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Prince──反復の美学



 突然だが、プリンスの「Joy In Repetition」(1990)を和訳する。『Graffiti Bridge』の中でも特に印象深いこの曲は、もともと'86年7月に録音され、'90年に新曲として発表されたもの。映画『グラフィティ・ブリッジ』の劇中では、主人公キッドが見る夢の中に登場し、歌詞の世界がそっくりそのまま映像化された。

 歌詞はハードボイルド小説を思わせる三人称体の物語仕立て。夜のクラブを舞台に、主人公の“彼”と宿命の女──ステージで同じ言葉を延々と唱えている──の出会いが描かれる。“彼”はその女に吸い寄せられていく。ここで語られるのは愛と性の渇望であり、その狂おしい官能であり、そして“繰り返し”である。“Joy in repetition(繰り返しの中の歓喜)”という表題フレーズは、プリンスが生涯をかけて追求した音楽をずばり表しているように思える。この曲でプリンスは“女”という形象を用いて、“ファンク”そのものについて語っているのではないだろうか?


Joy In Repetition
(Prince)

He like 2 frequent this club down up on 36th
Pimps and thangs like 2 hang outside and cuss for kicks

彼は36番通りのこのクラブの常連だった
外にはゴロツキどもがたむろし 息巻いている

Talking 2 no one in particular, they say "the baddest I am tonight"
4 letter words are seldom heard with such dignity and bite

誰に言うわけでもなく “夜の帝王はこのオレ”と主張する
そんな気負った連中の間で4文字言葉はまず聞かれない

All the poets and the part time singers always hang inside
Live music from a band plays a song called "Soulpsychodelicide"
The song's a year long and had been playing 4 months when he walked into the place
No one seemed 2 care, an introverted this-is-it look on most of their faces
Up on the mic repeating 2 words over and over again
Was this woman he had never noticed before he lost himself in the articulated manner in which she said them
These 2 words, a little bit behind the beat
I mean just enough 2 turn u on

店内にはいつも詩人や下積み歌手たちがたむろしている
バンドが演奏しているのは「Soulpsychodelicide」という曲
1年も続く曲で 彼が店に入ってきた時点で数ヶ月目に入っていた
誰も気にする素振りは見せず “これだぜ”という表情を密かに浮かべている
マイクを通して2つの語を何度も繰り返し唱える──
その女にそこで初めて気づいた彼は はっきりとしたその口調に吸い込まれていった
その2語 ビートに少し遅れたそれは
まったく悩ましいものだった

Everytime she said the words another one of his doubts were gone
Should he try 2 rap with her? Should he stand and stare?
No one else was watching her, she didn't seem 2 care
So over and over, she said the words til he could take no more
He dragged her from the stage and together they ran through the back door
In the alley over by the curb he said "Tell me what's your name"
She only said the words again and it started 2 rain
2 words falling between the drops and the moans of his condition
Holding someone is truly believing, there's joy in repetition
There's joy in repetition
There's joy in repetition
There's joy in repetition
There's joy in repetition

女がその2語を言うたび 彼の迷いはどんどん消えていった
話しかけるべきか? 黙って見ているべきか?
誰もその女を見ていなかったし 彼女も意に介していないようだった
何度も何度も 彼が我慢できなくなるまで女は言葉を繰り返した
ステージから女を引きずり下ろすと 彼は彼女を連れて裏口を駆け抜けた
路地裏で縁石越しに彼は言った “名前を教えてくれ”
女は例の言葉をまた言うだけ そして雨が降り始めた
2つの語が雨だれと彼の心のうめきの中に紛れていく
人を抱きしめることは心から信じること 繰り返しの中に歓喜が訪れる
繰り返しの中に歓喜が
繰り返しの中に歓喜が
繰り返しの中に歓喜が
繰り返しの中に歓喜が

She said love me, love me, what she say?
Love me, love me

女は言った Love me(私を愛して) なんだって?
Love me Love me

Why don't u love me baby
Why can't u love me baby
Come on and love me baby

どうして愛してくれないの
なんで愛してくれないの
さあ 私を愛してちょうだい

Alright
Alright
Alright
Alright
All my wishes add up to one...

いいとも
いいとも
いいとも
いいとも
俺の望みはひとつに集約される…




 「Joy In Repetition」を和訳したのは、最近、キザイア・ジョーンズがこの曲の秀逸なカヴァー版を発表したからである('17年7月7日、配信発売)。彼のヴァージョンは“人を抱きしめることは心から信じること/繰り返しの中に歓喜が”という結びの一節を前置きにして、クラブの店内の描写から始まる。数あるプリンス楽曲の中から彼がこの曲を取り上げてくれたことが嬉しいし、さすがブルーファンカーは一味違うなと思わせる。

 さて、今回の来日公演で彼はこの曲をやってくれるだろうか?


キザイア・ジョーンズ来日公演
2017年8月6日(日)〜7日(月)
ブルーノート東京
MUSIC CHARGE ¥8,500(税込)
※今回のキザイアの来日公演は、もともとJoey Grant(ベース)とMckNasty(ドラム)の参加が告知されていたが、公演一週間前になって、“アーティスト側の意向により”、急遽、キザイアのソロ・パフォーマンスになることがブルーノートから発表された。ギターの弾き語りだけで70〜80分やるのか? これは逆に楽しみだ。



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