2017 101234567891011121314151617181920212223242526272829302017 12

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

ジュディ・ガーランドとボブ・フォッシー


Get Happy from the movie Summer Stock (1950)
Performer: Judy Garland | Director/Choreographer: Charles Walters

 前回のフィリップ・ドゥクフレ記事の続き(?)。今年観た音楽ヴィデオの中に古典ミュージカル・ネタの面白い作品が2本あったので、まとめて紹介しておきたい。ひとつはジュディ・ガーランド、もうひとつはボブ・フォッシーへのオマージュである。


XR_MexicanChef.jpg
Mexican Chef (2016)
Performer: Xenia Rubinos | Directors: Xenia Rubinos, Jim Larson

 6月にANTI-から2ndアルバム『Black Terry Cat』を発表したセニア・ルビノスの歌詞ヴィデオ「Mexican Chef」('16年7月12日公開)は、ジュディ・ガーランド「Get Happy」へのオマージュ。MJも「Dangerous」の群舞で一部を引用した「Get Happy」(詳しくは過去記事“マイケルの最強ショート・フィルム10選【第9位】”参照)は、ジーン・ケリーとの共演作『サマー・ストック』(1950)に登場するジュディの傑作ソロ・ナンバー。同じくチャールズ・ウォルターズが監督したフレッド・アステアとの共演作『イースター・パレード』(1948)でボツになったジュディのソロ・ナンバー「Mr. Monotony」を新たな演出で焼き直したものである。タキシード・ジャケットとフェドラ帽で歌い踊るこのパフォーマンスは、彼女のトレードマークにもなった。

 「Mexican Chef」にフェドラ帽や男性ダンサーとの群舞は出てこないが、黒ジャケット+ショートパンツ+ハイヒールというセニアのマスキュリンな白黒ファッションと、赤い夕焼け空の書き割りの組み合わせは、どう見ても「Get Happy」。そこに黄色いタイポグラフィを加えたアレンジがポップで冴えている。これを見て初めて気づいたが、ロバート・パーマーのヴィデオ「Addicted To Love」(1986)は、もしかすると「Get Happy」の男女逆転版だったのでは?!

 セニア・ルビノスはブルックリンで活動するキューバ/プエルトリコ系の女性アーティスト。ラテン・アフロパンクR&Bとでも言うべき風変わりな音楽を聴かせる。エスノ感覚たっぷりの人懐こいミクスチャー・サウンドは、4ADからアルバムを出しているカリフォルニア出身のエクスペリメンタル・ポップ・ユニット、チューン・ヤーズや、パリで活動するテルアビブ出身のM.I.A.似のキテレツ娘、リフ・コーエン(過去記事“ありがとう2013年! ゆく音くる音”参照)によく似ている。基本的にはロック・ファン向けの音だが('13年の1st『Magic Trix』は、よりエクスペリメンタル・ロック/ローファイ・ポップ色が濃厚)、ビリー・ホリデイ系のジャジーな歌声や、ソウル/ファンク寄りのリズミックな楽曲は、オルタナR&Bの一種として楽しむこともできる。リアン・ラ・ハヴァス、ローラ・マヴーラ、エスカなどが好きな人にお薦め。


KR_Dumb.jpg
Dumb (2016)
Performers: Kelly Rowland, Trevor Jackson | Director: Frank Gatson Jr. | Choreographers: Kany Diabate, Marie Poppins, Anthony Thomas, AJ, Kenya, Q Anthony, Bob Fosse

 昨年10月に発表されたケリー・ローランドの新曲「Dumb」に、丸1年経って音楽ヴィデオが作られた('16年10月13日公開)。こちらはボブ・フォッシーへのオマージュ。歌手/俳優のトレヴァー・ジャクソンとペアを組み、映画『くたばれヤンキース(Damn Yankees)』(1958)でグウェン・ヴァードンとフォッシーの黄金コンビが踊った名ナンバー「Who's Got The Pain」のルーティンをリメイクしている(衣装は『オール・ザット・ジャズ』風でもある)。『Rhythm Nation』時代のジャネットを手掛けたアンソニー・トーマスを含む複数の振付師が参加し、オリジナル版を尊重しながら、随所にヒップホップ・ダンスの要素を入れたシャープな振付で、フォッシーのユーモラスなダンスを見事に現代に蘇らせた。ケリーのチャーミングな表情も魅力的。演出/振付/パフォーマンスのすべてにフォッシーとグウェンに対するリスペクトが溢れていて、古典ミュージカル・ファンは胸が熱くなること請け合い。最後はジョージ・バランシンの言葉“See the music, hear the dance(音楽を見よ、ダンスを聞け)”の引用で締め括られる。素晴らしい。

 この作品は、ビヨンセの大ヒット・ヴィデオ「Single Ladies (Put A Ring On It)」(2008)を思い出させる。同ヴィデオは、'69年6月に〈The Ed Sullivan Show〉で放映されたボブ・フォッシー振付によるグウェン・ヴァードンのダンス・パフォーマンス「Mexican Breakfast」を現代風に焼き直したものだった。「Dumb」の監督は、「Single Ladies」で振付を手掛けていたビヨンセの長年の振付師/クリエイティヴ・ディレクター、フランク・ギャトソン・Jr。「Dumb」は、つまり、「Single Ladies」のケリー・ローランド版のようなものである。これもまたフォッシー作品の普遍的な魅力を今に伝える秀作だ。

| Dance to Jazz and All That Jazz | 23:40 | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT