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Janelle Monae──メトロポリス組曲 第2&3楽章 概説

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 ジャネル・モネイの“メトロポリス組曲”の概説となるアルバム添付テキストを和訳する記事、その後半である。前回の第1楽章『METROPOLIS SUITE I OF IV: THE CHASE』(2007)に続き、今回は第2~3楽章『THE ARCHANDROID』(2010)のブックレットに掲載されているテキストの全訳をお届けする。

 第1楽章で物語の舞台は2719年の未来だったが、第2~3楽章で話はいきなり2010年の現代へ飛ぶ。メトロポリス組曲には、ジャネルが好きな過去のSF映画作品──『メトロポリス』『ブレードランナー』『スター・ウォーズ』等──からの影響が顕著だが(“2719年”という突拍子もない時代設定は、『メトロポリス』の公開年である1927年に由来する。アンドロイド=ジャネルの製造番号“57821”に関しては、彼女の生年である1985年を逆さにしたものだろう)、第2~3楽章ではそこに更に時間旅行の要素──『ターミネーター』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』等──が加わり、物語の構造が重層化している。また、このブックレットのテキスト自体、“パレス・オブ・ザ・ドッグズ”なる、精神病院にも似た特別施設の副院長による、患者ジャネル・モネイに関する手記という形をとっているのが面白い。なにやらドグラ・マグラな様相も呈してきたメトロポリス組曲、果たしてどのような決着を見るのだろうか?

 『THE ARCHANDROID』は、最終的に18曲の収録曲すべてにヴィデオが制作され、『Dance Or Die』というタイトルの映像集として発表される予定がジャネル本人によって語られている(同時に『The Red Book』というグラフィック・ノベル版も制作されるという)。'10年秋発表のニーヨ『LIBRA SCALE』が、同様に連作ヴィデオを伴ったSF物語形式の作品になっていたり、カニエ・ウェストも34分に及ぶアーティスティックな大作ヴィデオを発表するなど、映像と連動したコンセプチュアルな黒人アーティスト作品が注目される昨今。そうした時代の先鋒とも言うべき存在が、この25歳のジャネル・モネイ嬢なのである。


METROPOLIS SUITES II and III: THE ARCHANDROID
メトロポリス組曲 第2&3楽章~大アンドロイド

(2010年作品/ブックレット解説文 日本語訳 by killer b)

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親愛なるリスナーへ

 ここに所収の楽曲、テキスト、イメージ群は、パレス・オブ・ザ・ドッグズ(犬の館)の患者、番号57821であるジャネル・モネイの作品、ヴィジョン、空想である。創造的情報公開法に則り、私はこの作品を公表することに決めた。

(ここで率直に申し上げておきたいのは、私がゾイドたちによって公表を強要されたこと、1954というのは単に年のことでなく団体名であること、パレス・オブ・ザ・ドッグズには何年も前から幽霊が出ること、そして、私たちを取り巻く“現実世界”の多くは見かけとは異なるということである……話が逸れてしまうが……)

 突然変異、失われた天才、大学者たちを収容する最新鋭の連邦施設、パレス・オブ・ザ・ドッグズ芸術院の監督として、私は、ジャネル・モネイは極めて特殊な患者であると言わざるを得ない。彼女のメトロポリスの話──ここにその第2~3楽章が纏められている──には注目すべきものがある。そして、それは情緒的な面においては、信憑性のある話だと言っておきたい。彼女の話は主に以下の4点から成り立っている:

1. 彼女──ジャネル・モネイは、実際に西暦2719年からやって来た。

2. その年に彼女はさらわれ、組織強姦に遭い、抹消された。21世紀流に言うなら、ある日、仕事の後で彼女は死体泥棒たちによって誘拐され、遺体ファームで違法に自分の遺伝子情報を落札者に売り渡された。そして、最後に強制的にタイム・トンネル行きとなり、私たちの時代へ送り込まれた。

3. 2719年の世界には、盗まれたモネイ嬢のDNAからクローン培養された有機化合物を持つシンディ・メイウェザーという有名なアンドロイドがいる。

4. シンディ・メイウェザーは神話に伝わる大アンドロイドであり、メトロポリスの民をグレイト・ディヴァイド(分水嶺)──タイム・トラベルを駆使して長きにわたって自由と愛を抑止してきた秘密結社──から解放するために遣わされた。

 私は過去2年間の大半をかけ、全力でこの話のあらゆる点を纏めると同時に、関係人物を一人残らず調査した。話の大部分は論理的な整合性を欠いている。例えば、彼女は2人組プロデューサーで“パンクの使者”であるディープ・コットンとパレス・オブ・ザ・ドッグズのミュージックエイリアムで創作を行ったと主張しているが、それはあり得ないことだ。連邦当局の記録とパレス・オブ・ザ・ドッグズの資料によれば、ディープ・コットンは、今から56年前の1954年、公式に死亡が確認されているからだ……。

 不明瞭な主張や矛盾点はさておき、ジャネル・モネイは狂っているのだろうか? 彼女は本当に2719年からやって来たのか? 彼女は亡霊たちと音楽を作っているのだろうか? 大アンドロイドは彼女から直に作られたクローンなのか? アメリカ政府はグレイト・ディヴァイドと通じているのか? 未来にはメトロポリスなる世界が私たちを待ち受けているのか? 妖精や小びとで溢れた世界? 人間とアンドロイド? クローンとエイリアン?

 そして最も重要なことだが、もし大アンドロイドが存在するならば、彼女は本当に私たちを救ってくれるのだろうか?
 
 2010年4月6日
 パレス・オブ・ザ・ドッグズ芸術院 副院長
 マックス・ステリングス


Janelle_ArchAndroid.jpg

I. Suite II Overture
II. Dance Or Die (featuring Saul Williams)
III. Faster
IV. Locked Inside
V. Sir Greendown
VI. Cold War
VII. Tightrope (featuring Big Boi)
VIII. Neon Gumbo
IX. Oh, Maker
X. Come Alive (The War of The Roses)
XI. Mushrooms & Roses

XII. Suite III Overture
XIII. Neon Valley Street
XIV. Make The Bus (featuring Of Montreal)
XV. Wondaland
XVI. 57821 (featuring Deep Cotton)
XVII. Say You'll Go
XVIII. BabopbyeYa

Conceived, Conceptualized, and Created by
the Mad Minds of The Wondaland Arts Society

Exective Producers: Nate Wonder, Chuck Lightning, Janelle Monae, & Sean "Diddy" Combs
Co-Exective Producer: Antwan "Big Boi" Patton
All Songs Produced by Nate "Rocket" Wonder, Chuck Lightning, & Janelle Monae for Wondaland Productions except for "Suite II Overture," "Suite III Overture," and "BabopbyeYa" Produced by Roman GianArthur and "Make The Bus" Produced by Kevin Barnes

※テキスト内に登場する独特の固有名詞、重要語句等に関しては初出時に太字で示した。原文の表記とは異なることを断っておく。


 本当はこれとあわせて各収録曲をひとつひとつ見ていきたいところだが、それをやると大変に面倒くさいことになるのが分かっているので、今回はその危険な誘惑を避け、ひとまずアルバム添付テキストの和訳だけにとどめた。これだけでもジャネルの作品がどのようなものかよく分かると思う。豊かな音楽性、強烈なヴィジュアル、パワフルなステージ・パフォーマンスだけでも十分に魅力的だが、この人の表現は、やはりこういうコンセプトも含めて楽しまないともったいない。国内盤が最も必要とされるタイプのアーティストなのだが……(作品自体は輸入盤とある程度の英語力さえあれば楽しめるから良いが、日本盤が出ないで何が一番困るかと言えば、いつまで経っても来日が実現しないことだ)。



Janelle Monae──メトロポリス組曲 第1楽章 概説

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