2020 051234567891011121314151617181920212223242526272829302020 07

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

Ayo──改めましてアヨです



 フランスを中心に昔からヨーロッパで高い人気を誇るナイジェリア系ドイツ人女性シンガー・ソングライター、アヨ。5作目にして自分の名前をタイトルにした新譜『Ayo』('17年10月6日発売)が素晴らしい。

 この人については、ジャネール・モネイ感溢れるジャクソン5の痛快カヴァー「I Want You Back」(2011)の最高すぎるMVを随分前に(二度も)紹介したことがあったが、これまできちんと書いたことがなかったので、この機会に言っておきたい。私はこの人が大好きだ!


AYO: ALBUM DISCOGRAPHY 2006-2017

Ayo2.jpgAyo3.jpg
Ayo4.jpgAyo5.jpg
Joyful (2006) music video
Gravity At Last (2008) music video
Billie-Eve (2011) music video
Ticket To The World (2013) music video

 アヨは'80年、ドイツのフレッヒェン生まれ。父親はナイジェリア人、母親はルーマニアのロマ人(ジプシー)。“Ayo”という芸名は、彼女の本名 Joy Olasunmibo Ogunmakin の“Joy”(喜び)をナイジェリアのヨルバ語で言い換えたものである。

 アルバム・デビューは'06年。ソウル、フォーク、ブルース、レゲエなどが自然に混じり合ったアヨの作風は、彼女の前年にデビューし、同じくナイジェリアとドイツにルーツを持つ同い年の女性ネオ・ソウル歌手、ネカによく似ている(ネカは父親がナイジェリア人、母親がドイツ人)。門外漢にとってネカとアヨの2人は、さだまさしと南こうせつ並みに区別がつかない可能性があるが、“ナイジェリアの女ボブ・マーリー”とも言うべき闘争的なネカに対して、アヨの音楽やキャラには、リンダ・ルイス〜ジョーン・アーマトレイディング的な人懐こさがあるのが特徴。また、ダブやヒップホップ色が強いネカの作品に較べると、アヨのサウンドはもっとフォーキーでアコースティックな風合いが強い。

 アヨの音楽性はデビュー時から現在まで一貫しているが、アルバム毎にそれなりの変化はある。1st『Joyful』(2006)は、ソウル、フォーク、ブルース、レゲエを折衷したアコースティック・サウンドで彼女の基本的な個性が確立された作品。2nd『Gravity At Last』(2008)は、そこにアフロビート色を加えてサウンドと曲想の幅を広げ、勢いと力強さを増した充実作。娘の名前をタイトルにした3rd『Billie-Eve』(2011)は、クレイグ・ロス(レニー・クラヴィッツ)やゲイル・アン・ドーシー(デヴィッド・ボウイ)をバンドに迎え、ロック色を前面に出した少しヘヴィーな異色作(ジャネール・モネイの影響か。J5のカヴァー「I Want You Back」はここにボーナス収録)。4th『Ticket To The World』(2013)は、1st〜2ndのアコースティックな雰囲気に戻りつつ、ヒップホップに接近(ラップに初挑戦)して新たな風を呼び込んだ快作(ボーナスでボビー・ヘブのカヴァー「Sunny」収録)

 私は2nd>4th≧1st>3rdの順に好きだが、基本的にアヨはいつでもアヨなので、どれかひとつ聴いて好きなら、どのアルバムも気に入るはずだ。


Ayo6.jpg
Ayo
Digital: Allpoints/Believe, 6 October 2017

Nothing / All I Want / Paname / Boom Boom / Why / If Love Is A Killer / Velvet Clouds / Cupcakes And Candies / Let It Rain / I Pray / I'm A Fool / Again / Forever And Beyond / Fearless

All songs written, produced and arranged by Joy Olasunmibo Ogunmakin a.k.a Ayo

 今年10月に発表された最新作『Ayo』CD発売あり)は、3rd『Billie-Eve』に続く彼女の自己プロデュース作。これまでのアヨの作品はバンドとの一発録りのライヴ録音が基本だったが、今作では多くの楽器を彼女が自分で演奏し、大半の曲がニューヨークの新たな住まい(10年暮らしたパリを離れ、彼女は現在ブルックリンで暮らす)の寝室で多重録音を駆使して一人でコツコツと録られている。どこを取ってもアヨ、アヨ、アヨ。“これまでの作品も私だったけど、今作には私のすべてが詰まってる。わざわざ自分のことや使命を説明する必要もなしに、初めて本当に自分自身として新たなスタートを切る感じ”(26 September 2017, TRUE Africa)とアヨはこのアルバムについて語っている。

 冒頭の「Nothing」から得意のフォーキーでブルージーなレゲエ調の曲が連発される。ラップも板についたR&B寄りの「All I Want」に続く3曲目「Paname」は特に魅力的だ。ボヘミアンの街、パリに対するアヨの個人的な想いをノスタルジックなアコーディオンの音色に乗せて歌ったこの曲(タイトルはパリの俗称)には、モンマルトルを舞台にした秀逸なヴィデオも制作された(肩にオウムを乗せて白馬に乗ったアヨが素敵すぎる!)。'14年に米ファーガソンで起きたマイケル・ブラウン射殺事件に触発されたメッセージ・ソング「Boom Boom」ではアフリカン・ディアスポラとしてネカばりの闘志を見せ、カリンバの素朴な音色に乗せて父親との不和を歌った「Why」や、先行シングルのスロー・バラード「I'm A Fool」ではアリシア・キーズにも似た内省的なソウル感を漂わせる。歌詞もスウィートなフォーク・ポップ「Cupcakes And Candies」、アヨらしいキュートさを持ったファンク・ロック「Let It Rain」、ドリーミーなピアノ(アリス・スミスの「Be Easy」をちょっと彷彿させる)に乗って涼やかに疾走するアフロ調の「I Pray」……。しっかり練られた楽曲や編曲、簡素ながらも配慮の行き届いた手作り感覚のサウンドはどれもこれも素晴らしい。終盤のレゲエ曲「Forever And Beyond」のラップ部分に“シャーデー・アデュ「Smooth Operator」みたくスムーズ(smooth like Smooth Operator, Sade Adu)”という一節が登場するのもたまらない(涙)。

 レゲエを軸にしたフォーキーな作風に変化はないが、『Ayo』は過去のどのアルバムよりもインティメイトで、尚かつ、音が丁寧に作り込まれている。余計なものやブレが一切なく、これまでのアヨの良いところをすべて凝縮したような作品だ。最高傑作と言っていいと思う。もちろん私はこれが今までで一番好きだ。本当に素晴らしいアルバムなので、是非とも多くの人に聴いて欲しい。

Ayo7.jpg
CD『Ayo』にはポラロイド写真風のカードがおまけで4枚封入されている

 今回記事を書くにあたってアヨの情報を検索していたところ、日本のアンスティチュ・フランセ(フランス政府公式のフランス語学校・フランス文化センター)主催の〈フェット・ド・ラ・ミュージック〜音楽の祭日〉というイベントで、ザーズ Zaz やイヤマ Irma に似たパリのストリート出身の女性シンガー・ソングライター、ジャス JaSz と揃って、'14年にアヨが初来日公演を行っていたことが分かった('14年6月21日@アンスティチュ・フランセ東京)。しかも、入場無料。そんな情報、私はちっとも知らなくて、3年以上経ってから地団駄を踏んでいる。どういう形でもいいので、『Ayo』を引っ提げて何とかもう一度日本に来て欲しい!




「Paname」について──

「個人的なパリについての歌。華やかなシャンゼリゼ界隈のパリではなくて。私にとってのパリは、地下鉄の改札を飛び越える人たちが暮らす街。パリは私にとってアフリカとジャマイカ文化に溢れた街なの」(26 September 2017, TRUE Africa)



関連記事:
We Want You Back(2012.08.29)
Kids Are Alright!──チビっ子音楽ヴィデオ特集(2013.05.05)

| Diva Legends | 23:45 | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT