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都会の喧騒【1】〜New York by Iggy Pop



 前回、チョコレート・ジーニアスの「Don't Look Down」を和訳した。彼のアルバム『Black Music』(1998)から続けて何曲か取り上げるつもりでいたが、予定を変更して、ニューヨーク繋がりでイギー・ポップの同名曲「Don't Look Down」を和訳する。“都会の喧噪(Sound of Big Cities)”という連載企画を思いついたからである。今回はその第1回、ニューヨーク篇。

 「Don't Look Down」はイギー・ポップのアルバム『New Values』(1979)の収録曲。当時の彼はローリング・ストーンズ風の黒っぽいパンキッシュなロックンロール路線(要するに『Some Girls』っぽい音)を狙っていて、この曲はまさにその典型である。女性バック・ヴォーカルやボビー・キーズ風のサックスも入ったソウルフルなミディアム。ここで彼はニューヨークの街の喧騒について歌っている。

 イギー・ポップは米ミシガン州のアナーバーという街の出身で、彼の音楽はその近郊にあるデトロイトの自動車工場の騒音から大きな影響を受けている。人間の文明が生み出すけたたましい音を聞くのが彼は好きなのだ。文明の粋である都市という場所は、まさにそうしたノイズの宝庫である。人混みの雑踏、話し声、車の走行音やクラクション、様々な宣伝アナウンス、工事現場の音……。街のざわめきがいつでも彼を刺激する。そのやかましい音(crazy sound)を聞くと、彼は“うつむかない”。「Don't Look Down」は、映画『タップ』(1989)でグレゴリー・ハインズがニューヨークの街の騒音に合わせて生き生きとタップを踏む場面を私に思い出させる。優れたタッパーと同様、イギーは日常の何気ない物音の中に生命の鼓動(ビート)を感じ取る特殊能力の持ち主なのだろう。こういう歌を聴くと、彼は詩人だなと思う。

 シリーズ“都会の喧噪”は、音楽を通して様々な都市の息遣いを伝える不定期連載。毎回1曲、街のざわめきが感じられる歌を和訳しながら世界を巡ります。お楽しみに。




 Don't Look Down
 (Iggy Pop/James Williamson)
 
 Don't look down
 They're making sorta crazy sounds
 
 うつむくな
 やかましい音が聞こえてくる
 
 So why be bored? Who scared you?
 And why stay there it's no piece of cake
 When I hear that crazy sound
 I don't look down
 From Central Park to shanty town
 I always hear that crazy sound
 From New York to shanty town
 There's always something else
 
 どこが退屈? 誰に怯える?
 出てこいよ 半端じゃないぜ
 あのやかましい音を聞くと
 俺はうつむかない
 セントラルパークからスラムまで
 いつだってざわめいてる
 ニューヨークからスラムまで
 いつだって輝いてる
 
 I went this morning to the cemetery
 To see old Rudy Valentino buried
 Lipstick traces on his name
 He never looked down
 Because they were making crazy sounds
 From Central Park to shanty town
 He always heard that crazy sound
 There's always something else
 
 今朝 墓地へ行った
 懐かしのヴァレンティノに会いに
 口紅で名前がなぞってあった
 彼はうつむかなかったさ
 やかましい音がしてたから
 セントラルパークからスラムまで
 いつだってざわめいてた
 いつだって輝いてた
 
 When I see you standing there
 I can't see the clothes you wear
 I just hear that crazy sound
 And I can't look down
 From Central Park to shanty town
 I always hear that crazy sound
 From New York to shanty town
 There's always something else
 
 お前がそこに立ってても
 着てる服も分かりゃしない
 ただあのやかましい音がして
 俺はうつむいていられない
 セントラルパークからスラムまで
 いつだってざわめいてる
 ニューヨークからスラムまで
 いつだって輝いてる
 
 So why be bored? Who scared you?
 And why stay there it's no piece of cake
 When I hear that crazy sound
 I don't look down
 From Central Park to shanty town
 I always hear that crazy sound
 From New York to shanty town
 There's always something else
 
 どこが退屈? 誰に怯える?
 出てこいよ 半端じゃないぜ
 あのやかましい音を聞くと
 俺はうつむかない
 セントラルパークからスラムまで
 いつだってざわめいてる
 ニューヨークからスラムまで
 いつだって輝いてる


Rudy Valentino ルドルフ・ヴァレンティノ Rudolph Valentino(1895〜1926)。サイレント時代にハリウッドで活躍したイタリア出身の伝説の美男俳優。享年31歳。ニューヨークのマンハッタンで病死し、同所で行われた葬儀には10万人もの人々が詰めかけたという。この歌を聴くと墓もニューヨーク市内にあるのかと思うが、彼の墓は実際には、多くの著名映画人が眠るロサンゼルスのハリウッド・フォーエバー墓地の屋内安置所にある。


TO BE CONTINUED...



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