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Angelo Moore & The Brand New Step @ Basement Bar 2018 (part 1)



 アンジェロ・ムーア&ザ・ブランド・ニュー・ステップのコンサートを観た。
 
 今から31年前の'87年春、洋楽番組〈ベストヒットUSA〉にゲスト出演してテレビ朝日のスタジオを乗っ取り、ヒットチャート10位だったプリンス「Sign "O" The Times」を1位にした伝説のミクスチャー・ロック・バンド、フィッシュボーンのフロントマンであるアンジェロ・ムーア。彼が新バンドのザ・ブランド・ニュー・ステップを率いて、一夜限りの超プレミアムな来日公演を行った。

 '18年4月17日(火)、場所は下北沢のライヴハウス、Basement Bar。キャパ250人の場末のハコでたった1日公演するためだけに、彼はフルバンドを連れてわざわざ日本にやって来た。ローリン・ヒルやエリカ・バドゥがビルボードライブで4万円超えの公演をやるこのご時世に、料金は破格の4千円。アホちゃうか? と心の底から思いつつ、私は人生で初ゲットした整理番号1番のチケットを手に下北沢へ向かった。


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場内に貼られていた当日のタイムテーブル。アンジェロ・ムーアの出演予定枠は、実際には22:25-23:15だった(途中でスタッフが黒マジックで訂正していた。そこ、間違えるか……)

 今回のアンジェロ・ムーア来日公演は、ジャポニカス Japonicus 主催の定例イベント〈Radical Music Network〉の一環として行われた。ジャポニカスは、レゲエ、スカ、パンク、ロック・ラティーノなど、様々なレベル・ミュージックのバンドを集めたイベントを国内外で開催している音楽プロダクション/プロモーターで、〈Radical Music Network〉はその看板イベントのひとつであるらしい。アンジェロたちは3日前の4月14日に台北で行われた〈Urban Nomad Opening Freakout〉という音楽フェスにジャポニカスと共に参加し、その足で東京へやって来た。

 ヘッドライナーのアンジェロ・ムーア&ザ・ブランド・ニュー・ステップの他に、この日は多くの日本人バンド/DJが出演した。18:30開場/開演のイベントだったが、アンジェロだけが目当ての私は20時過ぎ頃に会場に到着。正方形の部屋を対角線でステージとフロアに区切ったようなBasement Barの狭い場内は、その時点でまだ30人くらいしか観客がおらず、フロアはかなり閑散としていた(人生で初めて回ってきた整理番号1番は、はっきり言って何の意味もなかった)

 場内には灰皿があった。隔離された喫煙所ではなく、フロア内で普通に煙草が吸えるのだ。なんて時代錯誤な空間だろう、と驚きながら早速煙草に火をつけ、壁に貼られたタイムテーブルを眺めると、アンジェロの登場予定時刻が“22:25”とある。2時間以上も待つのかい……。最初は気が遠くなったが、実際にはその時間はあっという間に過ぎ去った。

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マストロジョバンニ・スカジャズ・アンサンブルの軽快なパフォーマンス

 イベントは、バンド(25〜30分)とDJ(15分)が交互に出演する形で進行した。もぐりの私にとっては、どの出演者も初めて名前を聞く人たちばかりだった。

 20時過ぎに入場した私が最初に観たバンドは、マストロジョバンニ・スカジャズ・アンサンブル Mastrogiovanni Ska Jazz Ensemble。ベース、ドラム、キーボード、トロンボーン、トランペット、アルト・サックスの6人組インスト・バンドで、その名の通り、スカジャズを演奏する。

 ベーシスト兼リーダーのレイ・マストロジョバンニは、バンド活動の他に、DJ、プロデューサー、ファッション・モデル、テレビ番組のMCやナレーション、海外アーティストの通訳などもこなす多才な人らしいウィキペディア参照)。父親がイタリア系アメリカ人、母親が関西系日本人という長身のイケメンだが、ステージでのコテコテな関西弁MCを聞く限り、そこらへんの気のいい兄ちゃんという感じである。フィッシュボーンの大ファンである彼は、あまりにフィッシュボーンが好き過ぎて、かつて彼らを生で観るためだけにアメリカへ行き、そこで遭遇したアンジェロから“俺たちを観るためだけに日本から来た? おまえ、アホちゃうか?”と呆れられたそうだ。成り行きでアンジェロから通訳を任され、アンジェロの来日時には彼を自分の部屋に泊めて一週間ほど世話したこともあるという(アンジェロは生卵が大好物だそうだ)

 ホレス・シルヴァー「Song For My Father」のスカ・カヴァーで始まり、シンコペーションの利いた活きの良い演奏を聴かせてくれたが、バンドの演奏よりも、アンジェロ・トリビア満載のマストロジョバンニのMCの方が強く印象に残るステージだった。

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ランキン・タクシーのオフビートなパフォーマンス

 15分のDJタイムを挟んで次に登場したのは、ランキン・タクシー Rankin Taxi と名乗るソロ・レゲエ歌手。ジージャン&ジーンズ姿で頭に王冠を被り、CDJでダンスホール調のレゲエ・トラックを流しながら一人で歌う芸人風情の変なオッサンだった。マリファナを礼賛する「マリファナ音頭」、東京五輪開催に異議を唱える「2020やめとこ音頭」など、反体制的なメッセージを盛り込んだオリジナルの日本語レゲエ歌謡を、独特のヘタウマな──と言うか、はっきりとヘタな──歌唱で和やかに聴かせる。予定曲の音源が見つからなかったり、途中でCDJの音が出なくなる等のハプニング連発(ハプニングと言うより、単に操作方法が分かっていない様子だった)でかなりグダグダな内容だったが、ユルさとアナーキズムが同居した彼の歌&トークは非常に個性的で、一度聴いたら忘れられないインパクトがある。一部の観客から熱烈に支持されていたが、日本語を解さない外国人客の中には渋い表情を浮かべて立ち去る人もいた。

 このしょうもないオッサンは一体……と思いながら検索してみると、彼は'80年代前半から活動する日本レゲエ界のパイオニア的な人物だということが分かった。こだま和文などと並ぶ大レジェンドなのだが、彼のパフォーマンスはそんな偉人オーラを少しも感じさせない軽さと無鉄砲さに溢れていた(しかも、65歳って……)。日本には色んな人がいるんだなあ、と唸りながら、私はタクシー氏のオフビートなパフォーマンスを楽しんだ。

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レゲレーション・インディペンダンスの殺人的なパフォーマンス

 再びDJタイムを挟み、アンジェロ・ムーア&ザ・ブランド・ニュー・ステップの前に登場した最後のバンドは、レゲレーション・インディペンダンス Reggaelation IndependAnce。トロンボーン、トランペット、テナー・サックス、ベース、ドラム、ギター、キーボード、パーカッションという8人編成のアフロ・ジャズ・ファンク・ダブ・バンドなのだが……これがとんでもなかった。

 DJがかけるマッドネス「In The City」をBGMに何喰わぬ顔でメンバーたちがステージに現れ、何の挨拶もなく演奏開始。地を這うような重量級の3連ビート、ナイフのように鋭いテーマ・メロディ、スタイリッシュな3管のソロ演奏、アフロ感たっぷりの大胆なリズム・アレンジ、そして、眩惑的なダブの音響……。彼らは冒頭のハードボイルドな長尺ジャズ・ファンク・ナンバーひとつで私をあっさりと殺した。メンバーの平均年齢はかなり高めで、写真だとただのオッサンにしか見えないかもしれないが、実際にステージで演奏している姿は全員死ぬほどカッコいい。それまで“前座の日本人”という色眼鏡で出演者たちを眺めていた私は、ここでいきなり強烈なボディブロウを喰らわされ、真剣にビビった。このバンド、一体何なんだ?!

 後で調べてみると、レゲレーション・インディペンダンスは、カルチヴェイター Cultivator という日本のダブ・バンドにいた齋藤徹史(トロンボーン)を中心に'08年に結成され、“東京発ジャマイカ経由全世界行き”という謳い文句で'13年にCDデビュー。これまでにアルバム2枚とミニ・アルバム1枚(レゲエ映画の金字塔『ロッカーズ』に出演していた歌手、キダス・アイとの共演作)を発表し、フジロックにも出演したことがある、かなり名の知れたバンドだということが分かった。バンド名は“Reggae(レゲエ)”と“Revelation(啓示)”、“Independence(独立)”と“Dance(ダンス)”の合成語だという。ミュート・ビートやスカパラくらいしか知らなかった私は、レゲレーション・インディペンダンスの生演奏を聴いて、日本にこんなカッコいいバンドがいたのか、と大変なショックを受けた(私を瞬殺した冒頭曲は、恐らくキダス・アイとの共演曲「Wake Up」だったと思う)

 披露された曲はどれもこれも素晴らしかった。変拍子を使った曲が結構あり、若干の踊りにくさはあるが、ベースを軸にしたレゲエ仕込みの重心の低いリズムは問答無用で聴き手の下半身を揺さぶる。私はずっと揺れっぱなし&感動しっぱなしだった。結局、彼らは予定時間の30分を超過して40分演奏したが、私は1時間でも2時間でも聴きたかった。全然、足りない。是非とも彼らの単独ライヴに行きたいと思った。

 帰宅後、アマゾンで彼らのCDをまとめて購入。公式サイトのライヴ・スケジュールを見ると、早速6日後の4月23日(月)に渋谷のThe Roomで公演予定があった。入場無料の投げ銭制、しかも、信じられないことにニューヨークの黒人タップ・ダンサー、タマンゴ Tamangoh と共演するという。ウガー!!! 行くしかない!(……で、実際に行ったのだが、これがもう最高だった。その話はまた改めて)


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下北沢 Basement Barの見取り図。キャパ250人。とにかく狭い

 大興奮のレゲレーション・インディペンダンスの後、15分のDJタイムを挟み、10分押しでいよいよヘッドライナーのアンジェロ・ムーア&ザ・ブランド・ニュー・ステップの登場!

 ……なのだが、実を言うと、アンジェロはその前からメンバーたちと一緒にステージで黙々と機材の準備をしていたし、他の日本人バンドやDJの出番の間も普通に観客フロアをうろうろしていた。楽屋がひとつしかないので居場所がないのだろう。DJタイムのとき、何気なく横を向いたら30cmくらいの距離にいきなりアンジェロがいて、私は結構ビックリした(二度見した末、特に掛ける言葉も思いつかず、そのまま気付かないふりをしてしまった)。周囲の観客から握手やサイン攻めに遭うこともなく、彼は本番と同じ派手目な恰好をして、一人で普通に場内をぶらぶらしていた。はっきり言って、インディーやアマチュア・バンドの合同ライヴとちっとも変わらない。

 さて、アンジェロは一体どんなパフォーマンスを見せてくれるのか?!


TO BE CONTINUED...



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