2020 04123456789101112131415161718192021222324252627282930312020 06

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

PJ Harvey──恐怖の巨大ハマグリ



 いきなりPJ・ハーヴェイの話。
 
 先日アップしたリアン・ラ・ハヴァスの渋谷クラブクアトロ公演記事の中で、“私が初めてこの会場を訪れたのは'93年7月、PJ・ハーヴェイの初来日公演のときだった”と書いたが、後で確認したところ、彼女の公演が行われたのは渋谷クラブクアトロではなく、実際には渋谷ON AIRだった('93年7月19〜20日。『Rid Of Me』日本盤帯に記載のツアー日程参照)。24年前の記憶のいい加減さを痛感した。慎んでお詫びすると共に訂正させていただきます。

 お詫びついでに、当時のPJ・ハーヴェイのアルバム『Rid Of Me』(1993)から1曲、1stシングルでもあった「50ft Queenie」の歌詞を和訳する。ゴールデンタイムにはまず放送できない、とんでもなくふざけた歌だ。アルバムの日本盤には、レーベル側の意向によって歌詞/対訳が掲載されていなかった。この歌の内容を正しく把握していた音楽ファンは、当時の日本にどのくらいいただろう。




 50ft Queenie
 (PJ Harvey)
 
 Hey I'm one big queen
 No one can stop me
 Red light red green
 Sat back and watching
 I'm number one
 Second to no one
 No sweat, I'm clean
 Nothing can touch me
 
 あたしは無敵の女王
 誰にも止められない
 赤信号 赤青
 岡目八目
 あたし最強
 誰にも負けない
 神色自若
 恐いものなし
 
 Tell you my name
 F U and C K
 50ft queenie
 Force 10 hurricane
 Biggest woman
 I could have 10 sons
 10 gods, 10 queens
 10ft and rising
 
 あたしの名前は
 F・U・C・K
 50呎の大女王
 最大級のハリケーン
 弩級のオンナ
 産んだる 息子10人
 神10人 女王10人
 10呎の巨大児
 
 Hey I'm the king of the world
 You oughta hear my song
 You come on, measure me
 I'm 20 inches long
 
 オレは世界の王さまだ
 オレの歌を聞きやがれ
 さあ測ってみろよ
 オレのは20吋だ
 
 Glory, glory
 Lay it all on me
 50ft queenie
 50 and rising
 You bend over
 Casanova
 No sweat, I'm clean
 Nothing can touch me
 
 栄光 栄光
 あたしに輝け
 50呎の大女王
 ますます巨大化
 頭が高いぞ
 カサノバよ
 神色自若
 恐いものなし
 
 Hey I'm the king of the world
 You oughta hear my song
 You come on, measure me
 I'm 20 inches long
 
 オレは世界の王さまだ
 オレの歌を聞きやがれ
 さあ測ってみろよ
 オレのは20吋だ
 
 Hey I'm the king of the world
 You oughta hear my song
 You come on, measure me
 I'm 30 inches long
 
 オレは世界の王さまだ
 オレの歌を聞きやがれ
 さあ測ってみろよ
 オレのは30吋だ
 
 Hey I'm the king of the world
 You oughta hear my song
 You come on, measure me
 I'm 40 inches long
 
 オレは世界の王さまだ
 オレの歌を聞きやがれ
 さあ測ってみろよ
 オレのは40吋だ
 
 Hey I'm the king of the world
 You oughta hear my song
 You come on, measure me
 I'm 50 inches long
 
 オレは世界の王さまだ
 オレの歌を聞きやがれ
 さあ測ってみろよ
 オレのは50吋だ
 
 50ft queenie
 50ft queenie
 50ft queenie
 50ft queenie
 50ft queenie
 50ft queenie
 50ft queenie
 
 50呎の大女王
 50呎の大女王
 50呎の大女王
 50呎の大女王
 50呎の大女王
 50呎の大女王
 50呎の大女王


※公式歌詞未発表のため、歌詞はネット上の聞き取りを参照しました。部分的に誤りがある可能性があります。


50ft_Queenie2.jpg
『Rid Of Me』ツアー時のPJ・ハーヴェイ。来日公演もこんな感じだった(気がする……)

 「50ft Queenie」ヴィデオのPJは、まるで娼婦のような恰好をしている。当時の彼女は性をテーマにした過激な歌をよく歌っていたが、この曲もそのひとつである。

 “Hey I'm the king of the world”で始まるヴァースの主語は、(歌詞内で“queen”と“king”が明確に対比されている点からしても)“あたし”ではなく“オレ”と解釈するのが自然だ。ここで“オレ”は自分の尺を自慢している。身長の話ではない。身長であれば“〜inches long”ではなく“〜inches tall”と言うだろうし、そもそも20〜50インチ(50.8cm〜127cm)という尺は身長にしては短すぎる。男が自慢する尺とは何だろう。そう、“オレ”は自分の一物のサイズを自慢しているのだ。

 そういう男たちに対して“あたし”は“50ft queenie”だと主張する。50フィート(15.24m)の“queenie”とは何だろう。“オカマ”という意味ではない。“オレ”が一物の大きさを自慢するなら、“あたし”が誇るのも同じく性器の大きさではないのか。“queenie”は、この歌の文脈では女性器のメタファーになり得る。50フィートのハマグリ(笑)。『ウルトラQ』に出てきそうだ(いや、出てこない)。尤も、10フィートの子供を産むと言っているので、“50フィート”は単純に身長と捉えるのが妥当だと思うが、私は50フィートのお化けハマグリのイメージが頭から離れず、この歌を聴くたびに奇妙な戦慄を覚える。

 もちろん、ここでPJは本気でアソコのサイズ自慢をしているわけではない。これは、チンポコの大きさこそ男の尊厳だと思っている男たちや、男根主義のロックンローラーたちをネタにした一種のノベルティ・ソングである。“オレ”の尺自慢があり得ない長さにまで発展したり、そのバカげた自慢合戦に敢えて同じように尺で対抗しているところが可笑しい。50フィートの巨大女(あるいは巨大ハマグリ)の前では、50インチのサオなど爪楊枝にも満たない。これにはどんな男も萎えるだろう。これはゲラゲラ笑いながら聴く歌だ。

50ft_Queenie3.jpg
映画『妖怪巨大女』のポスター(意外とヒットしたらしい)

 どうでもいい話だが、ダリル・ハンナ主演で'93年にリメイク版も作られた『妖怪巨大女』(1958)というアメリカのZ級ポンコツSF映画が存在する。原題は“50呎女の襲来(Attack of the 50 Ft. Woman)”。「50ft Queenie」は、要するにこれをロックンロール化したものである。PJ・ハーヴェイは、男性中心のロックンロール界に娼婦の皮を被って襲来した恐怖の“妖怪巨大女”だった。私はどうしてこんなものを夢中で聴いていたのだろう……。


TO BE CONTINUED...


PJ・ハーヴェイが好きな人はこんな記事も読んでいます:
Chinawoman──私はパーティーガール(2014.05.03)
Michelle Gurevich──ロシアの恋の物語(2016.11.24)
Michelle Gurevich──ロシアのバレリーナ(2016.11.26)

| Diva Legends | 02:30 | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT