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★★★★★★★【2】〜「神」のもとで



 前回記事“こんな歌は嫌だ”の続き。




 Under The God
 (David Bowie)
 
 skin dance back-a-the condo
 skin heads getting to school
 beating on blacks with a baseball bat
 racism back in rule
 
 コンドミニアムじゃスキンダンス
 学校にはスキンヘッドどもが登校
 野球バットで黒人に襲いかかり
 人種差別がまた蔓延る
 
 white trash picking up nazi flags
 while you was gone, there was war
 this is the west, get used to it
 they put a swastika over the door
 
 ナチの旗を振りかざす下層白人
 お前らがいない間に戦争があったんだよ
 ここは西側 慣れなきゃな
 玄関を入れば鉤十字がある
 
 under the god
 under the god
 one step over the red line
 under the god
 under the god
 ten steps into the crazy
 
 「神」のもとで
 「神」のもとで
 危険な線を一歩越え
 「神」のもとで
 「神」のもとで
 狂気の沙汰に十歩踏み込む
 
 washington heads in the toilet bowl
 don't see supremacist hate
 right wing dicks in their boiler suits
 picking out who to annihilate
 
 便器頭のワシントンの高官どもにゃ
 至上主義の憎悪が分からない
 右翼連中は作業服を着込み
 根絶やしにする相手を見繕ってる
 
 toxic jungle of uzi trails
 tribesmen just wouldn't live here
 fascist flare is fashion cool
 well, you're dead - you just ain't buried (yet)
 
 ウージーだらけの有害ジャングル
 部族民もこんな場所は真っ平だ
 怒れるファシストがイカした流行
 お前は屍──埋められてないだけ(まだ)
 
 as the walls came tumbling down
 so, the secrets that we shared
 i believed you by the palace gates,
 now the savage days are here
 
 壁が崩壊するにつれ
 我々が分かち合った秘密も崩れ去る
 宮門の端で俺はお前を信じたのに
 今 野蛮な時代がここに
 
 under the gods
 crazy eyed man with a shot gun
 hot headed creep with a knife
 love and peace and harmony
 love you could cut with a life
 
 「神」々のもとで
 散弾銃を構えた狂った目つきの男が
 ナイフを持ったキレやすい変質者が
 愛に平和に調和
 愛とさえ刺し違えるのか


the god 「神」:通常、“God(神)”に定冠詞の“the”は付かない。“God”と言えば天地を創った例のGodさんに決まっているので、不特定多数の中から定冠詞で限定する必要がないのだ。“God”は人名と一緒なので、普通、“神のもとで”と書く場合は、冠詞なしで頭を大文字にして“under God”となる。この歌で“god”(アルバム・ブックレットでは歌詞がすべて小文字表記されている)に“the”が付いているのは、それが唯一無二の絶対的な“God”ではなく、ある種の人々が信じるところの、ある特性や属性を持った、特殊な“god”であることを意味している。人々がそれぞれに持つ異なる信仰、主義、思想を示すメタファーと捉えても良いだろう。この点を明確にするため、拙訳ではカギ括弧で“神”を括った。


 「Under The God」は、'89年にデビューしたティン・マシーンというイギリスのオルタナティヴ・ロック・バンドの曲。ジュリアン・テンプルが監督したヴィデオの代わりに、ここでは同年にNHKが制作/放映した彼らのアムステルダム公演のライヴ映像を埋め込んだ(YouTubeには42分の番組フル映像もあり。ステージ左隅にいるサポート・ギタリストは、その後、キザイア・ジョーンズのデビュー作を制作するケヴィン・アームストロング)

 「Under The God」ライヴ映像の冒頭に入る日本語解説テロップ──「この曲は、暴力と腐敗からぬけきれない現代社会をなげき、“神のみもとに”と訴える。“神のみもとで危ない線を一歩越え、狂気のさたに十歩踏みこめ!”」──には注意が必要だ。このテロップ原稿を書いた人は、「Under The God」をドアーズ「Break On Through (To The Other Side)」のような歌だと思ったのかもしれないが、逆である。この歌の作者は、「神」のもとで一線を越えて“向こう側”へ突き抜けてしまう人々(ネオナチ、白人至上主義者など)を見て憂えている。解説テロップを鵜呑みにして変な行動を起こさないようにしたい。尚、この曲が発表されたのは、ベルリンの壁が崩壊する半年前、'89年5月のことだった。


Under_the_god2.jpg
Tin Machine - Under The God (1989)

「僕がやろうとしたのは、バンドの音楽性に見合うだけの曲を書くことだ。〈Under The God〉がいい例で、バンドの音と同様に、シンプルで素朴でラジカルな表現でネオ・ナチズムの台頭を歌いたかった。何のことを歌っているか、みんなに誤解されないようにね。反ナチズムの歌なんか、他には誰もやってない。僕は知らないね! 人種差別を歌ったものはいっぱいあるけど、どれもどことなくグリニッジ・ヴィレッジ風だ。ナチズム反対を唱えている人はひとりもいない。[ナチズムの復活は本当にあると思うか?]──もちろんさ。それもどでかいやつだ。オレンジ・カウンティ・ナチスなんてのが出てきたし、ついこの間はルイジアナの元KKK団員のデヴィッド・デュークというのが上院議員になった(註:正しくは州議会下院議員)。それなのに誰も何も言わず、奴はオフィスでふんぞり返ってる。白人至上主義者が登院してる国会のテレビ中継なんかやってたら、チャンネルを変えたくもなるよ。ところがそれを問題にする人間がいないんだ! アメリカではそういう現象が大規模に起きているし、規模は小さいがヨーロッパでも起きている。先頃のドイツの総選挙では、国民社会党が議席を7つ増やし、ドイツの第3党になったし、ヨーロッパ中、至るところの壁に鉤十字のマークが書いてある。驚くべきことに、建物の壁が全部鉤十字で埋まっているのさ。[原因は何?]──無知だよ。いつだって無知が原因だ。無知と不安と、小集団となって閉鎖的に暮らそうという白人のゲットーイズム信奉。ナチズムの哲学とは、“トラブルは外部からやってくる、だから我々は結束して一体となろう、そうすれば外部の影響を受けずにすむ”というものだ。それは世界を縮小した小世界で、主に無知と妄想から成り立っている。原因はそれさ。それに今はとんでもない混沌の時代だ。信じがたいよ。まったくひどいもんだ」

──デヴィッド・ボウイ(『クロスビート』'89年10月号/原典:Melody Maker)


TO BE CONTINUED...

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