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マイケルの最強ショート・フィルム10選【第6位】

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 マイケル・ジャクソン追悼特別企画、独断と偏見で選ぶ“マイケルの最強ショート・フィルム10選(Top 10 Badass MJ Short Films)”。世間一般の評価とはあまり関係なく、単純にマイケルがヤバかっこいいヴィデオを10本選んで語ることで彼を偲ぶ連載エントリー。バッドでデンジャラスでインヴィンシブルな天才パフォーマー、マイケル・ジャクソンの魅力をより多くの人々に知ってもらえれば幸いだ。

 第6位は、7位とほぼ同点でこの作品!


#6
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ROCK WITH YOU (1979)
Directed: Bruce Gowers

 『OFF THE WALL』からの第二弾シングル('79年11月3日発売)。白黒混成ディスコ・ファンク・バンド、ヒートウェイヴのロッド・テンパートンが書いたミディアム・テンポの軽やかなディスコ・ソウル。テンパートンは他に「Off The Wall」「Burn This Disco Down」「Thriller」「Baby Be Mine」「The Lady In My Life」といった楽曲をマイケルに提供し、同じく多くの重要曲を書いたマイケル自身と共に、ソングライターとして『OFF THE WALL』『THRILLER』の中核を担った人物である。メロディアスかつグルーヴィーなテンパートンの楽曲はマイケルにピッタリで、中でも爽やかで程良くパンチの利いた「Rock With You」は、彼のマイケル作品の最高傑作と言っても過言ではない大名曲だ。

 マイケルはジャクソンズ初期のギャンブル&ハフ時代から「Show You The Way To Go」のような同傾向の楽曲で成功を収めていたが、テンパートンの書くフックは更に強烈である。マイケルは徐々にメロディアスな作品も書けるようになるが、初期の自作曲は「Don't Stop 'Til You Get Enough」「Workin' Day And Night」「Wanna Be Startin' Somethin'」といったファンク系の曲が中心。そうした時期にメロディ面での補強を行い、歌手マイケルの魅力を絶妙に引き出していたのがテンパートンの作品だった(ほぼマイケルの自作曲で占められた『BAD』の淡泊さを考える時、テンパートンの不在はいかにも痛い)。「Rock With You」のメロウで甘酸っぱい青春ソウル路線は、後年の「Remember The Time」「You Rock My World」といった作品にも引き継がれている。成人マイケルの方向性を決定付けた、まさに記念碑的な作品である。


 ヴィデオの監督はブルース・ゴワーズ。イギリスのテレビ業界出身の人物で、ヴィデオ監督としては、クイーン「Bohemian Rhapsody」(1975)をはじめ、ビー・ジーズ「Stayin' Alive」(1977)、ロッド・スチュワート「Do Ya Think I'm Sexy?」(1978)、プリンス「1999」(1982)など、'70年代後半~'80年代前半にかなりの数の即席低予算作品を手掛けている。本職であるテレビ番組ディレクターとしては、MTVアウォードなどの授賞式ものや、ソフト化もされているフリートウッド・マック『The Dance』(1997)、ローリング・ストーンズ『Bridges To Babylon Tour '97-98』(1998)といったライヴ映像作品でも監督としてクレジットに名前が確認できる。最近の有名な仕事では、アメリカの人気オーディション番組〈American Idol〉(2002~)がある他、マイケルの芸能生活30周年を記念した特別番組〈30th Anniversary Celebration〉(2001)も、実は彼のディレクションだったりするから驚きだ。

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 さて、肝心の「Rock With You」ヴィデオの内容だが、わざわざ6位に入れておきながら、実は全く書くことがない(笑)。画像を見てもらっても分かる通り、レーザー光線をバックに、キラキラ衣裳のマイケルがただ歌っているだけの映像なのだ。「Don't Stop 'Til You Get Enough」も相当シンプルだったが、こちらは更に手間が掛かっていない。本当にテレビの歌番組レベルの映像である。

 しかし、繰り返すが、この時期のマイケルは本当に最高である。この顔、身体、動きを見て欲しい。目の眩むようなこの輝きはどうだ。実際、衣裳もキラキラしているが('79年後期〈DESTINY〉ツアーの衣装)、マイケルの存在自体が放つ輝き、特に表情の輝きが素晴らしい。これが自分と同じ人間なのかと思う。この世には神から選ばれた人間が存在するのだという事実を、まざまざと見せつけられるような映像である。

 ここには、まだ“キング・オブ・ポップ”という十字架を背負う前の、天然のマイケルがいる。音楽の祝福を全身に浴び、ひたすら元気に溌剌と歌い踊る彼の姿を見ていると、私は本当に幸せな気持ちになる。ああ、世界にはこんな素敵な人がいるんだな、と思う。私はこのマイケルの姿を永遠に愛する。

 いくら金を掛けても、どんな巨匠が監督しても、この輝きを再現することだけはできない。万感の思いを込めて、私はこの作品をマイケルの最強ショート・フィルムの第6位に選ぶ(当初の予定では3位だったが、常識的なバランスを考慮した結果、この位置になってしまった)。確かに「Thriller」は面白いし、「Smooth Criminal」もカッコいいかもしれない。しかし、頼むからこのマイケルを見てくれ、と私は声を大にして言いたいのだ。


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SHE'S OUT OF MY LIFE (1980)
Directed: Bruce Gowers

 『OFF THE WALL』期には、「Don't Stop 'Til You Get Enough」「Rock With You」の他にもう1本、アルバムからの第四弾シングルである「She's Out Of My Life」('80年4月発売)にもヴィデオが制作されている。監督がブルース・ゴワーズであることと、マイケルの髪の長さから見て、「Rock With You」と同じ時に撮影されていたのではないかと思われる。
 歌入れの際、何テイク録ってもマイケルが必ず最後で感極まって泣き出してしまったという逸話も残す失恋バラード。コンサートでも取り上げられ、歌の終盤で泣き崩れるパフォーマンスは、JBのマント・ショウ同様、マイケルのステージの大きな見せ場のひとつになった。
 ヴィデオは「Rock With You」よりも更にシンプル。暗闇の中、私服同然のセーター&ジーンズ姿でひとり淋しく歌うマイケルが淡々と映し出される。深い情感を湛えたマイケルの表情が素晴らしい。つくづくいい顔をしている。ズーム・インとアウトで初めと終わりを揃え、マイケルの孤独感を強調する演出も、単純ではあるが効果的。マイケルのショート・フィルム史上、間違いなく最も低予算な作品だが、彼のイノセンスがストレートに伝わってくる、なかなかに味わい深い佳作である。


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CAN YOU FEEL IT (1981)
Directed: Bruce Gowers and Robert Abel

 ブルース・ゴワーズは更にもう1本、ジャクソンズ『TRIUMPH』(1980)からのシングル「Can You Feel It」のヴィデオも監督している。CF制作や映画『トロン』(1982)の視覚効果で知られるロバート・エイブルのプロダクションが全面的に関わり、映像的に非常に凝った作品になっている。この映像は当時のジャクソンズのツアーにも使われた。
 曲はスティーヴィー「Up Tight」風のロッキン・ソウルに、人類の共生を謳うメッセージ色の強い歌詞が乗ったもの。ヴィデオの冒頭にナレーションが入る──“はじめ、世界は純粋だった。早朝の光の中にあっても、自然はその美しい姿を覗かせている。じきに様々な人種の男たち、女たちもこの地に現れる。肌の色を越えて互いの美しさを認め合うことも、時にはごく自然なことだった。しかし人類は、より良い世界を共に実現する勝利(triumph)の夢を失うことは決してなかったのである”。様々な天地創造のイメージと共に、神の使者であるジャクソンズの5人が人々に恵みを与える様子が幻想的に描かれる。ジャクソンズ版「創世記」というか、宇宙のファンタジーというか、同時期のアース・ウィンド&ファイアを思わせる、何とも仰々しい神秘性を湛えたヴィデオである。あるいは、もしかするとマイケルは『ザナドゥ(Xanadu)』(1980/ジーン・ケリーの実質的遺作となったミュージカル・ファンタジー映画。振付ケニー・オルテガ)に感化されたのかもしれない。あの映画で描かれる9人のミューズの男性版を発想した結果、こういう作品ができたのではないだろうか。
 この映像は、マイケルの後年の作品──『キャプテンEO』『ムーンウォーカー』のファンタジー趣味、「Black Or White」「Earth Song」ヴィデオなどで見られるスケールのでかいヒューマニズム、自然保護のヴィジョン──にも確実に通じている(もちろん「We Are The World」「Heal The World」の世界観にも)。兄弟を巻き込んで野心ばかり先走りしている感は否めないが、マイケル史的に重要作であることに違いはない。



マイケルの最強ショート・フィルム10選【第1~10位】
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