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超豪華本『完全記録「山口百恵」』発売



 完全記録「山口百恵」

 ~引退から30年余の時を経て、アーティスト山口百恵が
 多くの未発表写真と活動記録で甦る~
 完全通販予約限定!

 【仕様】
  判型:A4変型(30×30cmのLPレコードアルバムサイズ) 
  内容物:約204~252ページの本体×3冊(計約660ページ)+収納用特製ケース
 【通販価格】¥15,300 (税込定価14,800円 +送料500円)
 【受注期間】2011年12月5日~2012年2月上旬(完全受注生産)
 【発送時期】2012年3月中旬以降
 【販売】株式会社ソニー・マガジンズ
 【購入方法】
  キャッチ本゛(ソニー・マガジンズ通販サイト)
  Sony Music Shop(ソニー・ミュージックディストリビューション通販サイト)
 

 というわけで、またすごいものが出てしまう。山口百恵の未発表写真と芸能活動記録を纏めた超豪華本『完全記録「山口百恵」』の登場である。完全受注生産の通販限定商品で、価格は15,300円(送料込)。百恵マニアの、百恵マニアによる、百恵マニアのための究極の山口百恵アーカイヴ。'11年12月5日に発売のニュースが報じられ、同時に販売元のソニー・マガジンズで予約受付が始まった。

 山口百恵の引退30周年('10年)に合わせて、これまで5枚組DVDボックス『ザ・ベストテン 山口百恵』('09年12月)、6枚組DVDボックス『山口百恵 in 夜のヒットスタジオ』('10年6月)、書籍『プレイバック 制作ディレクター回想記 音楽「山口百恵」全軌跡』('11年2月)というダイナマイトな商品が発売されてきたが、どうやらこれが最終兵器となるようだ。引退30周年企画はまだ続いていたのだ。山口百恵は一体何度蘇るのか。私にはもう溜息しか出ない。


 私は基本的に百恵ファン以外の音楽リスナーに向けて山口百恵の記事を書いている。なので、この書籍のことを記事にするかで少し悩んだ。内容的にも価格的にも、これは明らかに百恵初心者向けの商品ではないからだ。ある程度の百恵ファンである私でさえ、ちょっと購入を躊躇してしまうくらいのハードコア・アイテムである。『山口百恵 in 夜のヒットスタジオ』のように、私はこの書籍の購入を決して万人に勧めはしない。私はただ、ここで門外漢の人たちにマニアの世界というものを垣間見てもらい、軽く戦慄してもらえたらと思うのである。

 構想3年、作業1年を費やしたという究極の百恵本は、以下の全3巻(I~III章)によって構成されている。

第I章(252ページ)
■未発表写真(約180ページ)
レコード・ジャケット用に撮影された写真で構成。アウトテイク約200点以上掲載(計約330点掲載)。シングル、アルバムの発売時系列に並べてページを展開していくことで、誰も見たことがない「もうひとつのジャケットストーリー」を再現
■芸能活動年表(約60ページ)
1973年5月のデビューから1980年10月の引退までのレコードリリース、テレビ、ラジオ、映画出演、コンサート、舞台などの活動記録を時系列に掲載

第II章(204ページ)
■ 完全ソフトカタログ
1973年から2011年までのソフト(アナログ、カセット、VHS、CD、DVD)を詳細紹介

第III章(204ページ)
■貴重資料集
レコード販売促進・告知・店頭特典ポスター、CM関連グッズ、コンサート記録(写真、スケジュール、セットリスト)、出演映画・ドラマ完全紹介、書籍(写真集、関連書籍・雑誌)一挙掲載、ファンクラブ発行物の載録

 死ぬほどディープな内容である。これだけ詳細な百恵関連資料を必要とするファンが全国に一体どれくらいいるのかはともかく、作られるべきものが作られたことは確かである。百恵のレコーディング・ディレクター、川瀬泰雄による百恵全曲解説本『プレイバック』が出版された時、私はビートルズのアンソロジー・プロジェクトに準え、それを“映像版アンソロジーに続く百恵の書籍版アンソロジーの実現”と書いたが、適切でなかったようだ。この『完全記録「山口百恵」』こそ、まさに“書籍版アンソロジー”と呼ぶに相応しい代物だろう。この豪華本は、百恵の所属レコード会社だったCBSソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)関連からリリースされる初の引退30周年記念商品という点でも注目される。音源でないのは残念だが、ファンとしては、最後の最後にやってくれたなという感じがする。引退30周年記念の最後を飾るに相応しい超マッシヴなアイテムである(マニアックな商品内容の詳細はソニー・マガジンズのサイトで確認を)。

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シングル「イミテイション・ゴールド」('77年7月1日発売)

 この豪華本の最大の目玉は、未発表写真と芸能活動年表で構成された第1巻だろう。篠山紀信、立木義浩、田島照久、斎藤亢、大竹正明、田村仁らの撮影によるレコード・ジャケット用のセッション写真が、初公開となる大量のアウトテイクを含めて300点以上も掲載される。プレス・リリースの商品画像では、「イミテイション・ゴールド」ジャケ写真(篠山紀信撮影)のアウトテイクが掲載された第1巻の中身が僅かに見られる。ジャケ写真のアウトテイクは2枚組ベスト盤『COMPLETE SINGLES COLLECTION』(2009)のブックレットでも一部公開されていたが、今回の書籍によって、ソニーの倉庫に眠っていた膨大な数の百恵写真が一挙に蔵出しされることになる。掲載写真は状態の良いフィルムが厳選され、更に1枚1枚きちんと発色補正も行われているという。当時の山口百恵の麗姿、彼女の美しい成長過程がそこで生々しく蘇ることだろう。複数の写真家による百恵写真が最高クオリティで1冊に纏められるのは快挙と言っていいと思う。山口百恵の写真集としては、これまでずっと篠山紀信『百恵』(1980/集英社)が定本だったが、『完全記録「山口百恵」』は間違いなくそれを超えるはずである。

 芸能活動年表(約60ページ)というのもすごそうだ。○年○月○日に百恵ちゃんがどこで何をしていたか、ということがこれで細かく把握できてしまうわけである。プレス・リリースでは“本年表は、当時の新聞のテレビ・ラジオ欄、雑誌、書籍、ファンクラブ会報などで確認された主な情報を掲載しています。山口百恵の全てのスケジュール記録ではありません”という註釈が丁寧にも付けられている。はっきり言って、それだけ洗ってくれれば十分である。篠山紀信『百恵』の巻末にもかなり充実した活動年表(10ページ)が掲載されていたが、これもそれを軽く上回る内容になるだろう。

 第2巻と第3巻は更にディープな内容である。基本的なディスコグラフィはマニアでなくとも必須だが、第2巻では、カセットやVHSも含めて、これまで世に出た山口百恵の全ての音楽/映像ソフトの情報が纏められる。第3巻は、レコードの告知、CM関連グッズ、ファンクラブ発行物まで含んだ膨大な周辺資料集。コレクターや研究家しか用がないようなこうした情報が細かく整理されて商品になるというのは、やはり尋常なことではない(中途半端な百恵マニアの私は、第1巻と第3巻のコンサート記録だけ欲しい。第1巻は後で単品の写真集として一般発売しても良いのではないだろうか)。

 “山口百恵をテーマにした音楽、文化論評書籍が多い中で、山口百恵の活動記録・軌跡に焦点を当てた唯一の全集。「山口百恵の活動記録をいつでも振り返りたい」ファン必携の永久保存豪華本です”

 これがこの書籍の企画コンセプトだそうだ。“全章共通して評論家、ライター、著名人等の書き下ろし文章は掲載されません。 客観的な「活動記録」で編集されています”とも説明されている。評論家の解説や考察は私たちに様々な発見を与えてくれるが、ファンが何より欲しいのは、こうした単純な事実の集積だったりする。作品リスト、活動歴、関連発行物などを纏めた記録は、そのアーティストを深く掘り下げていく上で、ファンにとって非常に有用な地図のような役割を果たす。お気に入りの音楽アーティストを発見し、これから新たに掘っていこうという場合、私はまず正確なディスコグラフィを把握するところから始める。映画監督や俳優だったらフィルモグラフィだ。そうしたデータを眺めながらひとつひとつ作品を紐解いて鑑賞していくことは、好事家にとって無上の楽しみである。ハマればハマるほど、より詳しいデータが欲しくなる。好きなアーティストのキャリアを詳細に把握できる地図を手元に置き、常にあらゆる場所にアクセスできることは、ファンにとって大いなる喜びなのである。

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マイケル・ジャクソンとプリンスの活動記録本

 大物アーティストの場合、客観的な視点から時系列で詳しくキャリアを纏めたこの手の活動記録本がよくある。私はマイケル・ジャクソンの『Michael Jackson: A Visual Documentary 1958-2009 The Official Tribute Edition』(2009/1994初版/Omnibus Press)、プリンスの『Prince: Life & Times』(2008/Jawbone Press)という本を持っているのだが、多くの写真と共にアーティストの足跡が丁寧に辿られるそれらの美麗な大判書籍は、ただ眺めているだけ、あるいは、持っているだけでも幸福感を与えてくれる。実は、『完全記録「山口百恵」』発売のニュースに触れて私が真っ先に思い出したのが、前者のマイケルの活動記録本だった(『マイケル・ジャクソン全記録1958-2009』として邦訳書もあり)。マイケル・ジャクソンや山口百恵並みの桁外れのスーパースターになると、巷に様々な言説が溢れすぎて、アーティストとしての実体が見えにくくなる。彼らが一体何者で、何をやった人間なのかということを正しく把握するには、客観的に事実を纏めたこのような記録本が欠かせない。『完全記録「山口百恵」』が出版される意義はまさにこの点にあるだろうし、作り手も当然それを意識していると思う。この書籍からは、“伝説”でも“神話”でもない、単なる歌手、女優、芸能人としての山口百恵の姿がはっきりと浮かび上がるはずである。“山口百恵とは何だったのか?”──『完全記録「山口百恵」』は、これまで幾度となく繰り返されてきたこの問いに、ひとつの決定的な答えを与えてくれるだろう。

 それにしても、である。この本は高い。CDやDVDの箱モノならともかく、書籍で15,300円となると、一般のファンはさすがにちょっとビビってしまう。

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ハンブルグ時代のビートルズ写真集『Hamburg Days』(デラックス版)

 この手の高額なアーティスト豪華本で思い出すのは、イギリスのジェネシス出版である。この出版社は、最高級の印刷と豪華な装丁で様々なロック・アーティストの写真集を製作し、世界中のマニア向けに通信販売している。いずれも1000~2500部くらいの限定版で、シリアル・ナンバー付きの一部一部に必ず写真家やアーティスト本人の直筆サインが入る。値段は大体200~500ポンド(24,000~60,000円)くらいする。大抵、コレクター版とデラックス版の2種類があり、前者が200~300ポンド、特典(オリジナル・プリントや重要人物のサイン)が付いて装丁がより豪華な後者が400~500ポンドといった具合である(中にはもっと高額なものもある)。例えば、最近作られたフェイセズの『Faces, 1969-75』という写真集は、限定1975部のすべてにロン・ウッド、イアン・マクレガン、ケニー・ジョーンズの直筆サインが入り、そのうち350部がデラックス版(495ポンド)、残りの1625部がコレクター版(295ポンド)となっている(295ポンドというのは予約販売価格で、通常販売価格は345ポンド)。このフェイセズ写真集は'11年9月に出たばかりだが、495ポンドもするデラックス版350部は既に完売している。また、'99年に出版されたハンブルグ時代のビートルズ写真集『Hamburg Days』は、限定2500部のすべてにアストリッド・キルヒヘア(写真家)とクラウス・フォアマン(アートワーク担当)の直筆サインが付いているが、そのうち250部のデラックス版にはジョージ・ハリスンのサインが入っていた。このデラックス版が当時いくらで販売されたのかは知らないが、今ではオークションで軽く1000ポンドを超える値が付く。直筆サイン入りという点で最もレア度が高いのは、'01年に出版されたシド・バレット写真集だろうか。この写真集のデラックス版320部には、なんとバレット本人のサインが入っている。シド・バレットというと、とっくの昔に死んだ人物のようなイメージもあるが、彼は'01年の時点でも存命だったのだ('06年にひっそり他界)。私は有名人のサインに興味があるわけではないが、これにはさすがに驚いてしまう。

 仮に、篠山紀信の山口百恵写真集が、紀信と主婦の三浦百恵さんの直筆サイン入りで10万円で数百部限定発売されたとしたら、売れるだろうか? もちろん、売れるだろう。あっという間に完売するのではないかと思う。この世には、そういう商品にいくらでも喜んで金を出す人たちがいるのだ。全く恐ろしいことである。私はそういう人たちを馬鹿にして“恐ろしい”と言うのではない。そういう人たちの気持ちが理解できてしまうからこそ恐ろしいのである。

 ジェネシス出版の豪華本に較べたら、15,300円の『完全記録「山口百恵」』はまだまだ安い買い物と言えるだろう。発売のニュースを知り、買うか買うまいか1日悩んだ末、結局、私はこれを予約してしまった。“悩んだ”というのは嘘で、最初から答えは分かっていた。買うしかないのである。予約を完了してから、私はパソコンのモニターの前で大きく溜息をつき、うなだれた。おまけに、今月12月21日には『沢田研二 in 夜のヒットスタジオ』という核爆弾級の商品まで発売されてしまう(26,250円)。シャーデーを観るために行ったラスベガス旅行の大出費が、今、私にはボディブロウのようにじわじわと効いてきている(スロットマシンですった110ドル……)。

 『完全記録「山口百恵」』は限定版ではあるが、完全受注生産なので、あらかじめ部数は決まっていない。'12年2月上旬の予約期限までに注文が入った分だけ生産される。購入を迷っているファンは、2月上旬までゆっくり悩めばいいだろう(“限定版”という言葉の魔力に勝つのは並大抵のことではないと思うが)。さて、この高額書籍、一体どのくらい売れるのか。Sony Music Shopでの販売分150部は、予約開始の12月5日朝、瞬時に完売した。情報筋によると、初日に5000件、12月8日までの4日間で既に25000件の注文が入っているらしい。山口百恵は怪物である。販売元のソニー・マガジンズには、最終的に是非とも正確な合計発行部数を発表してもらいたい。


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