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Lianne La Havas──心のしこり




 リアン・ラ・ハヴァスのデビュー曲「No Room For Doubt」(2011)は、いつ聴いても素晴らしい曲だ。4年前の初来日公演でも、今年9月の来日公演でも、もちろん彼女はこの曲を歌ってくれた。

 ウィリー・メイソンと共作/デュエットされたメランコリックな傷心バラード。歌詞は、恋人同士である男女2人の諍いを描いている。2人の間には喧嘩によって生じた大きな亀裂があるが、時間を経て、互いに関係修復の糸口を探そうとしている。ここで言う“doubt”──両者を隔てている疑念、不信感──は、日本語で分かりやすく言えば“わだかまり”のことである。人はいつでも天使ではいられない。後から冷静に自分や相手の言動を省みて、わだかまりや誤解を取り除きたいと願うこの歌の気持ちは、ニーナ・シモンやミシェル・ンデゲオチェロが歌った「Don't Let Me Be Misunderstood」に近いものがある。

 スタジオ録音版では、内省に向かう1番をリアン、心を開いて相手に歩み寄ろうとする2番をウィリー・メイソンが歌った。両者の孤独な歌声はワルツのリズムに乗って漂泊し、やがて静かに交錯していく。




 No Room For Doubt
 (Lianne La Havas/Willy Mason/Matt Hales)
 
 You caught me, guilty
 Taking the pieces of you
 That night, you took flight
 I couldn't decide what to do
 I won't let a safe bet
 Continue to make me go blue
 I could go solo
 Would that be the right thing to do?
 
 私のことを責めた
 貴方のことを想ってる
 あの晩 出ていかれて
 途方に暮れてしまった
 このままずっと
 落ち込んでるつもりはない
 別れることもできる
 だけどそれでいいのだろうか?
 
 We all make mistakes, we do
 I learned from you
 We all make mistakes, we do
 I learned from you
 
 人は過ちを犯す 誰でも
 貴方から学んだ
 人は過ちを犯す 誰でも
 貴方から学んだ
 
 I tip-toe too slow
 Out of the door to your house
 I know you know
 That this way leads me out
 Outside, too bright
 You're within, I'm without
 
 おずおず のろのろ
 戸から踏み出し 君の家へ
 僕も君も知っている
 ここから道が開けると
 外の光は眩しい
 君は内 僕は外
 
 We all make mistakes, we do
 I learned from you
 We all make mistakes, we do
 I learned from you
 
 人は過ちを犯す 誰でも
 君から学んだ
 人は過ちを犯す 誰でも
 君から学んだ
 
 Please sleep softly
 Leave me no room for doubt
 Please sleep softly
 Leave me no room for doubt
 
 そっとお眠り
 心のしこりを取りさって
 そっとお眠り
 心のしこりを取りさって



No Room For Doubt (2011)
A Take Away Show, dir. Colin Solal Cardo

 ウィリー・メイソン共演の公式MV(監督:Rohan Blair-Mangat)は、歌の情感や主人公男女の心の距離感を丁寧に捉えた秀作だが、以前にも書いた通り、'11年9月にパリで撮影された〈A Take Away Show〉の街頭ライヴ映像「No Room For Doubt」は、それを凌ぐ永遠の名作である。ここ10年、私はこれ以上の音楽ヴィデオに出会ったことがない。

 ギターで弾き語りをしながら、午後の賑やかなモンマルトルを一人さすらうリアン。彼女を延々と長回しで撮り続けるヌーヴェルヴァーグ流儀の手持ちカメラ映像に、水晶玉を操るジャグラーの背中や、リアンの演奏に合わせてカスタネットを鳴らす大道芸人の姿が予期せず映り込む。彼らはその日、その場所にたまたま居合わせただけである。リアンの歌と街の空気の共振関係は、まさに“シンクロニシティ(共時性)”とでも呼ぶしかない驚きと感動に満ちている。

「ライヴ形式でレコーディングをしたいと思っているの。これまで精力的にライヴ・パフォーマンスをしてきたし、その一瞬だけの、偶然が重なって起きる共時性みたいなものを記録してみたくて」(30 September 2017, Spur

 3rdアルバムについてそう抱負を語るリアンは、このライヴ映像のような作品を目指しているのではないだろうか。同時に“原点回帰したい”とも言う彼女。次回作のレコーディングは、リアン版〈Get Back〉セッションになるのかもしれない。



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