙草かドリンクでもどうぞ……ってのは冗談さ。そのまま席にいてよ”などと最初は観客に愛嬌を振りまいていたコスモだが、弦1本張り替えるのにやけに苦戦していて、そのうち無言でギターをいじるだけになってしまった(ペグが空回りして弦が巻けていない様子だった)。あまりにも手こずっているので、実際に席を離れる観客も出てきたほど。ギターアンプに座って弦を張るコスモを、一同、じっと黙って見守るだけの全く無意味な時間がたっぷり3分流れた後、ようやく弦が復活して演奏再開となった。新人らしいと言えば新人らしいひとコマと言えるかもしれない(ギターは2本用意しておこうぜ)。

 仕切り直して「All On Me」という曲を披露した後、“最後の曲だよ”、“ノー!”(観客)、“じゃ、2曲”というやりとりに続いて、現時点で最も知られている彼の曲「Chronic Sunshine」が登場。Aメロはジャズ・ファンク、Bメロはスカ(MVでのスペシャルズへのオマージュがナイス)、サビはニューウェイヴ~ネオアコ調という、コスモの折衷的なサウンドを非常に分かりやすく示す1曲だ。

 “ニーナ・シモンのカヴァーです”と言って始まった最終曲は、ニーナのレゲエ解釈で有名なランディ・ニューマン作の「Baltimore」。ニーナのトリビュート盤『Round Nina』(2014)でリアン・ラ・ハヴァスも歌った曲だが(ロンドン出身でジャマイカ系とギリシャ系の両親を持つリアンはコスモと血統も近い)、コスモ・パイクのヴァージョンはレゲエではなく、アップテンポのグルーヴィーなロック解釈だった。歯切れの良いギター・カッティングを前面に出したソリッドな演奏は、ほとんどキザイア・ジョーンズ状態。めちゃめちゃ似ている。

 「Baltimore」は荒んだ都市の閉塞感を歌った曲である。気骨に溢れたその熱い演奏は、一見おシャレで新しそうなコスモ・パイクの音楽が、多くのジャマイカ移民を含むイギリスの労働者階級で連綿と受け継がれてきた伝統的なレベル・ミュージックの一種であることを強く印象づけるものだった。

 音源未発表の新曲をたっぷり含んだ計14曲、75分。ギター、ベース、ドラムのトリオ演奏は終始、若者らしい清々しさに溢れていた。EP『Just Cosmo』も基本的に同様のシンプルなサウンドだが、彼の幅広い音楽嗜好なら音作りの面でも様々な展開があり得ると思う。確かなセンスが感じられる人なので、今後の活動に期待したい。


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当日のセットリストの紙。終演後にPA卓で写真を撮ろうとしたら“あげるよ”と言われたので貰ってきた。参考にはなったが、実際の公演内容とはかなり異なる上、綴りにもいくつか誤りがある(SoundCloudで公開されている'15年の曲「Cursers Lament」は、記載はされているが演奏されなかった)。2ndショウの正確なセットリストは以下の通り。8曲目のロカビリー曲のみタイトル不明。

01. Low
02. Wish You Were Gone
03. Nakamarra [Hiatus Kayote cover]
04. Gentrification
05. Love & Death
06. Great Dane
07. What Can I Do
08. (unknown rockabilly song)
09. Social Sites
10. Railroad Trax
11. After School Club
(3 minute break for changing a broken guitar string)
12. All On Me
13. Chronic Sunshine
14. Baltimore [Randy Newman/Nina Simone cover]

Live at Billboard Live Tokyo, August 22, 2018 (2nd show)
Personnel: Cosmo Pyke (vocals, guitar), unknown (bass), unknown (drums)

Cosmo Pyke: Japan Tour 2018
April 20 - Fred Perry Shop Tokyo
April 21 - Wall & Wall, Tokyo
August 19 - Summer Sonic Tokyo
August 22 - Billboard Live Tokyo (2 shows)

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こういうオシャレなハコも良いが、次はクアトロあたりのスタンディング会場で会いたい

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