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Janelle Monae──メトロポリス組曲 第1楽章 概説



 28世紀からやって来たサイバーソウル歌手、ジャネル・モネイ。'10年5月に初のフル・アルバム『THE ARCHANDROID』を発表してからの彼女の躍進ぶりには目覚ましいものがある。'10年秋にはイギリスのNME紙の“Cool List 2010(イケてるアーティスト)”ランキングで2位に選ばれ、年末にはガーディアン紙の年間ベスト・アルバム選で、カニエ・ウェストの傑作を抑えて『THE ARCHANDROID』が堂々の首位に輝いた。プリンスやスティーヴィー・ワンダーとのステージ共演も次々と実現。そして、'11年2月13日(日本時間14日午前)、2部門でノミネートを受け、彼女は遂にグラミー賞の舞台でパフォーマンスを披露するまでに至った。いまや海の向こうで彼女はすっかりビッグな存在である(相変わらず身体は小っちゃいが)。
 
 ジャネルについては『THE ARCHANDROID』発表時に2本の記事を書いた。彼女の略歴、および、その独特なファッション・スタイルについてはそちらを参照してもらうとして、今回は“グラミー出演おめでとう緊急特別企画”として、彼女のアルバム作品に添付されている2つのテキストの日本語訳をお届けすることにしたい。

 ジャネルのアルバムは、28世紀のメトロポリスで生まれたアンドロイドの少女を主人公にしたコンセプチュアルな物語形式の連作になっている。全4楽章で完結する彼女の“メトロポリス組曲”は、現在までに『METROPOLIS SUITE I OF IV: THE CHASE』(2007/ミニ・アルバム。翌年に2曲を追加して新装発売)、『THE ARCHANDROID』(2010)によって第3楽章までが発表済みである。
 2枚のアルバムのブックレットには、それぞれ、彼女のアンドロイド物語を理解するための手引きとなる解説文が掲載されている。これら2つのテキストは、そこに収録されている彼女の歌曲や、アルバム・コンセプトと連動した映像作品を楽しむ上で欠かせないものである。

 欧米では既に時代をリードする重要アーティストの仲間入りを果たしているジャネル・モネイ。にもかかわらず、いつまで経っても日本盤が発売されないジャネル・モネイ(おかげで、いまだ日本語表記に困るジャネル・モネイ)。いま、日本のファンにとって最も必要なジャネル関連の文字情報は、実際に彼女の作品の一部であり、その重要な概説となる、これらアルバム添付テキストの和訳ではないだろうか。

 グラミーで観たけど、この娘一体何なのさ?というあなた。輸入盤を買ってみたけど、何だこりゃ?というあなた。ジャネルの不思議の国への入口は、すぐこの下にあります。

 まずは、第1楽章『METROPOLIS SUITE I OF IV: THE CHASE』概説から。


METROPOLIS SUITE I of IV: THE CHASE
メトロポリス組曲 第1楽章~追跡

(2007年作品/ブックレット解説文 日本語訳 by killer b)

many_moons.jpg

【概説】
悲劇の都=メトロポリス、我らのアンドロイド・ヒーロー=シンディ・メイウェザー、そして、我らの愛しきヒーローが逃亡者となるまでの数奇な経緯について


 西暦2719年。5回の世界大戦で地球は崩壊していた。汚染された環境から逃れるため、人類は力を合わせて究極の都=メトロポリスを創り上げた。邪悪なウルフマスターたちの支配の下、都は享楽的なロボット富豪、民族・人種・階級間の紛争、卑劣な虐殺行為が渦巻く退廃天国と化していた。それでも尚、より良い生活を求めて無数の人々がメトロポリスにやって来る。メトロポリスで成功すれば、どこでもやっていけるからだ……。

 この無法地帯に、アルファ・プラチナ9000型、製造番号57821のアンドロイド、シンディ・メイウェザーは生まれた。他のアンドロイドと異なり、シンディには優れたロック・スター能力、そして、生きた心がプログラミングされていた。シンディは最新型のアンドロイドだったが、彼女には守らなければならない掟があった。アンドロイドは、何よりまず、恋をしてはならない。特に人間との恋は許されない。しかし、早熟であったがため、シンディはある特別な運命を背負ってしまう。まず、彼女は宿命的にサイバーソウルという反体制的な新しいポップ・ミュージックの旗手となる。そして、世界の注目を集める中、彼女はロボット富豪として名を馳せる人間、アンソニー・グリーンダウンに恋をしてしまうのだった。

 スター委員会は慌てて事態の徹底究明に乗り出す。世間の激しい批判や憶測を受けて、ドロイド管理局はすぐさまシンディ・メイウェザーの即時解体処分を決定。瞬く間に犯罪者となったシンディは、逃亡アンドロイドとしてワンダーグラウンドへ逃げ込むことになった。ウルフマスターたちが舌なめずりしながら魔の手を伸ばし始める。彼らは、血に飢えたエイリアン、気の短い妖精、非情な賞金稼ぎどもを呼び集めて命じるのだった。指令はただひとつ──シンディ・メイウェザーに死を……。


Janelle_Metroplis.jpg

I. The March of The Wolfmasters
II. Violet Stars Happy Hunting!!!
III. Many Moons
IV. Cybertronic Purgatory
V. Sincerely, Jane.

2008 special edition bonus tracks:
VI. Mr. President
VII. Smile

Conceived, Conceptualized, and Created by
the Mad Minds of The Wondaland Arts Society

Exective Producers: Sean "P. Diddy" Combs, The Wolfmasters, and Janelle Monae
Co-Exective Producer: Antwan "Big Boi" Patton
All Songs Produced by Nate "Rocket" Wonder, Chuck Lightning, & Janelle Monae for Wondaland Productions

※テキスト内に登場する独特の固有名詞、重要語句等に関しては初出時に太字で示した。原文の表記とは異なることを断っておく。



第53回グラミー賞

Janelle_swiming_at_the_Grammy.jpg
結構大変なことになっているジャネル

 ところで、'11年2月13日の第53回グラミー賞、ジャネルはB.o.Bとブルーノ・マーズと共演し、自身は「Cold War」を披露。途中で観客席にダイヴし、見事に完泳を遂げた(でも、やっぱり「Tightrope」の方が良かったなあ……。ディディも会場にいたのに)。Wowowでの生中継時には、レッド・カーペットで小牧ユカのインタヴューに応じるジャネルの姿も見られた。
 ノミネートされていた2部門──最優秀アーバン/オルタナティヴ・パフォーマンス(「Tightrope」)、最優秀コンテンポラリーR&Bアルバム(『THE ARCHANDROID』)──は、それぞれシーロー「Fuck You」、アッシャー『RAYMOND V. RAYMOND』が受賞。最優秀女性アンドロイド・ポップ・ヴォーカル・パフォーマンスという部門があれば、ガガ女を抑えて受賞できたかもしれない(ガガの「Born This Way」という曲をグラミーで初めて聞いた。あまり人の悪口は書きたくないが、彼女はどうして先人の劣化コピーのような表現ばかりしているのだろう? 単にそういう生まれつきなのかもしれないが、私にはああいう品性が全く理解できない。ちなみに、「Born This Way」の元ネタであるマドンナ「Express Yourself」のヴィデオの元ネタは、フリッツ・ラング『メトロポリス』である)。

 第53回グラミー賞では、シャーデーも2部門──最優秀デュオもしくはグループ・ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス部門(「Babyfather」)、最優秀デュオもしくはグループR&Bパフォーマンス部門(「Soldier Of Love」)──でノミネートされており、このうち、後者の最優秀デュオもしくはグループR&Bパフォーマンス部門でめでたく受賞を果たした。シャーデーは'94年の第32回グラミー賞でも、最優秀デュオもしくはグループR&Bパフォーマンス部門(「No Ordinary Love」)に輝いている。

 ……どうでもいい話だが、グラミー賞の中で最も長い部門名は何だろう?
 ざっと部門リストを眺めてみたところ、これが一番長かった。
 
 Best Compilation Soundtrack Album for Motion Picture, Television or Other Visual Media
 最優秀映画、テレビ、もしくは、その他の映像メディアの編集盤サウンドトラック・アルバム部門

 純粋なスコアを収録したサントラと区別して、このような部門が設けられているようだ。スコア部門の名称は“Compilation”が“Score”に変わるので、これより若干短い(って、本当にどうでもいい話だな)。

 第53回グラミー賞、個人的には、いつもと同じように現れ、ステイプルズ・センターをいともあっさりストーンズのライヴ会場にしてしまったミック・ジャガー(67歳)の姿が最も印象に残った。あれこそアンドロイドかもしれない。



Janelle Monae──メトロポリス組曲 第2&3楽章 概説

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