You & I (Forever) (Jessie Ware/Benny Blanco/Miguel Pimentel/Benjamin Ash)
It's getting late for me But it's too early for you I shouldn't wait but This one I'm not gonna lose I can see it, forever I got my start off at 10 You give your love for free So can't you say it again That this is all that you need Can you see it? Can you see it?
I don't wanna try alone We could dream it all Don't wanna stop the thought Of you and I forever Forever I only wanna team with you We could dream it all Don't wanna stop the thought Of you and I forever Forever
Sometimes you gotta push to start And then we're gonna go until the wheels fall off Till the wheels fall off Can't you see it? It's forever
踏み出さなきゃ始まらないわ ふたりで行けるとこまで行くの どこまでも わからない? 永遠にね
Tell me what we're waiting for I only wanna love
いったい何を待つことがあるの 私は愛したいだけ
I don't wanna try alone We could dream it all Don't wanna stop the thought Of you and I forever Forever I only wanna team with you We could dream it all Don't wanna stop the thought Of you and I forever Forever
Photobooth.net この記事を書いている最中に見つけた証明写真ボックス専門サイト。証明写真機が登場する映画、音楽ヴィデオ、アートワークなどを集めたアーカイヴは圧巻。Jeremy Burgan「Can You See Us?」はこのサイトで初めて知った。今回は個人的に印象深い作品を取り上げたが、視覚芸術における証明写真機は、現物と同じくらい(?)頻繁に見かけられる。
「Cry Me A River」と言えば? ジャスティン・ティンバーレイクと答える人は、30歳以下の若い音楽ファンか。ジュリー・ロンドンと答える人は、私と同じ古い奴である。
「Cry Me A River」と言えば、ジュリー・ロンドン。そして、ジュリー・ロンドンと言えば「Cry Me A River」、でもある。彼女の1stアルバム『JULIE IS HER NAME(彼女の名はジュリー)』(1955)の冒頭を飾る問答無用の代表曲。今日まで多くの歌手に歌い継がれている大スタンダード・ナンバーだ。
You drove me, nearly drove me out of my head While you never shed a tear Remember, I remember all that you said Told me love was too plebeian Told me you were through with me and
“やっぱ好きやねん”と帰ってきた浮気男に対して、“はあ? あんたのせいであたしがどれだけ泣いたか分かってんの?”と返す怨歌じみたコワい歌である。男への未練を滲ませたジュリー・ロンドンのやるせない歌唱がなんとも泣かせる。成仏できない魂のように、彼女の声が深いエコーと共に消えていくエンディングの余韻は殺人的な素晴らしさだ(エルヴィス・プレスリー「Blue Moon」と聴き較べたい)。この歌は、表題にもなっている“cry me a river”、および、“I cried a river”という言い回しの妙が肝で、和訳ではこれをいかに処理するかが大きな課題となる。
英文解釈の時点でつまずく人もいると思うので一応説明しておくと、まず、“I cried a river”は、“私は川を泣いた”ではもちろんなく、“私は川のごとく泣いた”という意味の比喩表現である。“a river”は、文法的に言うと“cried”のいわゆる同族目的語に当たる。感覚的には“cried”を修飾する副詞(!)として捉えることもできる。同族目的語と捉える場合、“I cried a river”は“I cried a lot of tears”と換言できる。“I cried a river”の後に“of tears”が省略されていると考えても良い。副詞と捉える場合は、“I cried like a river”、あるいは“I cried a hell of a lot”などと換言できる。文法的には同族目的語と捉える方が遙かに自然だが、いずれにせよ、“泣く(涙を流す)”と“川”を液体繋がりで結びつけた比喩表現であることに違いはない。
“cry me a river”という言い回しは更にトリッキーだ。“cry a river(川のごとく泣け)”の間に“me”が割り込んでいる。この“me”は文法用語で“利害の与格”と呼ばれるもので、聖書やシェイクスピア作品のような大昔の英文に出てくる古い用法である。“Kill me your son(汝の息子を殺してみせよ)”、“Knock me on this door(この扉を叩くがいい)”、“Hit me a home run(ホームランを打ってみせろ)”といったフレーズがその例だ。現代の常識的な英語感覚では誤読の可能性もある、かなり奇妙な言い回しである。これらの“me”は動詞の直接目的語ではなく、間接目的語のような役割を果たしていて、いずれも“for me”に置き換えることができる。“cry me a river”は、現代英語の標準的な文法に則して換言すると“cry a river for me”となる。要するに、単に“私のために〜してくれ”という意味の文章なのである。“me”が邪魔で分かりにくいが、“a river”が“cry”の同族目的語であることに変わりはない。英語で分かりやすく換言すると、“cry a river of tears for me”、あるいは、“cry enough tears to make a river for me”ということになる。“私のために川のごとく(たくさん)泣いてみせよ”というのが基本的な訳文だ。
※“a river”は、大量の水を思わせるものだったら何にでも置き換えることができる。例:Cry me a mug、Cry me a bucket、Cry me a barrel、Cry me a tank、Cry me a pool、Cry me a pond、Cry me a lake、Cry me an ocean……。中でも“川”は、それが“流れるもの”であるという点で、涙の比喩として特に優れている。“Cry me a waterfall(滝のごとく泣け)”でも良いが、激しすぎて歌のイメージとは合わないだろう。
“cry a river”=“川のごとく泣け”と説明したが、原文に“like(〜のごとく/ように)”はない。つまり、比喩は比喩でも、直喩ではなく、暗喩である。これによって表現に独特の切れと深みが生まれている。“〜のごとく/ように”を使わず暗喩的に訳すにはどうすればいいか。私はまず“川の涙を流せ”という訳を思いついた(“涙の川で溺れろ”や“涙の川を渡れ”も思いついたが、これはさすがにデフォルメが過ぎる)。“you can cry me a river”の“you can”は、“せいぜい〜するがいい”といったニュアンスである。“川の涙を流すがいい(お流しよ)”でも悪くないと思ったが、この言い回しだと、結びの“I cried a river over you”を原文と同じくらい短く簡潔に処理することが難しくなる(ちなみに、“I cried a river over you”の頭にはもうひとつ“like”──もしくは“because”──が隠れている。拙訳ではこれを訳出した)。また、ブリッジ部分には“cry”の類似表現“shed a tear”が登場する。できれば両者は差別化したい。“cry me a river”というサビの畳句を、“涙”ではなく“泣く”という言葉を使って、なんとか原文に近いリズム感──子守唄のようなそれ──で訳すことはできないか。同一フレーズの反復は、和訳においても可能な限り同様に反復されるべきだと私は考える。繰り返すこと自体に意味があるからだ。さて……。
最終的に私は、かなり躊躇しながらも、“cry me a river”を“川とお泣き”と訳すことにした。“川と泣く”は、“川と一緒に泣く/川と共に泣く”ではなく、“川のように泣く”という意味である。あまり用いられないが、日本語の“と”という助詞には比喩を作る用法がある(例:ゴミが山と積もる/泡と消えた夢/雨と降る弾丸)。日本語だとかなり文字数を喰う“(for)me”は無理に訳出せず、言外に匂わせる形で処理するのがベストと考えた。そうして出来上がったのが上掲の拙訳である。
シャーデーがまだ駆け出しのバンドだった頃、彼らはステージで「Cry Me A River」をレパートリーにしていた。レコード・デビュー前の'82年末〜'83年前半にかけて、彼らがまだプライドのバンド内バンド(アンドリュー・ヘイル加入前の4人組)だった頃の話だ。以下は、'83年2月27日、ロンドンの老舗ジャズ・クラブ、Ronnie Scott's Jazz Clubでシャーデーが行ったギグのセットリストである(かなり音質の良いオーディエンス録音が残っている)。
1. Why Can't We Live Together [Timmy Thomas cover] 2. When Am I Going To Make A Living 3. Mr. Wrong 4. Cherry Pie 5. Be Thankful For What You Got [William DeVaughn cover] 6. Smooth Operator - Snake Bite 7. Cry Me A River [Julie London cover] -encore- 8. Love Affair With Life 9. When Am I Going To Make A Living
Live at Ronnie Scott's Jazz Club, 27 February 1983 Personnel: Sade Ade (vocals), Stuart Matthewman (guitar, sax), Paul S. Denman (bass), Paul Cooke (drums)
「Cry Me A River」はアンコール前の締め括り曲として披露されていた。マシューマンのサックスとデンマンのベースを軸にしたスローなクール・ジャズ調アレンジ。イントロとアウトロに加えられたテーマ・メロディと、終盤で長めにフィーチャーされるマシューマンのサックス・ソロがノワールな雰囲気を醸し出していて実にカッコいい。選曲は恐らくマシューマンによるものだろう。アデュの歌唱は概ねジュリー・ロンドン版に忠実。決して巧くはないが、声質が似ていることもあり、なかなか様になっている。シャーデーの後の名曲「Is It A Crime」は、こうした古典的なトーチ・ソングを参照しながら生まれたものである。近年、スチュアート・マシューマンはサイド・プロジェクトのツイン・デンジャー('15年3月に1stアルバムが遂にメジャー・リリース!)で、初期シャーデーでやっていたクール・ジャズ的な音楽に改めて取り組んでもいる。
ジェシー・ボイキンス三世、メロー・X、クリス・ターナーらと活動を共にしているオークランド出身の若手美人歌手、マラ・ルビー Mara Hruby。「Cry Me A River」は、'14年3月に配信された彼女の2nd EP『ARCHAIC RAPTURE』でも取り上げられていた。
マラ・ルビーのデビューEP『FROM HER EYES』(2010)は、彼女自身にとっての“スタンダード”であるネオソウル〜ヒップホップ系作品(ザ・ルーツ、ヴァン・ハント、アンドレ3000、ディアンジェロ、ボブ・マーリー、ジャミロクワイ、モス・デフ)を独自のエレガントなマナーでカヴァーした非常に瑞々しい作品だった。自分で曲を書くよりも他人の楽曲を解釈することに力を注ぐ彼女の創作姿勢は、往年のジャズ〜ポピュラー歌手のそれに近く、シンガー・ソングライター(自作自演アーティスト)ばかりの現代の音楽界にあっては、むしろ逆に個性的と言えるかもしれない。実際、彼女はジョセフィン・ベイカー、リナ・ホーン、ドロシー・ダンドリッジ、アーサ・キットといった往年の黒人女性スターたちを仰ぎ見、'40〜50年代の古風なファッションをこよなく愛する──日本で言うと“大正ロマン好き”、“昭和モダン好き”みたいな──かなりオタッキーな女子でもある。『ARCHAIC RAPTURE』は、そんな彼女の趣味が全開になった作品だ。
全6曲のうち、オリジナル曲「Set Me Free」を除く5曲がジャズ〜ポピュラー系のスタンダード・ナンバー。失恋や傷心の思いが綴られた感傷的な歌ばかりである。いずれもマラが自分自身の失恋を克服するために選んだもので、収録曲が6曲なのは、彼女の恋人だった男が6人(!)の女性と浮気していたことに因むという。“往年の名歌を偲んで”といったニュアンスも漂う“Archaic Rapture”という表題には、彼女の個人的な失恋体験への思いが込められているようだ(“過ぎ去りしバラ色の日々”みたいな感じか)。
EPが生まれた経緯をマラはこう説明する。
「3年付き合った彼氏と別れてから2週間後にアイデアが思い浮かんだの。彼は6人の女と浮気してた。その事実が発覚してからすぐ、2010年の3月に、私は叔母と叔父と一緒にフロリダのマナソタ・キーに2週間ほど旅行に出かけた。そこでジュリー・ロンドンばかり聴いてたら、ふと閃いたの。古典的なトーチ・ソングが持つ力ってすごいなと思い、次の自分の作品集は、個人的な失恋への思いも込めて、ジュリー・ロンドンや彼女が歌った傷心の歌へ捧げよう、とね」(11 February 2014, Singersroom.com)
『ARCHAIC RAPTURE』で取り上げられた5曲のスタンダード・ナンバーは、いずれも過去にジュリー・ロンドンが歌ったものである。このEPは、要するに『MARA HRUBY SINGS JULIE LONDON』なのだ。ギター主体のレイドバックしたアレンジには、ジュリー・ロンドン版とはまた違う趣があって面白い。アシッド・フォークにも似た幽玄で幻想的なサウンドが、古典的なトーチ・ソングに新たな息吹を与える。簡素ながらも隅々まで配慮の行き届いた温もり溢れるサウンドは、まるでジュリー・ロンドンの楽曲を一度漂白し、6色セットの色鉛筆で丁寧に彩色を施した塗り絵のようでもある。『A COLORING BOOK OF JULIE LONDON』──そんな表題も思い浮かぶ作品集だ。
ハスキーで可憐なマラの歌声は、脆さを感じさせながらも、真っ直ぐで凛としている。自分の失恋に正面から向き合い、それを乗り越えようとする強い意志が、そのような真摯でしなやかな歌唱を実現しているのかもしれない(もちろん、彼女がソウルを聴いて育ったことも関係しているだろうが)。特にコール・ポーターの名曲「Ev'ry Time We Say Goodbye」での無垢でひたむきな歌唱は感動的だ。真夜中の感傷や倦怠を歌うのがジュリー・ロンドンだとしたら、マラの歌には、長い孤独の夜を乗り越えた明け方の晴れやかさや清々しさがある。同時に、彼女特有の夢見るような甘美なムードが終始漂い、ジュリー・ロンドン作品とはまた違った親密さを生んでもいる。小粒ながらも、ビタースウィートな味わい深い佳作。6曲しか聴けないのが実に残念である(彼氏の浮気相手がもっと多ければ良かったのに!)。
白眉はやはり、1stシングルにも選ばれた「Cry Me A River」か。これだけ他の曲よりも使われている“色鉛筆”の数が若干多く、マラの筆致にも格別の気合いが感じられる。ジュリー・ロンドン版には男に対する未練がうっすらと滲むが、マラは明らかに決別の歌としてこの曲を歌っている。見事な解釈だと思う。「Cry Me A River」は、多くの音楽リスナーにとってそうであるように、彼女がジュリー・ロンドンにハマるきっかけにもなった曲だった。
1月は歌の題材にされることが極めて少ない月のひとつである。1月を歌った歌もあるにはあるのだが、個人的にあまり取り上げたいと思うような作品がない。さて、どうするか。困った私は、ここで切り札を使うことにした。シャーデーやマラ・ルビーも歌った「Cry Me A River」で有名な美人歌手、ジュリー・ロンドンのアルバム『CALENDAR GIRL』(1956)である。1〜12月に因んだ歌を順番に1曲ずつ収めたコンセプト・アルバムで、ジャケットではジュリー・ロンドンがカレンダーガールに扮し、月ごとに様々なコスチュームに身を包んでお色気を振りまいている。12曲入りかと思いきや全13曲入りで、最後に「The Thirteenth Month(13月)」という歌が登場するなかなか洒落たアルバムでもある。“〜月の歌”の連載を始めた時、ネタに困ったらこのアルバムの収録曲を取り上げればいいと私は思っていた。
「June In January」は『CALENDAR GIRL』の冒頭を飾る1月の歌。もともと『わが胸は高鳴る(Here Is My Heart)』(1934)という映画でビング・クロスビーが歌ってヒットさせ、後にスタンダード化したポピュラー・ソングである。ジュリー・ロンドンのスモーキーな歌声は、極寒の1月にまるで暖炉の火のような温かみを感じさせてくれる。色んな意味で有り難い1月の歌だ。
It's June in January Because I'm in love It always is spring in my heart With you in my arms
1月なのに6月 それは恋のせい 心はいつもぽかぽか陽気 あなたと寄り添えば
The snow is just white blossoms That fall from above And here is the reason, my dear Your magical charms
雪は白い花になり 天から舞い落ちる それもこれもみんな あなたの魔法のせい
The night is cold The trees are bare But I can feel the scent of roses in the air It's June in January Because I'm in love But only because I'm in love with you