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Chic──考える足

My_Feet_Keep_Dancing.jpg

「20代の初めごろ、俺は著名振付家のシヴィラ・フォートのもとでダンスを学んでいたことがある。彼女が教えていたダナム・テクニックは、バレエの訓練法を取り入れたモダンなものだった(原註:キャサリン・ダナムは“黒人ダンスの母/女性開祖”と言われる人物。彼女とフォート女史はアメリカの黒人ダンス史に名を残す伝説的な存在)。後年、俺はシックの曲に、たっての希望でニコラス兄弟に参加してもらったこともある。俺は“ダンス”という言葉と精神的にも肉体的にも繋がりを持っていた」

 自伝『Le Freak: An Upside Down Story of Family, Disco and Destiny』(2011)でナイル・ロジャーズがそう書いているシックの曲とは、'79年に発表された「My Feet Keep Dancing」のことである。

 この曲には、史上最高のタップ・コンビ、ニコラス兄弟の兄であるフェイヤード・ニコラスが参加し、間奏でタップを踏んでいる。当時、フェイヤードは65歳。残念ながら弟のハロルドは不参加だが、他の2人のダンサー──ユージーン・ジャクソン(黒人子役として'20年代から芸能界で活躍していた人物)、サミー・ウォーレン──と組んで、歯切れの良いタップ音を響かせている。ロックンロールの興隆によって職を追われた彼ら黒人タップ・ダンサーたちは、マイケル・ジャクソンやグレゴリー・ハインズといった新世代の黒人スターたちの活躍により、'80年代になって再び脚光を浴びることになる。'77年の時点でマイケルはジャクソンズのテレビ番組〈The Jacksons〉にニコラス兄弟をゲストに迎え、一緒にタップを踏んでいた。'79年にフェイヤードをレコーディングに招いたナイル・ロジャーズもさすがだと思う。

 今年はフェイヤード・ニコラスの没後10年('06年1月24日没/享年91歳)。そして、昨日はバーナード・エドワーズの没後20年の命日だった('96年4月18日没/享年43歳)。2人の偉大なリズム・マスターを追悼して、今日は2人が共演したシックの大名曲「My Feet Keep Dancing」の歌詞を和訳することにしたい。ダンサーの成功物語を描いた歌だが、タップが黒人奴隷の表現手段として生まれた歴史を踏まえると、“My feet keep dancing”という表題フレーズは、生きることへの根源的な渇望を表しているようにも思える。間奏でタップがフィーチャーされた意味はあまりにも大きい。心臓の鼓動のように激しく脈打つバーナードのベースに乗ってタップ音が響く瞬間、私はいつも涙が出そうになる。




 My Feet Keep Dancing
 (Bernard Edwards/Nile Rodgers)
 
 Dancing, dancing
 My feet keep dancing, dancing, dancing
 My feet keep dancing, dancing
 My feet keep dancing, dancing, dancing
 
 踊り続ける
 私の足は踊り続ける 踊り続ける
 私の足は踊り続ける
 私の足は踊り続ける 踊り続ける
 
 I need some help, I get beside myself
 And I got so many things in life to do
 Like, reach for a star or maybe shoot ten under par
 I'd like to do it all before I'm through
 
 助けてほしい どうにもならない
 人生にはやることがありすぎる
 星を掴むとか ゴルフで10アンダーを出すとか
 死ぬまでに何もかもやりたい
 
 Fly into space or maybe save the human race
 All these things seem so appealing
 But I'll never get the chance, 'cause all I do is dance
 My mama said my brains are in my feet
 
 宇宙へ行くとか 人類を救うとか
 やってみたいことばかりだけど
 そんな暇はなさそう 私はひたすら踊るだけ
 ママは言った 私の脳ミソは足にあるって
 
 Dancing, dancing
 My feet keep dancing, dancing, dancing
 My feet keep dancing, dancing
 My feet keep dancing, dancing, dancing
 
 踊り続ける
 私の足は踊り続ける 踊り続ける
 私の足は踊り続ける
 私の足は踊り続ける 踊り続ける
 
 Papa told me every night when he would scold me
 He knew I'd never make him very proud
 So I ran away from home to live all alone
 And make myself a standout in the crowd
 
 パパは言った 毎晩私を叱るとき
 こいつはろくな奴にならんと思ったと
 だから私は家を飛び出した 独り立ちして
 他の誰よりも輝くために
 
 Then it hit, my ideas began to fit
 I had to be what I was meant to be
 Now my name is up in lights and I hoof here every night
 They were right my brains are in my feet
 
 そう これが私の生きる道
 思いは確信に変わっていった
 今 私の名前は電飾で輝き 私は毎晩フロアを鳴らす
 両親は正しかった 私の脳ミソは足にある
 
 Dancing, dancing
 My feet keep dancing, dancing, dancing
 My feet keep dancing, dancing
 My feet keep dancing, dancing, dancing
 
 踊り続ける
 私の足は踊り続ける 踊り続ける
 私の足は踊り続ける
 私の足は踊り続ける 踊り続ける


I hoof here every night 馬が蹄を鳴らす様を思わせることから、“hoof(蹄)”という語は“タップを踏む”という意味でも使われる。“hoofer”と言えば、タップ・ダンサーのこと。この歌の主人公はディスコ・ダンサーではなく、タッパーなのである。



関連記事:
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The Nicholas Brothers (part 2)──'40~43年(20世紀フォックス時代)
The Nicholas Brothers (part 3)──'44~56年(アメリカ~ヨーロッパ時代)
The Nicholas Brothers (part 4)──'50~70年代(テレビスター時代)
The Nicholas Brothers (part 5)──'80年代以降(再評価時代)
The Nicholas Brothers (part 6)──'90年代TVドキュメンタリー
The Nicholas Sisters

※ニコラス兄弟については、'08年〜'11年にかけて書いた上掲の過去記事に詳しいが、私の記述はマニアックすぎて、必ずしも初心者向けとは言えない。“ニコラス兄弟って誰?”という人には、とりあえずYouTubeで1940年の映画出演映像を観ることをお勧めする。マイケル・ジャクソンやナイル・ロジャーズが彼らと共演したがった理由は、それを観れば一発で分かる。

ナイルとボウイの黒い絆(2016.02.14)
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